セにDH必要? 巨人が鷹に勝つためには? クロマティ氏×篠塚氏が特別対談(2)

巨人OBのウォーレン・クロマティ氏(左)と篠塚和典氏の特別対談が実現【写真:荒川祐史】

巨人のレジェンドOBが“本音”トーク「一番大事なことはベンチの強化」

 巨人OBのウォーレン・クロマティ氏と篠塚和典氏の特別対談が実現した。“巨人史上最強助っ人”と呼ばれたクロマティ氏と球史に名を残す巧打者の篠塚氏は7年間、チームメートとしてプレー。今も熱い友情で結ばれている。「Full-Count YouTube」では、対談の様子を公開中。その全容を全3回に渡ってFull-Countで掲載する。

 第2回は「セ・リーグとパ・リーグの違いについて」。昨年6月からゲストとして巨人“復帰”を果たして若手を打撃指導したクロマティ氏と、解説者として巨人の試合を見てきた篠塚氏は、ソフトバンクに勝つために何が必要だと見ているのか。パ・リーグとセ・リーグの力の違いは実際にあると感じているのか。“レジェンド”の考えに迫った。

――今年の巨人について、どう見ていますか。

クロマティ(以下、ク)「投手次第ですね。スガノが1年間投げることができるのか。それがすごく大事になります。今年はオリンピックが重なるので、長いシーズンになるでしょう。打撃も向上させたい。去年の(日本シリーズでの)三振数は4試合で35。多すぎました。コンタクト率を高めて、得点のチャンスを増やしたい。スピードも向上させたいですね。でも、守備は良かった。ただ、一番大事なことはベンチの強化です」

篠塚(以下、篠)「本当に強いチームというのは、控えの選手の厚さがあります。ピッチングスタッフもあります。彼(クロマティ氏)も最初はホームランバッターに見えました、打率を稼いでいくコンタクトもできました。どんなボールでもしっかり打っていく、食らいついていく、そういうバッティングはこれからやっていかなければいけません。4試合で35三振というのはもったいない。プロとしては恥ずかしいというのもあります。バッターもクロが(球団に)入っていって、選手に『1』からバッティングを教えていけば、気持ちも変わってくるでしょうし、そういう選手も彼は育てたいというのがあると思いますし、クロが入ってくれればプラスになると思うので。ね、クロ」

ク「ソウデスカ。ソウデス(笑)」

――昨年の日本シリーズでは4連敗でしたが、今年、ソフトバンクに勝つためにどうしたいいのか?

ク「ソフトバンクと対抗するにはスカウティングから始めるべきでしょう。スカウティングが最優先。ソフトバンクはいい選手を見つけてきます。広島もいい選手を見つけています。中日もそうです。ドラフトと並行して、スカウティングがとても大事になります。ジャイアンツが対抗するには、本当にスカウティングの強化が大事です。いい選手を見つけ出す。巨人に合う選手を見つけ出す。外国人選手は、才能は2番目。まず正しいメンタルの持ち主であることが大事です。日本人のスタイルを学ぶこと。日本スタイルの野球を学ぶこと。才能は二の次です。振る舞いやチームプレーヤーであることがNO1です。ソフトバンクはいいチョイスをしています。才能よりもいいチームメートになれる選手を獲得している。ジャイアンツはスカウト網の強化からスタートしていくべきです」

篠「選手個々の力は外国人選手の場合は必要ですが、日本でやる場合は来てからじゃないと分かりません。クロが言ったように、いかにチームメートと親しくやれるか、うまくやれるかは、本人次第だと思います。本人が本当にクロみたいに日本の野球に慣れるようにするためにはある程度、いい日本語を早く覚える(ことが必要)。クロは悪い日本語ばかり覚えていましたけど(笑)」

ク「トキドキ(時々)」

篠「日本の選手も、最初は通訳を入れても色々聞いてくれれば答えますし、話しながらやっていく中で日本語を覚えていくでしょう。最初は野球の言葉だけでもいいわけですから。そういう選手は長くチームに残っていると思います。逆に、そういう気がない選手は早く去っていってしまう。ジャイアンツは意外とそういう意味ではいい球団なんですよ。ソフトバンクもそうだと思います。選手の性格もあると思いますけど、意外とイケイケのチームというか、そういう中では外国人選手は過ごしやすい。ジャイアンツもそういうチームなので、あとは来る外国人選手の意気込みだけ。クロの言ってることは合っていると思います」

「DHのほうがいいよね」「本当? どうしてよ?」

――最近は交流戦でも日本シリーズでもパ・リーグが強さを見せています。セ・リーグとパ・リーグの違いは?

ク「個人的には、パ・リーグは常にセ・リーグよりも優位性があると思っています。私がプレーしていた時からね。アキヤマ、イシゲ、イトウ、クドウ、ワタナベ、デストラーデ、キヨハラさん、ブーマー、ムラタさん……。すごいよ。みんなパ・リーグ。個人的にはパ・リーグは常に強いと思っています。(違いは)フロントオフィスでしょうか。ドラフト、プレースタイル……一概には言えませんが、色々あると思います。常にパ・リーグは強い印象。セ・リーグにはDHがないという部分もありますが、パ・リーグ優位という印象は常にあります」

篠「攻撃的に行くというのがパ・リーグですよね。昔からよく聞くのは、あまり変化球でバッターを打ち取るという考えがなかったのがパ・リーグで、あえて真っ直ぐで抑えようというピッチャーが多かったというのもあると思うんです。意外とセ・リーグの方がきめ細かい。パ・リーグのほうはイケイケのバッターというか。やっぱりDHがあるということで、振っていく(選手が多い)」

ク「パ・リーグにはDHがあるので、打撃の面では強化される。打点も本塁打も増えます」

――巨人の原監督はセ・リーグもDHを導入すべきと言っています。

ク「セ・リーグはバントの数が多い。投手が打席に立つからそうなる。よりスモールベースボールになります。私はDHが好きではありません。メジャーでも好きではありません。細かい戦術が好きです。DHが無い方が、メンタルの部分、監督の采配、戦術がより際立ちます。シノ、DHは好き?」

篠「うん」

ク「ホントに?」

篠「DHのほうがいいよね」

ク「本当? どうしてよ?」

篠「やっぱりチームのことを考えると、一人でも野手が……」

ク「ノー戦略。戦略ないね」

篠「DHがあったほうが、一人でも多く野手が出られるわけなので。ピッチャーは本当に投げるだけでいい。今、外国人選手が入ってきて、日本人がポジションを取られたりしてしまっているというのも野手の中にはあるのでね。そういう意味では逆に、DHのためだけで外国人選手を獲ってくるとか、そういうこともできますし、これからの野球はDHがあったほうが面白いですよね」

ク「DHの問題はメジャーでもあります。(DH制のない)ナ・リーグの監督は誰もがDHを求めていない。メジャーでは投手も打席に立ってもらいたい。メジャーで(ナ・リーグでも)DHを採用しようとしている理由は3つあります。1つ目はより打点を増やしたい。2つ目はベテラン選手にとってチャンスがある。DHで現役生活を1、2年伸ばすことができます。3つ目は戦略です。投手は打席に立たない。投手は投手。(DHがないと)代えるときには他の選手も同時に代えないといけない。ハラさんの意見は理解できます。日本の野球にはDHは必要かもしれません。セ・リーグはスモールベースボール。バントが多すぎます」(Full-Count編集部)

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