タイに移住した日本人、銀行口座やクレジットカードはどう扱っている?

タイに十年以上定住した経験のある筆者が、タイ移住へのステップを紹介する[当連載(https://media.moneyforward.com/series/95)、今回のテーマは「移住の資金」についてです。

タイに暮らす7万人超の日本人はどうやってお金を管理し、使っているのでしょうか。口座はどうしているのでしょうか。皆さんの実例から見ていきます。


まずは日本の口座をベースにする

海外移住といっても、そのベースとなる資金は日本の銀行口座に保管しておくべきでしょう。大きな額の現金を国外に持ち出す必要はまったくないし、そもそも危険です。

旅行であるなら、ある程度の額の現金を持っていって現地で両替していくという人も多いでしょうが、長期にわたって生活するために海外に行くのです。現金はなるべく少ないほうがいいかと思います。

持っていくのは、国外のATMから現金を引き出せるカードです。国際プリペイドカード、国際デビットカードなどといったもの。VisaやMaster、JCBなどのブランドとも提携しており、加盟店でのショッピング利用もできます。いまでは大手都市銀行やネット銀行をはじめとしてさまざまな金融機関が発行しています。

まずはいつも使っているメインバンクが、こうしたカードを持っているかどうか調べてみるといいでしょう。

デビットカードは「使った額だけ即時に引き落とし」で、ひもづけられている口座の残高、もしくは事前に設定した利用制限額までの使用ができます。プリペイドカードも同様の機能ですが、審査がなく簡単に作れるものが中心です。

クレジットカードも必須でしょう。現地ATMやショッピングでの利用のほか、万が一のときのキャッシング、それにネットサービスの利用など海外では日本以上にクレカを使います。amazonだってポチればバンコクまで配送してくれるのです。

こうした国際的に使えるカードを2、3枚は渡航前に準備したいところ。そして相互に送金できるよう、ネットバンキングの手続きも済ませておくといいでしょう。

ちなみにリタイア組は、年金の受け取り口座から、現地でお金を引き出して生活している方が多いようです。

ATMはタイ生活のインフラ

バンコクの街を歩いていると、東京よりもはるかにあちこちにATMが並んでいるところを見ます。日本のようにコンビニ内だけではなく、駅の構内、ビルの壁面、路上、モールの中など、あらゆる場所に設置されており、非常に便利。

コンビニではATMと野良猫がつきもの。日本語の案内もあって親切

操作画面はタイ語ですが、英語を選ぶこともできます。カシコン銀行などは日本語の表示まであり、至れり尽くせり。

カシコン銀行のATMは日本語表記が標準装備。とっても助かる

これらのATMからタイバーツを引き出して生活していくことになるでしょう。引き出すたびに手数料はかかるのですが、それは安全のための経費のようなもの。ATMはタイ生活では欠かせないライフラインになるでしょう。

ただし、ごくまれにですが、カードが飲み込まれて戻ってこないといったトラブルが起きることがあります。ATMに表示された緊急連絡先に電話して処理するのですが、言葉はタイ語もしくは英語。まだ不慣れなうちは難しい作業かもしれません。万が一のトラブルを避けるため、銀行店舗内のATMを窓口営業時間内に利用するという人もいるようです。こうした紛失のトラブルを想定し、やはりカードは複数持っていくことをおすすめします。

またバンコクを離れた地方都市や、周辺のカンボジア、ラオス、ミャンマーなどの国では「その国の銀行が発行したカードしか使えない」ATMも混じっています。どの国でもVisaもしくは提携オンラインシステムのPlus、Masterもしくは同じく提携オンラインシステムのCirrusのマークがあるATMなら、日本で発行したカードも使えるはずです。

複数種類のATMに対応できるよう、VisaとMasterどちらのブランドも持っていくと安心です。

就職を決めたら現地口座を開こう

日本の口座をメインに生活するのは、あくまで一時期のこと。やはりタイの銀行に口座を開設したいものです。タイの生活者であるという実感を持つことができるし、なによりありがたいのはATMの手数料が無料だということ。日本などの海外口座から国際カードでお金を引き出す際には手数料がかかりますが、タイの口座から引き出すぶんには無料なのです。口座をつくった銀行のATMであれば、土日でも週末でも関係なく手数料はゼロ。これは日本にはないサービスでしょう。

地下鉄の駅構内にもたくさんのATMが並ぶ

口座の開設にあたっては、通常は長期滞在用のビザと、ワークパーミット(労働許可証)が必要になります。つまり、就労を決めていることが条件になるわけです。タイで就職活動をして、勤め先が決まり、会社を通してビザとワークパーミットを手に入れたら、次に行う作業が口座の開設。こうして現地採用者はタイでの暮らしの基盤を整備していくのです。

バンコク銀行、カシコン銀行、クルンシー銀行では、日本人スタッフもしくは日本語のわかるタイ人スタッフがいたり、日本語のウェブサイトもあります。タイ在住日本人という存在は、それだけ大きなマーケットであるということです。

そしてタイの銀行は金利が良いことでも知られています。普通預金で0.5%前後、1年定期で1.5%くらいでしょうか。通帳のシミのごときほぼゼロ金利の日本からすると、だいぶお得なのです。

バーツ預金はこの先有利になる?

さらに現在、タイバーツの高値が続いています。1バーツ≒3.6円、1万円を両替すると2,750バーツという状況で、これは旅行者にとってはかなりきついでしょう。1万円が3,000バーツ、4,000バーツになる時代と比べると、タイでの日本円の通用度はだいぶ低くなっています。

逆を言うと、タイでバーツを稼ぎ、預金すれば、日本では大きな価値を持つということでもあります。現地採用者でも日本への一時帰国のときにはずいぶんと助かるでしょう。タイ人の中間層が日本に旅行して「爆買い」していく光景も見るようになった昨今ですが、現地採用者もそんな彼らの気持ちがわかるかもしれません。

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