2019年ニュース総集編

今年のNY近郊を振り返る


2月

アマゾン本社建設を撤回 地元の強い反対受け

アマゾン・コムは2月14日、クイーンズ区ロングアイランドシティーで予定していた、第2本社建設計画を撤回した。同社に対する税制優遇措置を批判していた、地元政治家らの強い反対を受けての判断。同月15日付amNYが伝えた。

ニューヨーク州および市は、今後10年間に2万5000人余りの雇用創出を予定していた同社に対し、28億ドル超の助成金を給付することになっていた。しかし地元政治家らは、大企業のアマゾンに対する助成金に疑問を呈し、本社建設で生活費が地元住民に払えないほど大幅に上昇する可能性を指摘していた。

アマゾンは、「長期的に協力的な関係を築けない」と判断し、撤退を決定したという。同社の判断に対し、アンドリュー・クオモ知事は、失われた経済機会を州議会の責任に帰し、ビル・デブラシオ市長は、同社と地元社会との協調不足による結果だと語った。

ニューヨークと共に建設地に選出された、バージニア州北部の新本社建設は順調に進んでおり、2020年オープン予定。


7月

ミッドタウンで大停電 エレベーター400台停止

区内ビルのエレベーター400台が停止した他、59ストリートとコロンバスサークル、86ストリートとブロードウェーでは、地下鉄乗客の約2800人が車内に閉じ込められた。FDNYの発表によると、緊急電話は急増したものの、負傷や入院はなし。信号が消えた街頭では、市民が交通整理に協力する姿も見られた。

コン・エジソン社は、西49ストリートの変電所に不具合が起きたためと発表した。

1977年にも、マンハッタン市内の大半で大停電が発生している。


3月

マフィア首領を射殺 犯人は陰謀説ほのめかす

イタリア系マフィア「ガンビーノ・ファミリー」の首領フランチェスコ・カリ氏が、スタテンアイランドの自宅前で射殺された事件で、3月、アンソニー・コメロ被告(24)が殺人罪で起訴された。同月18日付ABC7ニューヨークが伝えた。

同被告はニュージャージー州オーシャン郡で身柄を拘束され、18日にスタテンアイランド地区への身柄引き渡しに同意。ニューヨーク州で正式起訴された。

NYPDによると、カリ氏の自宅前でトラックが車に衝突。カリ氏は外に出たところで10発の銃弾を撃ち込まれ、死亡した。NYPDは、自動車事故はカリ氏を外におびき出すために仕組まれたとみている。捜査当局がニュージャージーとスタテンアイランドの同被告の自宅を捜査した結果、カリ氏殺害に関連する法医学的証拠を発見した。

12月6日付のニューヨークタイムズの報道によると、コメロ被告は「Qアノン」と呼ばれる極右陰謀論に執心。カリ氏が左翼の国家陰謀に関与していたという疑念を、殺害動機としてほのめかしているという。


11月

ライオンの檻に侵入 SNS配信で話題に

ブロンクス動物園でライオンの囲いに侵入し、踊るなどしてライオンを挑発した、自称「純潔メスライオン」の女が11月6日、NYPDに不法侵入罪で逮捕・起訴された。7日付パッチが伝えた。

ブルックリン区ブラウンズビル在住のマヤ・オートリー被告(33)は、10月28日、動物園の2頭のライオンやキリンに近付くため、ライオンの囲いの中に侵入。ライオンに手を振るなどした姿を動画に収め、インスタグラムで共有した。

同被告はまた投稿で、「肉食獣に立ち向かうことを恐れない」と書き、自らを「純潔メスライオン」と称した。

11月7日付のABC7ニューヨークの報道によると、NYPDが同被告の投稿に出頭を呼び掛けるコメントをした際、同被告は同局を挑発。しかし後日、「自首するためにバークレイズセンターへ行く」とインスタグラムに投稿し、その後出頭した。

地元ラジオ局の12月18日付の報道によると、同被告は同日に予定されていた裁判に姿を見せなかった。


4月

ICE活動が急増 相談減少などの弊害も

連邦移民・関税執行局(ICE)による裁判所内逮捕の急増に伴い、4月、米司法制度のさまざまな面で弊害が生じていることが明らかになった。同月10日付amNYが伝えた。

