矢野経済研究所、XR360°動画市場は5Gの普及と共に拡大し2025年に1兆1,952億円と予想

2016年以降、世界ではヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を使用したVR市場は急速に盛り上がり、第二次「VR元年」と言われた。スマートフォンを活用した「スマホVR」は手軽さとコンテンツ流通の仕組みが確立されているが、Googleの対応プラットフォームの開発計画が凍結され、先行きは不透明な状況となった。

一方、一度ブームが下火となったARは、同時期にスマホゲーム「Pokémon GO」の世界的成功により再び脚光を集めた。更にSNSの普及に伴い写真投稿サイト「Instagram」が人気となり、360°パノラマで撮影した作品を投稿する動きが広まっている。

株式会社矢野経済研究所は、国内外のXR(VR/AR/MR)及び360°動画市場を調査した。同調査結果によると、上記のような市場の期待とは裏腹にXR(VR/AR/MR)360°動画市場の拡大は緩やかであり、2019年の国内XR・360°動画市場規模(事業者売上高ベース)は3,951億円を見込むことが明らかとなった。これは、ハードウェア、ソフトウェアの問題に加えて、ビジネスモデルの構築が進んでいない事が大きな要因に挙げられる。

なお、カテゴリー別では、ゲーム:475億円、コンテンツ:84億円、報道・広告・宣伝:75億円、位置情報・旅行:110億円、エンタープライズ:204億円、医療・ヘルスケア:85億円、教育・研修・トレーニング:44億円、SNS:8億円、制作・流通:173億円、劇場・テーマパーク:44億円、VR機器:2,569億円の見込みである。

矢野経済研究所が注目トピックとして挙げているのが、スタンドアローン(自己完結)型HMDの本格普及である。単独で動作するスタンドアローン型HMDとして、2018年にOculusの「OculusGo」が約200ドルの低価格でリリースされた。

同製品は、一体型製品なのでスマホVRと比較して動作環境が安定しており、一部スマホVR向けコンテンツが利用でき、また開発環境も充実している。Xiaomiが共同開発しており、Xiaomiの製品と併せて世界的ヒットとなった。2019年には6DoF(3次元トラッキング)に対応した上位モデルが提供され、HMDの出荷台数は前年と比較して大きく増加する見通しだ。

いよいよ、本年より5G導入が本格化し、2022年以降にはエリアカバレッジ、5Gの環境整備が進む可能性が高い。このような中、5Gの高速・大容量通信という特徴により、XR(VR/AR/MR)360°動画市場も大きく発展する見通しだと矢野経済研究所は発表した。

5Gの導入によりコンテンツ・サービスのクラウド化が進み、メンテナンスやコンテンツ管理の効率化がより進む。また、コンテンツ品質が大きく向上することが期待され、XRは移動体通信事業者にも重要なサービスとなる可能性が高い。更に個人による360°動画のリアルタイム配信も可能になるなど、5Gの導入はXR(VR/AR/MR)360°動画市場にとって大きな環境変化となる見込みだ。

これにより、2025年の国内XR(VR/AR/MR)360°動画市場(事業者売上高ベース)は1兆1,952億円になると予測した。

以下、同調査の要綱である。
調査期間: 2019年7月~9月
調査対象: VR/AR/MR製品開発企業、ならびに関連サービス事業者
調査方法: 同社専門研究員による国内・海外(中国、台湾)直接面接調査、ならびに文献調査、同社DBデータからの考察

出典:矢野経済研究所ホームページ

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