意識調査データからまじめに読み解く「政治家の不倫」問題  第7回選挙ドットコムちゃんねる#2

2019年、選挙ドットコムちゃんねるの最後のテーマは「政治家の不倫について」。
乙武氏はもちろんのこと、前々回の番組内で「不倫なんかどうでもいよね~(笑)」と発言し、コメント欄を炎上させた松田氏も、やや青ざめた顔色でスタートした今回……。

この企画がアシスタント千葉ちゃんの持ち込みで、しかも全国意識調査まで実施した事実を知り、改めて大まじめに選挙と不倫について分析を開始。

有権者のリアルな心情や不倫についての厳しい態度、ダイレクトに投票行動に響く事実を目の当たりにして、男性陣の「不倫」へのイメージは、一変したようです。

さっそく番組の内容をダイジェストでお伝えします。

MC乙武を一刀両断! アシスタント千葉ちゃんの恐怖の持ち込み企画!

乙武 「え~、今回は真ん中だけモザイクをかけてお送りしたいと思います……」

千葉 「この番組で、議員さんの失言についての話題になったとき『不倫なんかどうでもいいよね~』と盛り上がって、コメント欄がかなり沸いたと。評価にも盛大にマイナスをいただきまして
私的にも、正直疑問に思ったんですね」

松田 「うわぁ、怒られちゃうなコレ……」

千葉 「一般の方は実際に政治家の不倫についてどう考えているのかなと、公平に聞いてみたいと思いまして。日本では政治家が不倫によって批判されたり、離党や議員辞職に至るケースもありますが……

ということで有権者の皆さんにネット・電話調査を行いましたので、その結果を見ながら考えていきたいと思います」

*調査は12月14日・15日に実施。国内18歳以上の方を調査対象とし、有効回答数は電話調査(JX通信社との共同調査)で1,013件、インターネット調査(Gunosyリサーチを使用)で1,000件を集計しました。電話番号は無作為に電話番号を発声させるRDD方式をオートコールで実施。ネット調査では、スマホアプリのダウンロードユーザーを対象としたアンケートツールにより実施。

松田 「調査したの? 選挙ドットコムで? おもしろいな」

乙武 「これは僕に対する罰ゲーム的な……」

千葉 「では早速結果を見ていきましょう! まずはこちら。“政治家の不倫は公的な問題? 私的な問題?”という質問に対する回答です」

 

乙武 「赤が公的な問題で青が個人的な問題、グレーがどちらともいえない、だね」

松田 「これ電話とネットだとちょっと差がありますね。公的な問題、つまり問題ありとする人は電話の方が10%くらい多いね」

乙武 「電話の方が対象年齢が上だから、年齢が上になると公的な問題だと捉える傾向が強いという読み解きでいいのかな」

千葉 「年代別の回答を見てみましょう」

乙武 「おー、若い人ほど気にしないっていうか『そりゃもうプライベートの問題でしょ』と考えていて、年代が上がれば上がるほど『いやいや、それは大問題だ』と。70代以上は『私的な問題』と考える人は5人に1人もいない、という状況なんですね」

松田 「なるほど。おもしろいですね」

千葉 「70代以上だと、がくんと青の部分が小さくなりますね」

松田 「こういう調査結果だけど、むしろ昔は政治家の不倫ってほとんど問題視されなかったんですよ。だから70代以上の方からすると、政治家の不倫が発覚したところで『それがどうした?』って感じなのかなと思ってました。

有名な方で言うと、三木武吉という方がいましてね。ぜひ調べてみてほしいんですが」

*編集部注 【三木武吉】 婦人団体代表から「先生はかねて4人のお妾さんがいるとお聞きしますが、先生の清廉な政治活動と只今のお話とは矛盾があるのでは」と追及された際に「ただいまの質問は数字的な誤りがございます。正しくは4人ではなく5人おるのであります。ただ今日では彼女たちも老来廃馬とあいなり、もはや役には立ちませぬ。が、これを捨て去るがごとき不人情はこの三木にはできませぬ。捨て去るはかえって罪を重ねる所以と考え、今なお養っております」と回答し、聴衆の爆笑と拍手を呼んだ。他にも数々の珍・迷発言があり、三木は「ヤジ将軍」「策士」「政界の大狸」などの異名を取った。

