ステップアップの年に

 実際には違うときもあるが、年明け松の内の日曜日といえば、NHKの大河ドラマが始まるイメージがある。今年の「麒麟(きりん)がくる」も5日から放送予定だったが、予期せぬ事態で19日に延期となった▲主要キャストだった女優が昨年11月、薬物事件で逮捕されたため。その時点でドラマは10話分を撮影済みで、撮り直しを余儀なくされたのだという▲そこで代役を引き受けたのが、五島市出身の川口春奈さんだ。2007年に芸能界デビューし、テレビドラマ、映画、CMなど多くの作品に出演してきたが、時代劇は初挑戦となる▲今年の大河は、明智光秀を主人公にした戦国群像劇。川口さんが演じるのは、光秀を重用した斎藤道三の娘で、後に織田信長の正室となる帰蝶(濃姫)。第1話から登場する重要な役どころだ▲言葉遣いや所作など難しい部分は多いとしつつ、「知れば知るほど奥が深い」と役柄に魅了されている様子で、全身全霊で演じているという▲川口さんは3年前、本紙のインタビューに「目標は作品を通して人の心を動かし、変化を与えられるような女優になること」と語っていた。先の見えない今の時代に、乱世の人々の生き様を描く今回の作品は女優として大きなステップアップの機会となるだろう。川口さんが演じる戦国の姫の姿に注目したい。(久)

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