堀江貴文氏がカルロス・ゴーン被告逃亡解説動画で爆弾発言 司法取引制度導入前のライブドア事件で「部下に売られた」は本当なのか?

画像は『自分のことだけ考える。: 無駄なものにふりまわされないメンタル術』より

ゴーン氏と会食の予定だったという堀江氏の動画。まずはこちらを見て頂いてから解説の解説をします

ここ数日間、テレビや新聞等のメディアは保釈中だったカルロス・ゴーン被告がレバノンへ出国したという出来事について大きく報道しています。例のない出来事なのでそれは当然のことですが、ゴーン被告がどのような手段で出国したのか、という面にばかり注目が集まってしまっているように思えます。

そんな中、ホリエモンこと堀江貴文氏は何故ゴーン被告はこのような行動に至ったかをYouTubeで解説しています。そして「中世の司法」「人質司法」とも言われる日本の検察について厳しく糾弾しています。

長期勾留のストレス

堀江氏が特に問題だと指摘している日本の検察の問題点は大きく分けると「長期にわたる身柄拘束」と「司法取引」の二点です。

何か事件を起こして逮捕された場合、被疑者勾留の勾留期間は10日間と定められています。被疑者の身柄は勾留の請求をした日から10日以内に事件を起訴しない場合は直ちに被疑者を釈放しなければなりません。

ただし「やむを得ない事由があるときは検察官の請求により裁判官が更に10日間以内の延長を認めることができる」というルールがあります。このルールによって一度身柄を拘束されるとだいたいの場合20日間勾留されることになります。

そしてこの勾留期間が明ける直前に他の容疑で再逮捕されると、さらに20日間の勾留が認められることになってしまいます。際限なく再逮捕を繰り返せば検察はいつまででも被疑者の身柄を拘束しておくことが出来るのです。

堀江氏も過去にこのような目に遭っています。勾留のストレスで精神安定剤を服用していたそうです。 このような長期拘束は普通の先進国にはないものです。

司法取引制度はアメリカなどで導入されています。日本でも2016年に刑事訴訟法が改正され、2018年から施工されています。この司法取引制度が適用されたのは今までに2回あります。1回目は日立グループの幹部が起こしたタイの原子力発電建設を巡る贈賄事件、2回目は今話題になっているカルロス・ゴーン被告の背任事件です。

この司法取引制度には非常に大きな問題があると感じています。

司法取引制度には2つのパターンがあります。自分の罪を認める見返りとして刑を減免する「自己負罪型」、自分以外の他人の捜査に協力する見返りとして刑を減免する「捜査公判協力型」です。日本で導入されているのは後者の捜査公判協力型のみです。

この司法取引制度が導入された理由は複雑化する組織犯罪や企業犯罪への対応のためだと言われています。

今社会問題化しているオレオレ詐欺や違法薬物の事件などでは、捕まるのはたいてい末端の人間です。詐欺グループの中心メンバーや薬物の売買を仕切っているような人間はほとんど捕まることがありません。末端の人間などいくら捕まえても犯罪組織そのものの撲滅には繋がらないのです。

そこで、刑の減免をエサにして仲間を売らせ組織の大元にいる人間を芋づる式に摘発しようという狙いもあって司法取引制度が導入されました。

司法取引が引き起こす冤罪の可能性

この制度の何が問題かと言うと、冤罪による誤認逮捕の可能性です。

検察など捜査機関が被疑者に利益を与えると約束して捜査協力を求める場合、被疑者が利益を得るために捜査機関の描くストーリーに添うような虚偽の供述をしたり証拠を造り出してしまうことが考えられます。

もちろんそのようなことがないように「虚偽供述罪」という罪が定められていますし、司法取引の際には検察官、被疑者、弁護人が連名で書類を作成することになっていますが、それで冤罪を全て防げるとは思えません。司法取引で得た証言は証拠として信用をおいていいものではないと思います。実際にアメリカでは司法取引で多数の冤罪事件が起きているようです。

日本では司法取引が導入される以前は刑の減免などの見返りを与えることを約束して得た供述を裁判所は証拠として認めないことになっていました。

堀江氏のライブドア事件の時は司法取引制度は導入されていませんでした。しかし堀江氏は「部下に売られた」というようなことを言っています。

かつての部下が一億円近くも会社から横領していたにもかかわらず、堀江氏を司法取引で売ることによって横領罪で起訴されなかった、と述べているのです。

今となってはこの件が真実なのかどうかはわかりませんが、もし本当だとしたら当時は司法取引制度かなかったわけですから堀江氏は採用されてはいけないはずの、しかも信憑性に疑問符がつく証拠を根拠に起訴され実刑判決を受けたことになります。

今回のゴーン氏の事件についても主に司法取引で得た証拠で立件した事件です。本人は無罪を主張していますし、本当に罪になるようなことはしていない可能性も十分ありえます。にもかかわらず長期に渡って拘束され、保釈こそ認められましたがそれも非常に厳しい条件のついたものでした。自分を無罪だと思っている人間がこんな仕打ちに耐えられるとは思えません。ゴーン被告は100日以上もの勾留を受けていたのです。

だからと言って国外へ出国してしまったゴーン被告の行動を庇うことはできませんが、その心情は理解できます。

今後、この国の司法はどうなって行くのでしょうか?

ゴーン被告や堀江氏がこれからどんな発信をしていくのかはわかりませんが、日本の遅れた司法の被害者とも言える彼らの言葉は慎重に耳を傾けていかなくてはなりません。

日本に暮らしている以上、誰もが日本の法の下にいます。事件の特性上あまり身近に感じることはできないかもしれませんが、二人に起きたことは決して他人事ではありません。もしも司法が変わらないのであれば、誰の身にも同じようなことは起きうるのです。(文◎鈴木孔明)

※タイトル画像は
『自分のことだけ考える。: 無駄なものにふりまわされないメンタル術』
より

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