非営利団体の連合「イミグラント・ディフェンス・プロジェクト」の報告によると、ICEによるニューヨーク州と周辺の裁判所内逮捕は、2016〜18年に17・36倍に増加した。これらの逮捕の大半は、ブルックリン区とクイーンズ区を中心にニューヨーク市内で発生した。

非米国市民による、ブルックリン区地方検事局移民部への犯罪の通報は67%減った。マンハッタン区家庭裁判所では、犯罪犠牲者の非市民を保護する、Uビザ認定の申請が100%減少。州内全域の地方検事局も、ICEによる出廷時逮捕を懸念し、家庭内暴力や他の犯罪事件について証言することに消極的な人々が増えたことを指摘した。


8月

大麻使用を非犯罪化 合法化は実現せず

ニューヨーク州は8月28日、娯楽目的の大麻使用を非犯罪化した。少量の大麻所持は罰金刑となり、逮捕されなくなった他、1オンス以下の大麻所持による罰金の上限は50ドルに引き下げられた。大麻関連の過去の一定の犯罪歴も抹消される。同日付PIX11が伝えた。

州当局によると、大麻に関する軽犯罪の記録20万件以上が封印され、2万4400人の犯罪記録が抹消されることになる。アンドリュー・クオモ知事は同日、「有色人種のコミュニティーは、大麻を管理する法律による不当な影響を長らく受け、不公平な大麻関連の犯罪歴に生涯苦しめられてきた」と述べた。同知事が提唱してきた合法化は2019年現在、実現していない。

12月17日付のフォーブスの報道によると、2019年はニューヨーク州以外にも、ニュージャージー州、ペンシルベニア州、コネティカット州、ロードアイランド州などの各州知事が、大麻合法化に向けて働き掛けた。実際に合法化した州はイリノイで、6月に知事が署名。全米で11州目の合法化だった。


5月

憎悪犯罪が68%増 かぎ十字落書き多発

NYPDは5月2日、年頭から4月30日までの市内のヘイトクライム(憎悪犯罪)が前年比で67%増加したと発表した。同日付amNYが伝えた。

4月30日までの憎悪犯罪は145件。うち82件が反ユダヤ的で、その約8割で、かぎ十字が落書きされていた。4月は特定の宗教を標的にした大規模攻撃が世界中で発生。ニューヨーク市内では、マンハッタン区ミッドタウンの聖パトリック大聖堂で、放火未遂により男が1人逮捕された。

NYPDは、「ニューヨーク市は反ユダヤや宗教、性的指向などいかなる理由による憎悪犯罪も許さない」と声明を発表。ビル・デブラシオ市長は、「米国を構成する多様な人々を好まない排外主義者が、現在全米で浮上している状況を懸念しており、われわれは彼らに対して反撃しなければならない」と語った。

全米最大のユダヤ人団体である名誉毀損(きそん)防止同盟によると、昨年に全米で1879件の反ユダヤ的行為が起きており、うち340件がニューヨーク州で発生した。


1月

Lラインの閉鎖中止 MTAが意見受け入れ

MTAは1月3日、今年春から予定されていたトンネル改修工事に伴う、Lラインの全面閉鎖の中止を発表した。Lラインのカナーシートンネルは、ハリケーン・サンディの洪水による損傷のため改修工事を必要としており、工事中は同路線の15カ月間の全面閉鎖が発表されていた。

毎日40万人の乗客が利用する、同路線の閉鎖による影響が懸念される中、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は2018年12月、工学専門家らを含む委員会を設置。同トンネル改修工事の見直しを命じた。同委員会は、最新技術を取り入れた新システムによる合理化案を提案し、MTAがこの提案を受け入れ、閉鎖が回避された。

工事期間は15〜20カ月が想定されている。

また12月16日付のパッチの報道によると、MTAは今年のクリスマスと年末年始に工事を一時中断し、現在運行頻度が落ちているLラインを、通常スケジュールで運行することを発表した。


9月

中高生らストライキ 温暖化の危機に抗議

各国首脳らが参加する「気候変動サミット」を控えた9月20日、ニューヨーク市内の中高生らが学校を休み、地球温暖化対策を訴える抗議活動をローワーマンハッタンなどで行った。世界150カ国で数百万人が参加した「世界気候ストライキ」の一環。同日付ゴッサミストが伝えた。

