メジャー移籍の秋山が抜ける西武 穴を埋めるのは育成出身の大型外野手?

西武・鈴木将平【写真:荒川祐史】

不動の中堅手がレッズ移籍へ、後任候補に挙がる鈴木将平は「センスの塊」

 圧倒的な打力で昨季2年連続パ・リーグ制覇を成し遂げながらも、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでソフトバンクに敗れ、2年連続で日本シリーズ進出を逃した西武。オフに入ってから秋山翔吾外野手が海外FA権を行使してメジャー移籍を目指すことを表明、レッズと正式契約した。では、今季、不動の中堅手だった秋山の穴を誰が埋めるのか。

 秋山といえば、日本球界を代表するリードオフマン。今季は179安打で3年連続4度目の最多安打をマークし、不動の中堅手としてチームの連覇に貢献した。だが、退団により外野には空席ができることになる。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、後任候補として「期待している選手がいます」と2人の若手外野手の名前を挙げた。

 まずは、2016年ドラフト4位入団の鈴木将平外野手。静岡高では1年からレギュラーを掴み、その年の夏から3季連続で甲子園に出場。侍ジャパンU-18代表にも選ばれた。プロ入り2年目の一昨年はイースタンリーグで盗塁王を獲得。オフには秋山に弟子入りして自主トレをともにした。そして、プロ入り3年目を迎えた昨季は開幕1軍入りを果たしたものの、4月上旬に登録抹消。7月に再昇格するとプロ初のスタメン出場を果たした。翌日もスタメン出場すると、プロ初安打となる内野安打を放ち、持ち前の俊足を生かした好走塁や攻守でチームの勝利に貢献。スタメン6試合を含む16試合に出場し、レギュラー獲りへアピールしたシーズンとなった。

「彼はセンスの塊です。体が少し小さいから、シーズンを通して1軍で活躍するにはまだ体力的な問題はあるかもしれませんが……」。2017年にヤクルトの2軍バッテリーコーチを務め、イースタン・リーグで西武とも頻繁に対戦していた野口氏は、175センチ、75キロとプロ選手としては決して大きな体ではない鈴木のフィジカル面の強化を課題にあげつつ、「能力的にいったらポスト秋山の1番の候補になってくるのではないでしょうか」と期待を寄せる。

もう1人の「すごいものを持っている」選手は…

 そして、もう1人、「すごいものを持っている」と野口氏が語ったのは、今年がプロ入り6年目の戸川大輔外野手。2014年育成ドラフト1位で北海高から西武に入団、その年のオフに支配下登録選手となった右投げ左打ちの外野手だ。

「個人的には、戸川に出てきてほしいと思っています。身体能力がすごいんです。ヤクルトのバッテリーコーチ時代に戸川のバッティング練習を見たことがあるのですが、それはもう壮観でした。“パカーンパカーン”と簡単にスタンドに打ち込むんです。たまに低い打球があっても、それもあっという間にスタンドにいっていました。打球のスピードが違います。びっくりしました」

 188センチ、90キロの恵まれた体格で長打力も期待され、将来の4番候補とも目される戸川。昨季はプロ入り後初めて1軍に昇格。10試合の出場に留まったが、5月には敵地ロッテ戦でプロ入り初本塁打も放った。

 しかも、パワーだけではない、と野口氏は言う。「足もすごく速いんです。こんなに速い選手がいるんだ、と驚きました。この体格で、走らせたら速いんですから、たいしたものです。西武の2軍にはすごい選手がいるなと。当時は山川(穂高)も2軍にいた時で、どうやったらこのチームに勝てるんだろうと、(ヤクルトのコーチの立場では)苦労しました」。2軍でその能力を目の当たりにしていたからこそ、言葉には実感がこもる。

「西武やソフトバンク、セ・リーグでいえば広島などは、こんな若手がいたのか、という選手が出てくるチームなんです」

 野口氏が指摘する通り、西武はFA移籍やメジャー挑戦などで主力選手が流出したなかでも、そのチャンスをものにした若手の台頭でリーグ連覇を果たした。リーグ3連覇達成、そして2年連続で日本シリーズ出場を逃した雪辱に燃える今季の西武。14年ぶりに復帰する松坂大輔投手が話題を集めるなか、ポスト秋山に誰が名乗りをあげるかも注目だ。(梶原麻貴 / Maki Kajiwara)

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