【新春企画】ロッテ井口監督独占インタ・中編 オフに見せた球団の本気度「勝つための環境整備」

ロッテ・井口資仁監督【写真:佐藤直子】

就任3年目の井口監督が胸の内を語る、全3回シリーズの中編

 2020年がいよいよ幕を開けた。今年も年明けから大きなスポーツイベントが目白押しとなるが、2月1日にキャンプインする日本プロ野球も大いなる盛り上がりが予想される。近年はソフトバンクの強さが際立つパ・リーグだが、その牙城を崩そうと今シーズンに狙いを定めているチームがある。それが千葉ロッテマリーンズだ。

 現役引退直後の2018年から指揮を執る井口資仁監督は、就任1年目に6位から5位、2年目の昨季は5位から4位へとチームを引き上げてきた。就任時に掲げた「常勝軍団を作る」という公約を果たすべく、その土台作りに務めた指揮官は、2020年は「ホップ・ステップ・ジャンプの年にしたい」と、一気に10年ぶりの日本一を狙う。

「Full-Count」では新春特別企画として、井口監督に独占インタビューを行い、その胸の内に迫った。今回は全3回シリーズの中編として、今オフの取り組み・補強について語る。

 ◇ ◇ ◇

――10年ぶりの日本一を目指す今季に向け、オフにはプエルトリコでのウインターリーグに3選手を派遣し、米国シアトルにあるトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」にも5投手とコーチ、トレーナーを派遣。さらに、国内滞在組にも元五輪スプリンターで筑波大准教授の谷川聡氏による特別講座「ランニングトレーニング方法」を実施するなど、いろいろな取り組みを行っている。

「そうですね。チーム全体としても順天堂大学と連携するなど様々な取り組みをする中で、せっかく11月の秋季キャンプまで積み上げたものをどうやって春まで繋げていくか、考えました。特に寮生はせっかく寮にいるので、オフ期間にいろいろな講義を受けるなど、自分自身ではできないことに取り組んでいければということです」

――プエルトリコでは、岡大海外野手、安田尚憲内野手、山本大貴投手が経験を積みました。

「毎日送られてくる結果と動画をチェックしていました。安田はかなり試合に出させてもらって、岡が12月はなかなか出られなかったけど、いろいろな選手を見たり、一緒にプレーしたり、刺激にはなっていると思います。その中で安田はしっかり打撃で結果を出した(打率.349、9打点、出塁率.473)。守備も無難にやったようだし、今年が楽しみですね。もう3年目になりますから。これまで1軍に上げたいチャンスも何回かあったんですけど、安田に関しては中途半端に上げたくなかった。試合に出すなら最初から最後まで使い続けよう、という思いでいます。去年は1年間しっかり2軍で結果を出したので、今年こそは1軍で期待したいですよね」

米国「ドライブライン」派遣に5投手が志願 「強い思いを持ってくれていた」

――ドライブラインでは、成田翔、小島和哉、中村稔弥、種市篤暉、二木康太の5投手、川越英隆1軍投手コーチ、根本淳平1軍ストレングスコーチがトレーニングを積みました。

「ドライブラインの報告も常に見ていました。実は昨季のデータを見ると、チーム総投球数のうち時速150キロを超える球のパーセンテージでは、マリーンズがリーグ最下位なんです。トップのホークスは30%を超えていて、うちは3%。全体投球数の3%しか150キロを超えていないんですよ(苦笑)。そこに当然、優勝したチームと4位の違いがある。バッター目線から見ても、やっぱり速いストレートは一番の脅威になります。時速150キロとは言わなくても140キロ台後半が出るくらいのキレは欲しいな、と。

 去年のオフに西野(勇士)が自分1人でドライブラインに行って、それでいい成績を残してくれました(37試合2勝3敗2セーブ5ホールド、防御率2.96)。それがチームメートにすごく刺激になって、ドライブラインではどういうことをやっているのかと興味を持ったり、自分自身もそうなりたいと思ったようで、若手が5人志願してくれました」

