国重文4棟 修復実現へ正念場 長崎・聖福寺 老朽化深刻 市民団体、募金活動強化へ

老朽化が深刻な聖福寺の国重要文化財の一つ、山門=長崎市玉園町

 中国の影響が濃い禅宗の一派黄檗宗(おうばくしゅう)の寺院(唐寺)、聖福寺(しょうふくじ)(田谷昌弘住職)=長崎市玉園町=。同寺の老朽化した国重要文化財4棟の修復に向け、募金を集めている市民団体「長崎聖福寺修復協力会」(出口喜男会長)は、2020年度の修復事業着手を目指して今後、活動を強化する。
 4棟の一括修復には10年間で概算計約20億円がかかり、所有者側が負担する資金の不足分約5500万円の捻出が同会の目標。大口の協力を得るため、県内外への呼び掛けやPRを進める考えで、修復実現に向けて正念場の年を迎えた。
 同寺は江戸前期の創建。長崎に滞在した中国人や華僑の信仰を集めたが、檀家(だんか)が少なくなり修復資金が不足。これを受け、市民有志が10年に同会を発足させた。
 当初は、本殿「大雄宝殿」の修復を目指し活動。修復費の5割超が国庫補助される国重文指定を目指し、12年に県や市が専門家の調査を実施。その結果、18世紀前半までに建った大雄宝殿、天王殿、鐘楼、山門が14年、国重文に指定された。
 これを受け、同会は4棟一括修復に方針を転換。18年までに専門業者が費用を約20億円と概算し、これまで集まった約3千万円と国、県、市から見込める補助金、寺の自己資金を除いた不足分を新たな目標額に掲げ、活動している。
 同会などによると4棟の老朽化は深刻で、19年に山門の一部が壊れるなど一刻も早い修復が必要とみられる。同会は市などと新年度の事業着手へ準備を進めているが、今後は市内にとどまらず県内外へ価値を広く発信し、大口の寄付につなげたい考え。文化財修復に寄付した法人、個人が税制上の優遇措置を受けられる国の指定寄付金制度の活用も検討している。
 今年は日本最古の唐寺、興福寺(同市)の創建400年。同会世話人代表の1人で同市の宮川雅一さん(85)は「山門など厳しい状態で、一日も早く修復に着手したい。今年は節目の年で、長崎の唐寺を内外に知ってもらうイベントなどを考えている。長崎の宝を壊したくない」と話す。

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