松田 「三木氏は不倫の問題を対立候補側に指摘されて、堂々と開き直って拍手喝采、かえって人気が上がったという逸話の持ち主なんですが、こうしたエピソードも少なくないので、逆に年代が高い方が不倫については気にしないのかなと思っていたのですが、真逆の結果になりましたね」

千葉 「いつくらいから、政治家の不倫が社会的に問題視されるようになったんでしょうか」

松田 「日本の場合はやっぱり宇野宗佑さんの事例ですかね」

*編集部注 【宇野宗佑】 第75代内閣総理大臣。首相に就任した3日後に「サンデー毎日(毎日新聞)」が神楽坂の芸妓の告発を掲載し宇野の女性スキャンダルが表面化。ちなみに当時のサンデー毎日の編集長は鳥越俊太郎氏(東京都知事選挙に立候補し、その選挙運動中に女性スキャンダルが発覚して落選)。初めは国内の他のマスコミはこのスキャンダルを無視したが、外国メディアのワシントンポスト紙が「セックススキャンダルが日本の宇野首相を直撃」などと報じると、それを引用する形で日本でも話題に。その後、参院選で自民党は大敗。宇野内閣は退陣することに。

松田 「平成に入って竹下さんの次に総理大臣になった方なんですけど、まさに彼からと言われています。

世界的にみると1988年のアメリカ大統領選挙で当時、民主党の最有力候補と言われたゲーリー・ハート上院議員かな。

彼はJ・F・ケネディの再来とも言われ、能力的にも非常に評価されている人でしたが、不倫疑惑が報道され、その後の対応も失敗してしまって大炎上。結局、大統領選のレースから撤退し、政治生命も絶たれてしまったんです」

乙武 「どっかで聞いたことある話ですね……」

松田 「不倫というのは個人的な問題か公的な問題かということですが、不倫については個人的というか当事者間の事情や関係性によるというのも、ひとつあると思うんです。

配偶者間の問題だったりとか。不倫が表沙汰になった政治家がいたとして、その配偶者も不倫していた場合はどうなるのかとか、ね。

政治家の不倫問題でいうと、ひとつは不倫していた相手から告発されるケースがありますよね。『ひどい人だった』とかってことで。

もうひとつは全く関係ない政敵なんかが、その人を追い落とそうとしてですね、なぜか私的な情報を週刊誌に売られて、空港でカメラが待っているみたいなね、そういう発覚の仕方もありますね」

乙武 「あれあれ、またどっかで聞いたことがあるな…」(爆笑)

松田 「誰が売ったかはわかんないですけどね。そういう話も聞くので、本当に難しいなと思います。

もちろん、大前提としてはよくないことだってことはありますので、これを有権者が政治家の資質としてどう判断していくのかっていうところは非常に興味がありますね。でもこれわざわざ、ハイブリッド調査でやったんだ」

千葉 「そうですね」

松田 「選挙ドットコムは千葉ちゃんに甘すぎるだろ!でもまあ、素晴らしい企画ではある」

千葉 「面白いですよね、こういうデータで見てみると(ニッコリ)

実際、私は政治家の不倫については投票行動にもしっかり影響させたいな、と思っちゃうのでこれについても調べてみました。

“実際の投票の際に、不倫問題を重視しますか?”という質問をしています。赤が『とても重視する』、オレンジが『やや重視する』ですね」

 

乙武 「これもやっぱり電話調査のほうは、重視する人が過半数越えだね」

松田 「電話の方は賛否がはっきりわかれていますね。『どちらともいえない』という答えが、極端に少ないなあ。ネット調査のほうは40代以下の人が7割くらいですよね。
若い人からするとどっちとも言えないって感じかなあ」

乙武 「あーやっぱりそうか。うわ、70代以上の人は『重視する』が7割近いですね。
実際、選挙に行くのはこの60代70代の人がボリュームとして多いわけだから、やはり投票時にもかなり重視されているってことですよね」

松田 「千葉ちゃんが言う通り、政治家の資質のひとつとして投票の際の参考にするという点では、不倫は大ダメージですね」

千葉 「ちなみにこの調査、男女別でもそこまで変わらない結果になったそうです。
女性の方が投票時に重視するという答えがやや多い感じではあるようですが」

松田 「前々回の放送で『どうでもいい』って半分冗談で言わせていただいたのはですね、政治のワイドショー化というところで、政策の是非や公約違反なんかについてをもっと叩いてくれって思ったからなんです。

