浦頭地区国際クルーズ船拠点 4月に供用開始 佐世保寄港、昨年の2倍超へ

浦頭地区の完成予想図。中央がターミナルビルで、大型バス130台を止められる駐車場を整備する(カーニバル社提供)

 長崎県佐世保市の浦頭地区で進む官民一体のプロジェクト、国際クルーズ拠点整備事業は、4月に供用開始を迎える。クルーズ船が接岸できる佐世保港の拠点は、三浦地区と合わせ2カ所に。これに伴い2020年は、19年の2倍以上となる年間200回の寄港を見込む。工事とともに、受け入れ態勢づくりも進んでいる。

 事業は、国土交通省と佐世保市、世界最大手のクルーズ会社、カーニバルコーポレーション&PLC(カーニバル社)の3者で進めている。国交省は岸壁と泊地を、市は駐車場と臨港道路をそれぞれ整備する。事業費は計約65億円。カーニバル社はターミナルビルを建設する。総工費は約18億円という。
 「佐世保には将来性がある」。19年10月、ターミナルビル着工前の地鎮祭で来日したカーニバル社の幹部は、こう断言した。
 ビルは鉄骨一部2階建てで、延べ床面積は約6500平方メートル。外観は周囲の海や山に調和したデザインを採用した。中には免税店や送迎デッキを設け、地元の特産品を取り扱うスペースの設置も検討している。
 岸壁には16万トン級の停泊が可能。大型バス130台を止めることができる駐車場も整備する。供用開始後、カーニバル社は港の利用について優先的に予約できる。

海側から見たターミナルビルの完成予想図(カーニバル社提供)

 佐世保では近年、東アジアを中心にクルーズ船の寄港が増えた。2015年は36回(乗客数4万533人)、2016年に64回(同7万9893人)を記録。2017年は84回で乗客数は10万2714人となり、初めて10万人を超えた。
 2018年には三浦地区の岸壁を延伸。16万トン級が入港できるようになった。寄港は108回となり100回の大台を突破。乗客数は23万3399人まで伸ばした。19年は後半に相次いだ船の行き先変更などが響き、79回にとどまったが、船の大型化に伴い乗客数は19万人を確保。20年は200回、乗客数は54万人を見込んでいる。

佐世保へのクルーズ船寄港実績

 寄港数の増加に伴い、周辺の交通渋滞が懸念されている。乗客の多くは大型バスで移動。特に浦頭地区では、佐世保市中心部に向かう際の陸上輸送は欠かせない。現在、周辺の国道では一部を拡幅する工事が進められている。
 さらに陸上輸送からの転換も図る。ターミナルビル近くに浮桟橋を設置し、船で佐世保市中心部の三浦地区まで運ぶ計画。船の大きさや運航する回数は検討中だが、市によると、15分程度で行き来できるという。交通渋滞の緩和に加え、利用者にとっても市中心部へのアクセス向上につながることが期待される。

4月の供用開始に向け、工事が進む浦頭地区=佐世保市針尾北町

 クルーズ船で訪れた外国人は、地元での消費額が少ないという試算がある。増加する観光客をどのように地域の活性化につなげるのか。周遊観光の企画など、ソフト面の対策が鍵を握る。

© 株式会社長崎新聞社