五島市 転入上回る 合併後初めて「社会増」 離島新法で雇用創出、移住促進

過去20年の五島市の人口動態

 長崎県五島市は7日、2019年に市内へ転入した人数が転出者数を33人上回り、「社会増」を達成したと明らかにした。遅くとも旧1市5町合併(04年)以前の1997年以降で初めて。17年施行の国境離島新法に基づく雇用創出事業などにより、地元出身者の島外流出が抑制されたことや、都市部からの移住者が大きく増えていることなどが要因とみられる。
 7日に市役所であった仕事始め式で、野口市太郎市長が報告した。県全体の人口減少が進む近年、社会増を記録している自治体は大村市や北松佐々町といった本土地区の一部に限られており、離島自治体で社会増に転じるのは珍しい。
 出生数から死亡数を引いた「自然増減」は、422人の減で例年並み。人口全体でも389人のマイナスとなるが、毎年600人以上が減り続けていた18年以前と比べると、減少スピードは緩やかになった。
 市政策企画課によると、市の総人口(合併前の総計含む)は1955年の9万1973人をピークに減少の一途をたどる。「社会増減」は転入者数と転出者数の差で示し、合併による新市発足後は、800人以上の転出超過(社会減)の年もあった。近年も高卒者の9割近くが島外で進学や就職をするため18~22歳の転出が多く、毎年100~300人台の社会減が続いていた。
 一方、19年は転入1289人(前年比4人増)、転出1256人(同195人減)となり、転出数が大きく改善。大きな要因は国境離島新法で、17年4月から19年10月までに市内で計348人(うち島外から109人)の新たな雇用が生まれ、島外流出への歯止めや移住増加につながったとみられる。市も独自に奨学金返還助成や引っ越し代助成などの移住促進策に取り組み、過去4年間の市内への移住者は16年59人、17年105人、18年176人、19年228人と増えている。
 県が公表する市の推計人口は3万4949人(昨年12月現在)。人口ビジョンで60年に2万人の維持を目指す市は、社会増定着が課題。高い有効求人倍率が続く中で雇用のミスマッチ解消などに取り組む方針で、出産や育児支援など自然減対策にも本腰を入れる。

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