V長崎『再浮上』の1年に 「組織」見つめ直し昇格を

高田明社長(左)からクラブ経営のバトンを受け継いだ高田春奈氏(中央)=佐世保市、ジャパネットたかた本社

 サッカーJ2のV・ファーレン長崎にとって、2020年は何よりも結果が問われるシーズンになる。18年はJ1最下位でJ2に降格し、指揮官に手倉森監督を迎えた19年も12位に低迷した。今年は「再浮上の1年」と位置づけて、J1復帰を果たしたい。
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 昨季は個々の能力こそ高かったものの、チーム内の融合が進まずに苦戦。V長崎と同じJ1からの降格組で、しっかりとリーグ優勝を果たした柏と対照的な結果に終わった。もう一度「組織で戦う」という土台の部分から見つめ直す必要がある。
 移籍関係では、これまで貢献してきたベテラン勢がチームを去った一方、足元の技術が高い南米選手を完全移籍で複数獲得するなど戦力を維持。J2屈指の陣容で開幕を迎えられそうだ。
 他チームに目を向けると、J1に昇格した柏、横浜FCと入れ替わって松本と磐田が参戦。J3からは北九州、群馬が復帰した。いずれも昇格と降格の両方を知る、経験値の高い難敵と言えるだろう。鹿児島と岐阜はJ3に降格した。
 東京五輪開催に伴い、Jリーグは各方面への影響を考慮して期間中(7月24日~8月9日)の全面的な中断を決定。このため、J2は3、4、5、9月に1節ずつ水曜開催を挟む日程になった。4月末~5月初旬に中2、3日で5連戦という過密日程が組まれている。
 だが、V長崎にとっては、こうしたハードスケジュールがプラスに働く可能性もある。昨季は天皇杯を準決勝まで勝ち上がり、ルヴァン杯もグループステージを突破。リーグ戦42試合を加えると、J2チームで最多の計55試合を戦った。手倉森監督が「育まれたものが必ずある。しっかりJ1に返り咲かないといけない」と力を込めるように、厳しかったシーズンの経験を生かすことができれば、連戦は逆に勝ち点を積み上げるチャンスになり得る。

 ■高田春奈社長にバトンタッチ 「組織」見つめ直し昇格を

 V長崎の高田明社長(71)が1日付で退任し、後任に長女の高田春奈氏(42)が就任する。自ら手を挙げて経営のバトンを受け継いだという、Jクラブ唯一の女性社長は「強く優しいクラブづくり」を掲げる。
 特に注力していく事業は平和活動だ。クラブはJ1だった2018年に広島との平和祈念マッチを開催。19年は琉球との平和祈念マッチのほか、選手や市民向けに座学を行うなど活動の幅を広げてきた。それでも「選手、スタッフ、県民の意識を合わせていくような取り組みをしたい」とさらなる改善の必要性を感じており、より大きな発信力を持つために「まずは強くなることが大切」と、J1復帰に向けて今季のチーム強化にも例年以上に力を入れている。
 明氏が「僕よりも20倍くらい前向き。間違いなく素晴らしいクラブに育ててくれる」と期待を寄せる新社長。「社運を懸けて挑戦する」(明氏)という新スタジアムの計画も進む中、その手腕が試される。

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