仙台育英が選抜に向け始動! 147キロ1年左腕が決意「日本一、エースを奪い取る」

年始の行事で須江航監督(中央)の話を聞く仙台育英ナイン【写真:高橋昌江】

田中祥都主将も決意「日本一になるために必要なことを毎日考え続ける1年間にしたい」

 昨秋の東北大会で優勝し、今春のセンバツに出場が有力な仙台育英が5日、2020年のスタートを切った。宮城・塩釜市の塩釜神社で祈祷を受け、多賀城市のグラウンドまでランニング。室内練習場で必勝安全祈願と餅つきをした後、決意表明をして始動した。

 1週間の休みを経て、この日、塩釜神社に集合した仙台育英ナイン。田中祥都主将(2年)は「みんないい顔をしていたので、いい休みだったんだと思います」と笑顔を見せた。塩釜神社では参拝客から「頑張ってね」などと激励、そして握手を求められ注目度や期待感を肌で感じた様子。祈祷を終えると制服からジャージに着替え、多賀城市のグラウンドまでランニングした。父母らが待つ中、各々がゴールテープを切ると、室内練習場に集合。必勝安全祈願では、だるまの目入れなどを行った。

 昨秋は3番・宮本拓実(2年)や4番・入江大樹(2年)ら夏の甲子園8強の経験者を中心に高い攻撃力を発揮。140キロ超えの6投手や変則投手を擁し、試合を経るごとに成長を見せた。県大会で8連覇を達成すると、東北大会は3年ぶりに優勝。明治神宮大会では初戦で天理(奈良)に6-8で敗れたが、冬場の練習の糧としてきた。田中主将は「自分の長所と短所を見つけ、また見極め、何が必要かを見える形で練習に取り組めています」と手応えを感じている。

 必勝安全祈願の後には餅つきをし、雑煮などで腹ごしらえ。その後、書き初めを披露した。多かったのは「挑」や「挑戦」、「覚悟」。そして、「日本一」への思いを表したものも。4番・入江は今年からメジャーに挑む筒香嘉智外野手(レイズ)や昨季の首位打者でパ・リーグMVPの森友哉捕手(西武)が中学時代にプレーした堺ビッグボーイズの出身。「自分が仙台育英に入学を決めた理由でもある、東北で初の甲子園優勝をみんなで叶えたいです」と、関西から追ってきた夢に願いを込めて「叶」と筆を走らせてきた。

最速147キロ左腕・笹倉は「エースを向坂さんから奪い取る」

 最速147キロ左腕の笹倉世凪(1年)は「奪」としたため、「日本一を奪い取るという意味と、エースを目指しているのでエースを向坂(優太郎、2年)さんから奪い取るという目標でやりたいです」と意気込んだ。シンプルに「日本一」の3文字に気持ちを込めた田中主将は「日本一になるために必要なことを毎日考え続ける1年間にしたいです」と決意をにじませた。

 目標の「日本一」に向け、大きな刺激がある。仙台育英は先月22日に開催された全国高校駅伝で26年ぶりに男女同時優勝を果たし、サッカー部はこの日の準々決勝で敗れたものの、全国高校サッカー選手権で30大会ぶりに8強入りした。部員と父母らを前に挨拶した須江航監督は陸上競技部とサッカー部をたたえ、「硬式野球部もアベック優勝の陸上競技部に続く成果を残したい」と力を込めた。また、部員たちには「野球を通じてたくさんのことを学んでほしい」とも話した。

「日本一という大きな目標がありますが、まずは1人1人が成長し、それにふさわしい人間になること。目の前に大会が近づくと視野が狭くなり、勝つことにしか意識がいかなくなりますが、それではダメ。勝ちにどれだけの価値をつけられるかが部活動だと思うので、皆さんで力を合わせながらそういうことを忘れずに戦っていければなと思います」

 14時40分頃に年始の行事が終わると、グラウンドや室内練習場に散らばった選手たち。トレーニングをしたり、黙々とティー打撃で打ち込んだり、グラウンドで須江監督のノックを受けたり……。雪がちらつく中、“春”を待つ仙台育英ナインが元気に動き出した。(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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