標高差2000M超え、10時間の移動も…高木勇が加入するメキシカンLを現地通訳が解説

レオネス・デ・ユカタンの本拠地スタジアムであるパルケ・ククルカン【写真:福岡吉央】

16チームのうち標高1500M超の高地を本拠地にするチームが7チーム

 メキシカンリーグのレオネス・デ・ユカタンが4日(日本時間5日)、元巨人、西武の高木勇人投手の獲得を発表した。メキシカンリーグとはどんなところで、昨季、同リーグ南地区の王者に輝いたユカタンはどんなチームなのか。元スポーツ紙記者で、昨年メキシコの夏冬リーグでともに日本人選手の通訳を務めた福岡吉央が解説する。

 メキシカンリーグで投手にとって厄介なのが、標高だ。メキシカンリーグは打高投低と言われるが、その要因の1つは標高にある。16チーム中、標高1500メートル以上の街を本拠地にしているチームが7チームあり、気圧が低い分、低地なら外野の定位置への当たりが、高地だと軽々と本塁打になる。守備のレベルも日本より低いため、打たせて取るタイプの投手にとっては、味方の守備に足を引っ張られることも少なくない。

 かつてDeNAでプレーし、メキシカンリーグでの経験も豊富なギジェルモ・モスコーソ投手は「メキシコはどれだけコントロールが良くても打たれる時は打たれる。日本のようにボールの出し入れで勝負できない難しさがあり、コントロールのいい投手が防御率もいいとは限らない」と明かす。実際、メキシコでは屈指のコントロールを誇るモスコーソも昨季、なかなか結果が残せず、2度のトレードを経験。メキシコは内角はあまりストライクを取ってもらえず、逆に外角は広いため、ストライクゾーンだけでは勝負できない事情もあるのだ。

 さらに大変なのが移動だ。メキシコは日本の約5倍の国土を誇るが、大都市以外への遠征は直行便がなく、バスと飛行機を乗り継ぐのが一般的。試合は毎週火曜から日曜に6連戦で行われるが、月曜は休みではなく移動日として使われる。日程上、ホームとビジターの試合が週ごとに入れ替わるため、ビジターの週は3連戦を終えた木曜のナイターの後、夜行バスで次のカードの対戦地まで移動する。10時間以上の移動になることもある。そうしなければ、ユニホームの洗濯が間に合わないためだ。

ユカタンは野手の選手層も厚く、元日本ハムのドレイクも加入

 日本のプロ野球のように先発投手の先乗りや、残留練習はなく、先発投手も基本的に常にチームに帯同する。ユカタンの本拠地メリダは標高約10メートルで常夏の地だが、毎週のように滞在地の標高が0メートルから2300メートルの間で上下するため、気候への順応力も求められる。

 そんな過酷な環境だが、ユカタンは野手も選手層が厚いため、高木にとっては先発の座さえ確保できれば、味方の強力な援護が受けられる可能性が高い。チームには昨年11月に行われたプレミア12にメキシコ代表で出場し、ベストナインに選ばれたジョナタン・ジョーンズ外野手とホルヘ・フローレス内野手の代表2選手が所属している。

 さらに、広角に打ち分けることができ、昨季、奪三振王を獲得した久保が「レオネスの中で1番三振を取るのが難しい打者」と警戒する巨漢のルイス・フアレス外野手、今冬のウインターリーグでDeNA関根大気外野手のチームメイトとしてヤキス・デ・オブレゴンでプレーし、当初不振だった関根にアドバイスを送り続け、復調させたホセ・アギラル外野手、リリーフのアンドレス・アビラ投手の3人も、昨年3月に来日したメキシコ代表メンバーに選ばれている。

 ユカタンはさらに、キューバ出身で2017年に日本ハムでプレーしたヤディル・ドレイクも獲得。2018年にコロンビアで行われた「WBSC U-23ワールドカップ」で稲葉篤紀監督率いる日本を決勝で下したメキシコ代表の主力だった若手有望株のマルコ・ハイメ遊撃手も加えるなど、次々と補強を続けている。

 ここ数年、制球力が高いとされる日本人投手の獲得を望む球団が増えてきているメキシコ。同リーグでは昨年に続き、久保もプレーを続ける予定だ。日本人の需要が徐々に高まってきている中で、高木がどれだけ結果を残すことができるのか、現地でも注目を集めそうだ。(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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