【鉄の女もぞっこん!世界が欲しがる魔法のマシン】

今や世界中の工場が欲しがる“工作機械”。 身近な商品から航空機まで、何でも加工する“魔法の箱”はどのように作られるのか?

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これなくして人類の進歩はなかった。今や世界中の工場が欲しがる“工作機械”。 身近な商品から航空機まで、何でも加工する“魔法の箱”はどのように作られるのか?

■工作機械の巨人“ヤマザキマザック”

世界でも指折りの工作機械の工場が愛知県大口町にある。「ヤマザキマザック大口工場」。最新の工作機械を見せてもらった。高級スポーツカーのような洗練されたデザイン。“箱の中”には、ドリルなどの工具を取り付ける部分や材料をセットする台がある。それぞれが自在に動くことで複雑な加工が実現する。それにしてもなんという滑らかな動き。左を削ると今度は右へ華麗にカーブ。まるで銀盤の上を滑るフィギュアスケーターのようだ。加工するのは小さな部品だけじゃない。3日間かけて飛行機の脚も加工。この精密な加工技術がなければ飛行機だって飛べないのである。

この加工装置をしっかりと支えるのが「コラム」と呼ばれる柱だ。屋台骨だけあってその重さは尋常じゃない。なんと1トンもある。ちょっとやそっとじゃビクともしない頑丈なコラムはどうやって作るのか?

■「コラム」製造は“線香花火”の乱れうち!

コラムを作っているのは三重県・四日市の工場である。潜入すると炎が見えた。溶解炉(ようかいろ)だ。材料をドロドロに溶かす設備で、中の温度はおよそ1500度にもなるという。強力な磁石で材料の鉄をくっつけ溶解炉の上へ。ベルが鳴ると中へ落とす。この作業を繰り返す。溶解炉を覗くと、鉄の形は跡形もなくなり、ドロドロのスープになっている。この状態を「溶湯(ようとう)」という。特殊な添加物を入れ不純物を取り除くと、そこに巨大なバケツがやってきた。「とりべ」と呼ばれる容器で、溶けた鉄を入れる。「とりべ」が所定の位置に着くと巨大なカバーのようなものをセット。カバーが必要なわけはすぐにわかった。溶湯を「とりべ」に注いだ途端、凄まじい火花が飛び散るのだ。カバーは火花を防ぐためだ。まるで“線香花火”の乱れうち。工場でしか見られない美の世界である。

でも、このドロドロのスープをどうやって「コラム」の形にするのか?溶湯を巨大な器に流し込んでいく。この中に砂で作ったコラムの「型」があるという。あちこちの隙間から炎が飛び出す。どうやら隅々まで溶湯が行き渡ったようだ。

4日後、型から取り出す。ぶるぶる震える機械にのせ余分な砂を振るい落とすと、あたり一面、砂ぼこりで真っ白。型から取り出したコラムは磨いて塗装。こうして頑丈なコラムが出来上がるのだ。

■クリーンルームで目撃!緊張の「主軸」づくり

このコラムにくっ付くのが工具を動かす要の装置「主軸(しゅじく)」である。製造工場は岐阜県・美濃加茂市にあった。主軸はほこりを嫌うため組み立て作業はクリーンルームの中、しかも人の手で行われていた。

丸いリングをそうっと軸に通す。隙間はわずかしかない。ぶつけたりしたら一大事。冷や冷やする組み立てを終えると、ぶれがないか回転をチェック。この慎重な組み立て作業が工具を正確に動かす秘訣でもある。

■ダンスを踊るような“滑らかさ”の秘密

複雑な加工を実現するあの“滑らかな動き”はどうやって生まれるのか?ぐるぐる溝が入った軸にパイプを通し何かを詰め込んでいる。“銀色の玉”だ。

パイプの中は玉がぎっしり。これは「ボールねじユニット」といい、玉が溝をコロコロ転がることで滑らかな動きを実現する。軸にも秘密があった。熱処理して強度を高めた後、別のマシンが軸をつかんで溝をピカピカに削っていく。溝は玉が転がる部分。溝をすべすべにする必要があるのだ。「つるつるの銀玉」と「すべすべの溝」。これが滑らかなスライドを生む秘密だったのだ。

■鉄の女もぞっこん!世界が欲しがる“魔法の箱”

かつて工作機械はベルトの動力で動くシンプルな構造で、機械のそばに人が付いている必要があった。ところが1981年、ヤマザキマザックが革命を起こす。材料の供給から加工まで自動で行うシステムを開発、工場の無人化に成功したのだ。この噂を聞きつけたのが“鉄の女”と呼ばれたイギリスのサッチャー元首相。1984年の日英首脳会談で「イギリスに工場をつくって欲しい。」こんなラブコールを送ったという。

今や工作機械の動きはコンピューターで一括管理され、工具すら自動配達されていく。そんな最新鋭の工作機械が並ぶ大口工場は「スマートファクトリー」と呼ばれ、まるでSFの世界に迷い込んだような錯覚すら覚える。

無人化と効率化を極めるのに欠かせない日本の工作機械。サッチャーさんが生きていたら今度は何と言うだろうか。            

                        【工場fan編集局】