どうしてその公約を達成できなかったんだっていうところや、政策についてもっと深堀りしてほしいのに、不倫問題のようなプライベートばかりをクローズアップされるのは、政治の報道としてどうなのかな、と

もちろん、投票の際に参考にする情報として、政治家の資質として不倫問題を有権者の方が判断材料にされるのは、当然だとは思うんですけど。

マスメディアの報道としてみると、本来もっと取り上げるべきなのは、政治家の仕事そのものなんじゃないかと思うんですけど、報道側からすると『それじゃ数字(視聴率)が取れない』と。

もちろんタレントのベッキーさんのゲス不倫などが大きく取り上げられると社会現象にもなって、テレビの視聴率がいっぱい取れて週刊誌の売り上げも上がるとなると、国民自身もそれを求めているのかな、とも思いますが」

乙武 「実際、松田さんはたくさんの政治家を見てきているじゃないですか。
やっぱり『不倫するような人は政治家としての能力低いな』っていう関連性は見て取れる?」

松田 「僕のクライアントで今までそういったスキャンダルがあった方は、幸いにしていないんですが、うーんどちらとも言えないかな。

あまり仕事もしないで不倫に夢中っていう人もいますが、過去の政治家の中には夫婦間でもある程度の合意があって、愛人がいたけどバリバリ仕事してた人もいますし。
例えば、田中角栄さんとかね。田中さんは愛人の間にも子供がいるし」

編集部注 田中角栄*には2人の愛人がいた。神楽坂芸者だった辻和子さん、そして金庫番でもあった佐藤昭さん。田中氏はそれぞれの愛人とも子供をもうけていた。

松田 「なのでなんとも一概には言い難いですね。ただ、国会さぼって不倫旅行に行ってました~みたいな奴は、もう全員クビにしろよって思いますけどね」

千葉 「ただ政治家さんも、今ならそういう不倫スキャンダルが出てしまったら、自身の公約や実績なんかは全部吹っ飛んで、ワイドショーでとりあげられちゃうってもうわかってるじゃないですか

本当に社会をよくしたい、公約を実現したいと思っている政治家であれば、今までの実績や考えが全て無駄になる不倫というリスクを、あえて犯さないんじゃないかなと」

乙武 「耳が……イタイ」(爆笑)

松田 「いわゆる認知バイアスってやつですかね。自分だけは大丈夫って思っちゃうのかな。
でも千葉ちゃんのおっしゃる通り。危機管理の問題ですよね」

千葉 「ね。やっぱり私たちの国や地方の問題は、ちゃんと危機管理ができる方にやってもらいたいなって思うじゃないですか。ご自身の目の前の危機管理もできないのに、国や地方の危機管理ができるの? と」

乙武 「こういうときに使うんですね。『ぐうの音も出ない』って言葉は」

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松田 「実はね、前々回の放送後に千葉さんとミーティングをしたとき、千葉さんに『いや、私はあれどうでもよくないんですけど』ってはっきり言われて、僕がなるほど、と思ったのが『配偶者といえば、自分の大切な人。不倫をする人というのは、自分の家族や大切な人を大事にできない人、という評価です』っていう言葉。たしかにその通りだと」

千葉 「いろんな事情はあるんだろうなとは思いつつ、目の前にいる人を幸せにできない方が、日本を幸せにできるだろうか、という疑問ですよね」

乙武松田 「本当に、おっしゃる通り」

千葉 「なんかいつもより、スタジオ内がすごく静かなんですが。大丈夫ですか?」

松田 「いや非常におもしろい調査データでしたね。不倫と政治、投票に関してけっこう大規模な調査をやったのは画期的だと思うんで、これまた選挙ドットコムでもきっちり分析して、記事化するんですよね?

政治をしっかり考えていく新しいきっかけになるんじゃないかと思います」

乙武 「というわけで、本日は、というか今年はここまで!」

千葉ちゃんにビシッと喝を入れられた乙武氏の禊ともなった今年最後の番組。
2020年は気分も新たに、政治についての様々なテーマに独自の視線でズバズバ切り込んでいく所存です。
どうぞご期待ください!

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