ミカンの皮で新ビジネス 「農薬不使用」に着目、化粧品に

今シーズンに収穫されたミカン。2~3カ月ほど寝かし、甘みが強まってからジュースにする=松田山

 松田山(松田町)などでミカンを栽培し「おひるねみかんジュース」を販売している合同会社F&Eあしがら金太郎電力(同町寄(やどりき))が、ジュースの製造過程で出るミカンの皮を商社に販売するビジネスを始める。「農薬不使用」の特徴が着目され、化粧品の材料に活用される予定だ。同社代表社員の小山田大和さん(40)は「農薬不使用が新たな付加価値になる。足柄全体に広がれば」と期待している。

 同社は遊休農地を借りてミカンを栽培。収穫の大半をミカンジュースにして販売している。農薬不使用が消費者の安心感につながり、人気を得ている。

 ジュースに加工する工程で出る皮はこれまで製造工場で廃棄しており、その処分費用が製造コストに上乗せされていた。

 2018年6月ごろ、ミカン山を視察に訪れた製薬会社の関係者が、漢方の生薬として農薬不使用のミカンに興味を持ち、取り寄せて分析。農薬が検出されなかったことから、19年に皮の事業化を検討した。

 だが処理工場がみつからず凍結していたところ、11月に同社とつながりのある商社を紹介し、あしがら金太郎電力と合意に達した。今シーズンの収穫分から販売することになり、化粧品の材料として使われるという。

 乾燥した皮は1キロ当たり約2千円で買い取られる。今シーズンの収穫量は例年の半分以下の4トンほどだが、皮の量は約80キロという。

 「費用をかけて捨てていた皮を、農薬不使用という付加価値でお金に換えることができた。観光とは違うものからもビジネスチャンスは生まれる」と小山田さん。ジュース増産などに自社の栽培分だけでは農薬不使用ミカンが足りないといい、「ほかの農家から買い取ってもいい。付加価値を高めるため農薬不使用の栽培に切り替える流れが地元で起これば」と期待を寄せている。

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