【新春企画】ロッテ井口監督独占インタ・前編 2019年に得た手応え「若い投手がしっかり投げた」

ロッテ・井口資仁監督【写真:佐藤直子】

就任3年目の井口監督が胸の内を語る、全3回シリーズの前編

 2020年がいよいよ幕を開けた。今年も年明けから大きなスポーツイベントが目白押しとなるが、2月1日にキャンプインする日本プロ野球も大いなる盛り上がりが予想される。近年はソフトバンクの強さが際立つパ・リーグだが、その牙城を崩そうと今シーズンに狙いを定めているチームがある。それが千葉ロッテマリーンズだ。

 現役引退直後の2018年から指揮を執る井口資仁監督は、就任1年目に6位から5位、2年目の昨季は5位から4位へとチームを引き上げてきた。就任時に掲げた「常勝軍団を作る」という公約を果たすべく、その土台作りに務めた指揮官は、2020年は「ホップ・ステップ・ジャンプの年にしたい」と、一気に10年ぶりの日本一を狙う。

「Full-Count」では新春特別企画として、井口監督に独占インタビューを行い、その胸の内に迫った。今回は全3回シリーズの前編として、2019年シーズンを振り返る。

 ◇ ◇ ◇

――監督就任2年目の2019年は、最終的に2ゲーム差でクライマックスシリーズ(CS)を逃す悔しいシーズンになった。

「なんとかCSに行きたかったですけど、最後の10試合(3勝7敗)でチームの実力が出てしまった。やっぱり今まで、ここ一番で競る争いをしたことのない経験の浅い選手が多いところが出たかなと。これは本当に経験でしかないんで、我々がいろいろな後押しをしてやっていくしかない。ただ、3位争いではあったけど、これを経験できたことが、今年さらに上に行くためのプラスになるんじゃないかと思います」

――この悔しい思いが選手にとってステップアップの糧になる。

「2018年は早めに優勝争い、CS争いから脱落していたし、その前年も同じ。そういう意味で、2019年は若い選手に切り替えながらも、3位争いができて本当にいい経験になったと思います」

――2019年はホームランラグーンができるなど球場が大幅改修された。監督も戦術を変える必要があった?

「レアードをはじめ長打を打てる選手がいたので、前年に比べたら機動力は使えなくなった部分はあります。そこで(鈴木)大地を2番において極力前半は打ちながら繋いで、1番の(荻野)貴司を走らせて、という攻撃になっていた。そういう意味では2018年とはちょっと戦い方は変わったかな。

 でも、ラグーンができたからといって、そこに入るホームランが増えたわけじゃない。しっかり打てば(スタンドに)入るというのを、みんな分かってくれたと思います。去年は158本で、その前年は78本。倍以上か……だいぶ増えましたね(笑)。新加入のレアードが32本だったから、それを引いてもかなり増えましたね」

左右の若手投手が大きく成長「期待を持たせるピッチングをしてくれた」

――就任1年目には選手を1年間続けて起用することを意識していた。その積み上げを感じられる2年目になった?

「2018年にシーズンを通じて出続けた選手、井上(晴哉)や中村(奨吾)だったりが、去年はなかなか調子が上がらなかった。彼らが1年間しっかりできたら、もっとチームとして上にいったかなと思います。ピッチャーに関していえば、涌井(秀章)、石川(歩)、ボルシンガーでなかなか貯金が作れなかった。ただ、その分、若い投手にチャンスがあったし、しっかりと投げてくれたので、2020年に続くシーズンになったと思います」

――外国人選手では、レアード、マーティンが大事なところで一発を打った。

「やっぱり競っている場面で一発が出て勝てるのは、チームの層の厚みだと思います。2018年は78本で2試合に1本くらいしかホームランが出なかった。それもほとんど井上でしたから(苦笑)。やっぱり、どこからでも攻撃できる打線は、対戦相手にとって少しは脅威になったのかなと思います」

――レアード、マーティンは2020年も戻ってくる。ここに井上、中村が本来の調子を取り戻せば……。

「そうですね。2人が中軸を打ってくれれば、もっと層が厚くなると思うし、大地が抜けたところに誰が上がってくるのか。安田(尚憲)だったり、(平沢)大河だったり、その辺は楽しみですね。ポジションが空くっていうチャンスはそうそうない。これはやっぱり、しっかりと誰かに掴んでほしいですね」

