心に潤いを

 古いことわざを、気象キャスターの草分けの倉島厚さんがエッセーに書いていた。〈正月三日に盆二日、節句一日、事日中(ことひなか)〉。「事」は祭りを指す。休みの日数はこれくらいにしておきなさい、という勤勉の勧めらしい▲働き方も休み方も「改革」がいわれる時世に通じることわざではないが、つかの間の骨休みや、ゆったり過ごす時間がいかに大切か教えるようでもある。いつも慌ただしい人にとって、この年末年始は大切な時間になっているだろうか▲正月休みを何に例えるか? そう聞かれたら答えは人それぞれに違いないが、自分に問えば「マラソンの給水ポイント」という答えが浮かぶ。走って、のどを潤して、また走る…▲家族や親しい人と過ごすひとときに心を潤す。しばらく会っていない、懐かしい人からの年賀状に心を潤す。一枚一枚、姿かたちの違うネズミを眺めながら少しばかり過去へと旅するのも、新年の過ごし方かもしれない▲きょう3日まで古里にいて、あす、あさってはUターンという人、ご家族も多い。「正月三日」の休みを終えれば、人はまた動きだす▲物の数量がぐんと増えるのを「ねずみ算式に」と例える。子(ね)年は繁栄の年になり、経済的に潤うと俗に言う。週明け頃、また走ることになりそうな人たちに、今はたっぷり給水を。(徹)

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