寒の入りのIR

 底冷えするね、こたえるね、というほどには寒さを肌身に感じないせいか、きのうは二十四節気の小寒、つまり寒の入りと分かっていても、どうも実感が伴わなかった。これから節分までの「寒の内」は、一年で最も寒さが身に染みるとされる▲12月下旬の冬至を過ぎ、日はいくらか長くなったが、寒さは厳しさを増す。どこかしら、賛否の分かれる昨今の議論を思わせる。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備は「寒の入り」の時季かもしれない▲経済が活性化する、雇用を生む-と、日が差し、日脚が伸びるようにいわれるが、向けられる目線はずいぶん冷たい。日本世論調査会の全国世論調査では、IR整備に反対の人は64%で、賛成の32%を大きく上回った▲ギャンブル依存症の人が増える、生活環境が悪くなる-と反対派は理由を挙げた。本県も誘致を表明しているが、世論調査では、自分の地元での整備には7割強が反対した▲依存症にこれという手だてを政府が打ち出せず、IRを整備すれば先が案じられるという人が、数多くいるのだろう。自治体の説明が足りないという声もある▲調査の後、IRを巡る収賄の疑いで衆院議員が逮捕された。政府に世論の“寒風”は冷たかろうが、風を切って進むのかどうか。拙速はいけないと世論は言っている。(徹)

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