社説:ゴーン被告逃亡 不法な出国許されない

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 断じて容認できない行為だ。会社法違反などの罪で起訴され、保釈中だった前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告が無断で日本を出国し、レバノンへ逃亡した。

 保釈の条件は海外渡航を禁じており、東京地裁は保釈を取り消した。保証金15億円は没収される。

 無罪を主張してきたゴーン被告は出国後の声明で、「有罪が前提で、基本的人権が否定されている」と日本の司法制度を批判し、「不正と政治的迫害から逃れた」と主張した。

 だが、長く日本で企業経営に携わってきた被告である。他ならぬ日本の法を犯したとして刑事訴追されたのであり、法に基づいて裁判で自らの主張を訴えるべきだ。有罪になりそうだからと、法をないがしろにするのは許されない。

 逃亡したままでは今春にも始まる予定だった公判の見通しが立たず、真相究明にも支障をきたす。

 レバノンとの間に犯罪人引き渡しの条約はない。「入国は合法的」としてレバノン政府は送還に否定的だが、「逃げ得」にしないよう日本政府はあらゆるルートで粘り強く説得せねばなるまい。

 保釈中の被告に国外逃亡を許したのは、日本の司法制度と出入国管理を揺るがす重大事態である。

 ゴーン被告に近い関係者の証言などによると、被告は保釈中の住宅を脱出後、関西空港からプライベートジェット機で出国した疑いが強い。その機内に持ち込まれた大型ケースなどのエックス線検査が行われておらず、身を隠して搭乗した可能性があるという。

 空港でプライベートジェット機の保安検査を受けるかどうかは機長の判断次第で、手薄な検査態勢の隙を狙われた恐れがある。荷物の出入りが事実上野放しなのは看過できず、管理強化は当然だ。

 周到な計画実行に米警備会社などの手助けが疑われ、経由地のトルコは不法な出入国として操縦士ら7人を拘束した。関係先の協力を得て経緯の解明が不可欠だ。

 保釈を認めた東京地裁の判断も論点となろう。検察側は逃走や証拠隠滅の恐れがあると反対してきた。

 だが、4度の逮捕を重ねて勾留期間は計130日に及んだ。長期の身柄拘束で自供を引き出そうとするやり方は「人質司法」として国内外から批判を浴びている。

 保釈は、携帯電話の使用や妻との接触の制限など、厳しく自由を制約する条件を弁護団が示して認められた経緯がある。なぜ守られなかったのか多面的な検証と、逃亡防止策の強化が求められる。