デモ行進はフォーリースクエアからバッテリーパークまで行われた。ビル・デブラシオ市長はニューヨーク市の生徒・学生が同抗議活動に参加するために欠席することを事前に認めており、自らデモに参加した。

「学校スト」を開始した、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが、午後5時30分にバッテリーパークで推定25万人の聴衆を前に、スピーチを行った。トゥンベリさんは、「気候変動に対して最も責任がある人々がその責任を取り、世界の指導者たちが行動するよう促します」と訴えかけた。


6月

放火で13人けが ユダヤ教指導者に恨み

ブルックリン区ミッドウッドで6月13日早朝に火災が発生し、13人が負傷した。この事件について、ラビ(ユダヤ教指導者)に怨恨(えんこん)を抱くとみられる男が逮捕された。同月16日付PIX11が伝えた。

マシュー・カレレフスキー容疑者(41)はペンシルベニア州マッキーズポート在住で、ミッドウッド地区東17ストリートにある住宅への放火および殺人未遂容疑で起訴された。同容疑者は自身の車と近隣住宅に火を放ったとみられている。監視映像には、火災発生直後に現場から走ってくる人物が映っていた。火は急速に広がり、13人が負傷、うち生後6カ月の乳児が重体。消防士3人と緊急医療隊員1人も入院した。

同容疑者は腕に「憎悪を忘れるな。ラビを殺せ」との入れ墨を入れていた。特定のラビの名前が彫られていることから、火災の起きた住宅の一つに住んでいたラビに個人的怨恨を持つとみられている。


12月

バーナード大女学生刺殺 3人組の犯行、13歳少年出頭

12月11日、マンハッタン区モーニングサイドパークで、バーナードカレッジに通う女学生が3人組に襲われ、殺された。同月13日に犯人の一人である13歳の少年が第二級殺人罪、強盗、武器不法所持で起訴された。13日付CBSニューヨークが伝えた。

テッサ・メジャーズさん(18)は11日夕方、大学近くの公園で3人組の強盗に襲われ、刺殺された。NYPDは現場近くを捜査中、起訴された13歳の被告を発見。同被告は12日、マンハッタンアベニューと119ストリートに面した建物ロビーで拘束された。ナイフを所持しており、建物への不法侵入で逮捕された。

同被告は叔父が同席した警察の尋問で、友人2人と共に被害者を殺害したことを自白。証言によると、3人組は男性をつけて公園に行ったが、襲うことを断念し、代わり被害者を襲ったという。友人2人が首を絞め、ナイフで刺したのを目撃した後、ポケットに入っていたものを奪って逃げたと述べた。NYPDは23日現在、残りの2人の容疑者らを捜索している。


10月

ライカーズ閉鎖へ 市議会が承認

ニューヨーク市議会は10月17日、ライカーズ島刑務所を閉鎖し、より近代的で人道的な小規模の刑務所に収容者を移す計画を承認した。同月18日付FOX5ニューヨークが伝えた。

市議会は賛成36票、反対13票。四つの小規模刑務所を、新設または改設する8億ドルの計画を承認した。ライカーズ島刑務所は2026年までに閉鎖される。市当局は犯罪率の低下により、投獄数は1991年の最高約2万2000人から、現在約7000人に減少していることを挙げ、主に裁判を待っている受刑者を収容しているライカーズ島の閉鎖は可能としている。

市は12月現在、敷地を公共スペースとするための計画を進めている。


おまけ

年間最多検索ワード グーグル社が発表

グーグル社は12月、毎年恒例の企画「一年で最も検索されたワードランキング」の、2019年版を発表した。

米国版の総合部門では、ディズニー社が今年開始した、動画配信サービス「ディズニープラス」が第1位を獲得。第2位は20歳の若さでこの世を去った俳優の「キャメロン・ボイス」で、訃報部門でも第1位だった。第3位には、同じく今年4月に急逝した、ラッパーの「ニプシー・ハッスル」がランクインした。

その他の部門の、米国版の検索第1位は次の通り。

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