歌舞伎町で「ぼったくり」報告が多発 改めて警鐘を鳴らずぼったくりの傾向と対策

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東洋一の歓楽街、新宿歌舞伎町。首都東京を代表する歓楽街であるが、その危うさを知らない人が多くなっているようだ。

本サイトでも取り上げたが、飲み物とから揚げ、焼き鳥だけで1万円を請求されたという「ぼったくり」報告がTwitterで話題になった。年末料金やお通し代(ひとり1000円)が高いと議論を呼んだが、場合によっては、1万円どころか身ぐるみ剥がされ、時には身体的な被害に遭うのがこの街だ。

このTwitterでわかることは、歌舞伎町ルネッサンスで若者が流入したことにより、歌舞伎町が持つ潜在的な恐怖に疎い人が増えたということかもしれない。改めてその“恐怖”を認識させるために、歌舞伎町のぼったくりの実態と対策をおさらいしてみたい。

歌舞伎町の悪名を高めたとも言えるぼったくりが、もっとも隆盛を極めたのはやはりバブル時代、1980年代である。当時、「キャンパスパブ」という女子大生(要するに素人)をイメージしたパブ形式のプチクラブが大流行りしていたが、そのキャンパスパブ形態を利用したぼったくりチェーンがあった。

そのチェーンは歌舞伎町で十数店舗を展開しており、営業方針も統一されていた。まず、料金は「5000円ポッキリ」がウリ。安っぽいスーツをきた若い男性が店の近くでキャッチをし、5000円、女子大生に目が眩んだカモを引き入れる仕組みだ。店に入った客は5000円どころか安くて7、8万円はザラに巻き上げられるという寸法だ。

このチェーンの特徴は各店舗に売り上げを競わせて、「優良店」には金銭的・地位的優遇を、売り上げが悪い店には身体的なものを含む「気合い」を入れるという、ある意味体育会系的なシステムをとっていた。言ってみれば恐怖支配なのだが、従事する若者は簡単に取り込まれ、ゲーム感覚でぼったくりを競ったのである。

当然だが、ある意味過酷な、このシステムがいつまでも機能するワケはない。功を焦ったのか、ある店舗で支払いを拒む客を集団で暴行し死に至らしめ、その遺体を杉並区内の公園に放置するという事件が勃発。それによって、お上の本格的な介入を呼び、このチェーンは壊滅した。

もっとも最大規模のチェーンが壊滅したからと言ってこの「システム」までが消えうせたわけではなく、同様の店は歌舞伎町に数多く蔓延り、それがある種の伝統となっていまに至っているのだ。また、壊滅したチェーンのトップこそこのシノギから手を引いたが、幹部連中ら残党はほとぼりが冷めてから歌舞伎町に舞い戻っている。

現在の歌舞伎町は、伝統的とも言えるこれら荒っぽいぼったくりと、ここ20年ほどで出現した「プチボッタ」と言われる、小口でお上が介入しづらい手口が混在している。冒頭に取り上げた居酒屋などはプチボッタの範疇に入るかもしれない。

では肝心の対策と言うと、これはシンプルで荒っぽいほうはキャッチ(客引き)についていかないということに尽きる。また、ブチボッタのほうも都条例で少なくなったとはいえ、いまだ居酒屋のキャッチは多いのでやはりついていかない、また入店して雰囲気がおかしいと思ったら即座に退店するしかない(店員の態度、メニューの雑さなど)。

正月休みを迎え、歌舞伎町に足を運ぶ人も多いだろう。しかし、この街が「自己責任の街」ということを忘れてはいけない。(取材・文◎鈴木光司)

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