――5投手はいずれも、大きく開花する可能性のあるストレートを持っている。

「そうですよね。スピードはもちろん、キレが増すだけでも打者からの見え方は違うと思いますね。うちの投手陣はそこを追い求めている投手が少ないのかなと思っていたんですけど、ドライブラインに行ったメンバーをはじめ、強い思いを持っていてくれたのはうれしかったですね」

――球団もいろいろな形で協力してくれている。

「監督になってから球団といろいろな話をして、いろいろな改革をしてくれている。本当に勝つためにお金を使ってくれるし、施設も使いやすいように改装してくれるし、このオフのFA(フリーエージェント)も頑張ってくれました。僕だけが欲しいというだけではなく、球団として欲しいから取りに行こうと、選手としっかり交渉して取ってきてくれる。これは監督が交替したからという話じゃなくて、球団としていい方向に進もうというタイミングだったんだと思います。1、2軍も一本化されてきて本当にいい環境になりつつある。勝つための環境整備はできてきたと思います」

美馬、福田をFAで獲得 益田はFA権を行使せずに残留「優勝するまでは…!」

――美馬学投手(楽天から移籍)、福田秀平外野手(ソフトバンクから移籍)の2人は、監督も早くから高く評価していた。

「美馬と福田を取れたのは大きいですね。美馬に関しては、先発ローテを守って投げてもらえることが第一。プラス、うちには打者に向かっていくタイプのピッチャーがあまりいないので、若い投手を引っ張っていく先発のリーダー格がほしいと思っていました」

――美馬投手はマウンドで気持ちが出るタイプ。

「打者から見ても、その気持ちでちょっと押される感じがするタイプ。体は大きくないですけど、マウンドでは大きく見えるタイプのピッチャーなのでいい手本になってほしいなと思いますね」

――福田選手は勝負強いバッティングが魅力。

「勝負強さっていうのは、持って生まれたところがある。ああいう『ここぞ』という場面で打ってくれるバッターはいいですね。彼はソフトバンクでレギュラーではなかったですけど、レギュラーとして十分にやっていける力はある」

――勝者のメンタリティーを持った選手が加わる効果もある。

「そうですね。勝ち癖っていうものはありますから。大事なところで力を発揮できる選手の存在は、いい刺激になるでしょうね」

――福田選手はスピードもある。

「打順の1、2番を任せられるS級の俊足選手が欲しかったので、荻野(貴司)と福田が1、2番に並べば作戦の幅が広がります。うちでスピードがS級の選手は荻野と大海くらいしかいないんですよ。あと、外野の年齢がだんだん上がって、藤原(恭大)みたいな若手との間を繋ぐ選手がいない。そこは本当にうちの補強ポイントですよね。ドラフトでも外野手では高部(瑛斗・3位指名)を取って、佐藤(都志也・2位)もキャッチャーですけど外野もできるので期待しています」

――国内FA権を取得した益田直也投手は行使せずに残留した。

「FAは選手の権利なので、使うのを止めることは全然ないんですけど、残ってくれたことはうれしいです。益田はいつも『監督が日米2000本安打を達成した時(2013年7月26日楽天戦)に僕が打たれて負けてしまったので、優勝するまではずっとやりますよ!』って、いつも言ってくれるんです。そういう思いを持ってくれている選手は『ここぞ』という時に力を発揮してくれる。

 去年の最終戦も点差が開いていましたが、益田にマウンドに行ってもらいました。1年間の締めはお前しかいない。ここで敗戦処理のピッチャーを出すわけにはいかない。どんな負けている試合でも、最後はお前が投げてくれって。そういうのを分かってくれる選手。やっぱりロッテが好きなんだなって思いますし、うれしいですね」

(後編に続く)(佐藤直子 / Naoko Sato)

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