寺岡呼人「世の中にないモノに火をつけたい」ヒット曲の生まれ方

TALKIN’ ON SUNDAY

InterFM897、日曜日のモーニングショー『TALKIN’ ON SUNDAY』(DJ: 古家正亨)。ゲストコーナー「みなとアセット presents SUCCESSION 〜Handing Over The Torch〜」、12月22日は、ミュージシャンの寺岡呼人さんをお迎えしました。

変わっていく音楽界。新しいモノの便利さと古いモノの良さ

古家正亨(以下、古谷):寺岡さん、よろしくお願いします!

寺岡呼人(以下、寺岡):よろしくお願いします。

古家:ジュンスカ(JUN SKY WALKER(S))でのデビューは'88年。

寺岡:そうですね。もう31年。そろそろ32年。すごいですね。

古家:この30年の音楽界の変化ってすごいですよね。

寺岡:自分自身がそこにいると、気づけばって感じがあるんですけど、僕がジュンスカに在籍していたのって5年なんですけど、その5年でさえ随分変わりますね。つい先日U2を見に行ったんですけど、1987年の「Joshua Tree」を再演するっていう公演で。それは僕らがデビューする1年前のアルバムなんで33年前の作品なんですけど、でも当時すごいなと思ってたライブがプロジェクション・マッピングみたいなのにバ―っと出て。ライブですら、こんなに進化してる。特にU2なんて最先端のライブをずっとやり続けてた人たちじゃないですか。だから音楽シーンは、すごいスピードで変わってるんだなっていうのを感じましたね。

古家:ただ聴き手から見る音楽界と、作り手の方から見るものと、少し違いが見えてくると思うんですけど。聴き手からすると単純にメディアが変わって、レコードからCD、MDも挟んで今ストリーミングとか。作り手としては、今CDなどのモノではなく、データとして送り出すっていうのはどんな風に考えているんでしょうか。

寺岡:我々は特にアナログの世代なので、A面23分終わってひっくり返してB面みたいな、B面一曲目に何が入るかとか、トータルでコンセプト的にアルバムを聴いていた世代なんですね。未だに1曲単位っていうのは馴染みがないっていうのは、正直ありますね。ただ、じゃあ今CD買いに行くかっていうと、やっぱりストリーミングになっちゃうんですよね、僕自身も。ただ、一番怖いのは、モノで持っていれば、大切にしていけば孫の世代まで受け継がれるけど、データだとその人がパソコンを消去したらもうモノとしては残らないっていう不安はすごくありますね。だから今、欧米の方ではアナログレコードで出して、ストリーミングはヘッドフォンで聴いてくれみたいな出し方も出てきてるけど、あれはすごく羨ましい。実際、僕も自宅ではアナログしか聴かないので。このInterFM897で番組をやらせていただいた時も、アナログレコードでかけるとかやっていました。変わっていくものを否定する気は全くないんですけど、同時にアナログの良さみたいなのもうまく伝わっていくといいなと思ってます。

古家:当然いいこともあると思うんですよね。レコーディングが技術的に便利になったとか。

寺岡:それは最高に便利になりました(笑)。いやー、もうこれは。僕なんかほとんど自主製作みたいなもんなので、レコードを作る制作費は相当。昔はアナログレコーダーがあるスタジオじゃないとダメだったし、デジタルも(SONY)3348っていうデジタルのレコーダーがあるスタジオじゃないとダメだったので。それが今やパソコンで、自宅でクオリティの高いものが出来ちゃうので、そこはもう素晴らしいと思います。

古家:そういう中で、いい作品が生まれるチャンスが増えてくると。そういう面では技術的革新は音楽界にプラスの面をもたらしているんですね。

寺岡:そうです。かたやJosé Jamesみたいに、全ての過程をアナログでレコーディングするアーティストも海外には居たりとか、HIPHOPのクリエイターがすごく古い機材で曲を作っていったりとか。うまくフュージョンできると、また新しい潮流っていうのが生まれるんじゃないかと思いますけど。

古家:なんか今の若い子と話してたら「ヤオヤ、ヤオヤ」って言うから何のことかと思ったら、ROLANDの「TR-808」(リズムマシン)のことだって。

寺岡:ヤオヤだって本物はすごいプレミアついちゃってるんじゃないかな。何が新しくなるかわからないですね。

古家:寺岡さんはプロデューサーとして色んなミュージシャンと交流があると思うんですけども、ヒット曲の傾向なんてものは、音楽プロデューサーの目から見て変化って感じますか?

寺岡:もちろんネットってものが出てきて、新人の見つけ方とかヒットの出方っていうのは当然変わってきたなって感じはしますね。ただ、僕はいつもこれが流行ってるからこのような感じを作ろうというのはあんまりやらないタイプというか。逆を行くというか、10人中8人がこれが良いと言っても残りの2に何か活路はないか、というのを探したいというか。世の中に全くないものに火をつけたいタイプなので、あまり当たらないですね(笑)。でも映画もそうですけど、今の時代にあえてこういうジャンルのものを持ってくるとか、あるじゃないですか。街を歩けば何が流行ってるかって分かるからキャッチをしながら、だったら僕ならこうするかな、とかそういう感じでやってますね。

古家:そこから逆に、普遍的なものが生まれるって可能性は高いように僕は感じます。

寺岡:確率は低いんですけど(笑)、普遍的なものが好きなんです。時計もオーディオもとにかく古いものが好きで。例えばイギリスなんかは同じ島国ですけど、すごくそこが似てるなと思って。アメリカとかから生まれたムーブメントをイギリス風に調理してイギリス料理を作るのが上手だと思うんですけど、日本人もそういうものをやっていけば面白いものが出来るんじゃないかと思うんです。過去の音楽の財産をもう一回この時代に持ってくるとか、日本人はすごく得意だと思うのでそういうヒットを作りたいとは思いますね。今僕がずっと言い続けてるのはAORのスター。角松(敏生)さんとか(山下)達郎さんみたいなことをやる若いスターで、サウンドは最高にクオリティの高いもの。絶対来ると思うんです!…と言いながら、もう15年くらい経ってる(笑)。

古家:そしたら、周りの国の方が先に流行り始めちゃって。もったいないですね。

寺岡:スーパースターを作りたいですよね。Elvis PresleyやMichael Jacksonのような。これだけ多メディアになっちゃうと、局所局所のスターはいるんだけど、みんなの憧れっていう存在はなかなか難しい。

古家:とにかく寺岡さんに期待するしかないと(笑)。

寺岡:どこかでスターが誕生したら、寺岡呼人がやったと思っていただけたら(笑)。

TALKIN’ ON SUNDAY

放送局:InterFM897

放送日時:毎週日曜 7時00分~8時00分

出演者:古家正亨

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