――投手陣を見ると、2桁勝利に達した先発投手がいなかった。

「う~ん、そうですね。やっぱり1年間しっかりローテーションを回れる選手がいなかったところでしょう。その中で、吉井(理人)投手コーチが若い投手どんどん組み込ませながら、しっかりローテーションを組んでくれた。若手はいきなりローテを守るのは厳しかったと思うので、土肥(星也)だったり、小島(和哉)だったり、最初は10日に1度くらい投げながら、後半にはしっかりローテに入れるような、本当に今季に繋がる投球をしてくれたと思います。右だったら岩下(大輝)、種市(篤暉)が最後、しっかりローテを回ってくれた。左で言えば中村(稔弥)、小島、土肥というあたりが期待を持たせるピッチングをしてくれた。そういう意味では、先発はそこそこ数が増えてきたかなというのはありますね」

――就任1年目は手探りだったものが、徐々に形になってきた。

「2018年は自分自身が手探りだったし、どういう環境で全員がやっているのかを僕が知るまでの1年になってしまった。去年は結果的には4位でしたけど、戦いの内容としては前年とまったく違ったし、あと1歩という試合が何試合もあった。そこを今年はどうやって勝ち抜いていくかが勝負だと思います」

――当然、今年ファンが望むのは……。

優勝しか頭にはないでしょう。この2年間、悔しい思いもあると思いますが、僕たちは計画を立てて勝てるチームを作っている。就任1年目で優勝しても、すぐに落ちるチームでは意味がない。勝ち続ける球団の土台をしっかり作るということで2年やってきた。ホップ、ステップときて、今年は最後のジャンプをするところかな、と。球団もしっかり補強をしてくれていますから」

1軍と2軍、監督とコーチが好連携、球団も手厚いサポート「プレーヤーズファーストを実践」

――監督就任以来、1軍と2軍が一貫性を持って選手育成に取り組めている。

「そうですね。今岡(真訪)2軍監督がよくやってくれています。すべて情報を共有してくれるし、2軍で徹底してほしいこともをしっかりやってくれるので、2軍監督の存在はすごく大きいですよね。

 また、今年から球団本部長になった松本(尚樹)さんも協力的で、選手に甘くなるのではなくて、プレーにいい影響が出る形で、プレーヤーズファーストを実践してくれています。少し前は寮に門限はあっても形だけだったり、栄養管理が十分ではなかったり。今はそれがなくなりました。キャンプ中も栄養管理をしっかりして、プロ入り後まもない選手は寮やホテルで食事をしなければいけないシステムになっている。あと、体重や体脂肪、筋量を毎日計ったり、今年は血液濃度などから疲労度を判断して、練習量を調整することも始めてみました。来年は順天堂大学の全面サポートが加わるので心強いですね」

――医療、コンディショニング、栄養の面でプロのサポートを得られるのは大きい。

「そうですね。就任1年目は夏の暑い時にチームが失速してしまった。どうしても屋外球場なので、試合中に足が攣ってしまう選手もいたんですよ。でも、去年は室内練習場にクーラーを設置してもらい、その中で練習するなど工夫をして1年間を戦いきった。今年は1年を戦って勝ち抜く、というのがチーム目標ですね」

――サポート態勢も強化される中、監督自身とコーチとの連携も強まった。

「1年目より2年目の方が連携できてきました。僕とコーチの連携以上に、選手とコーチがしっかりコミュニケーションを取ってくれているのがうれしいですね。僕は選手に直接何かを言うことはあまりしません。選手がコーチではなく、監督しか見なくなってしまうので。だから、何か伝えたいことがある時はコーチを通して間接的に伝えるようにしているし、もし直接話すことがあっても、コーチにも『こういう話をしますね』『しました』と共有しています。

 その代わり、僕は極力選手を見て『お前のこと見ているぞ』って、見られている感を出しています、ずっと(笑)。だから、練習中もそんなに話はしないし、コーチの横でずっと見ている。目でプレッシャーをかける。それが監督の仕事だと思うので。僕自身の経験から考えても、何も言わずに見ているのが選手は一番のプレッシャーだと思うんですよ」

(中編に続く)(佐藤直子 / Naoko Sato)

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