材料ビッグデータを用いた触媒インフォマティクスで、30年の研究を1カ月で実証

マテリアルズインフォマティクス(MI)とは、機械学習といった人工知能を駆使して材料科学の研究開発を飛躍的に加速する試みを指す。MIの実現には、質・規模ともに十分な「材料ビッグデータ」が必要だが、これまで科学論文の形で積み上げてきたデータは、研究者の実験方法や興味を強く反映しているほか、性能の低い材料データが含まれないため、機械学習には不向きだという。

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今回、北陸先端科学技術大学院大学、北海道大学、熊本大学の共同研究グループは、MIを触媒開発に利用することを試みた。触媒によってメタンからエタンやエチレンを合成する酸化カップリング反応において、日に4000点もの触媒データを自動取得可能な、ハイスループット触媒評価装置を開発した。これにより、過去30年で蓄積されたデータ数を一桁上回る、12000点もの触媒ビッグデータを、わずか3日で取得することに成功した。さらに、得られた触媒ビッグデータを機械学習などで分析し、結果に基づいて固体触媒や反応プロセスを改善することで、メタンの酸化カップリング反応収率を大きく向上させることに成功した。このように、ハイスループット実験・材料ビッグデータ・データ科学をもとにした「触媒インフォマティクス」によって、30年の研究が実働1ヵ月に満たない短期間で実施できることが実証されたといえる。今後、同様な方法論で、様々な材料分野における研究開発が加速し、人類社会の持続的な発展に貢献する材料が生み出されることが期待される。論文情報:

【ACS Catalysis】High-Throughput Experimentation and Catalyst Informatics for Oxidative Coupling of Methane

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