愛すべきピュアな映画オタク、タランティーノの人生に迫る!

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自身もバーの店主役で出演

クェンティン・タランティーノ監督の最新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のブルーレイ&DVDが年明け早々、明日2020年1月10日(金)にリリース!タランティーノ作品といえば、映画へのリスペクトと愛がパンパンに詰まっているのが特徴。“ワンハリ”はそれに加え、思春期タラちゃんの思い出も見え隠れする。いかにしてタラちゃんはタラちゃんになったのか?タランティーノ人生劇場、開幕です!(文・塩田時敏/デジタル編集・スクリーン編集部)

01:

ワンス・アポン・ア・タイム・イン
ハリウッド

通称ワンハリこと「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、クェンティン・タランティーノ9本目の監督作品だ。これまでの集大成とも見えるし、いやかなり趣きの違う映画だ、とも言える。

タランティーノ映画は基本、どの作品もが、時にはパクリをも辞さないほどのオマージュ、映画愛に溢れかえった映画である。ワンハリは映画愛さえ突き抜けて、自己愛というか、タラちゃんの思春期への挽歌でさえあるのだ。

舞台はハリウッド、1969年。大事なのはここ。

映画の聖地でスタジオシステムは崩壊の危機に瀕し、アメリカンニューシネマと呼ばれる新たな映画が産まれ始め、なによりアメリカ社会そのものが激動していた。ベトナム戦争の泥沼化、公民権改革は煮詰まり、ヒッピーが謳歌した時代。余談ではあるが、社会が不安定な時ほど良い映画が出現する。これはどこの国の映画でも同じ。「イージー・ライダー」や「アリスのレストラン」等々が出現したのは、決して偶然ではない。

“ ワンハリ” フォトコール in ロンドン レオナルド・ディカプリオ&ブラッド・ピットと共にPhoto by Tim P. Whitby/Getty Images for Sony

そんな1969年真っ只中、ハリウッドのスターシステムの陰りで落ち目のスター=リック(レオナルド・ディカプリオ)と、彼のスタントマン=クリフ(ブラッド・ピット)。そして現実に起こったシャロン・テート虐殺事件《を匂わせる/ここも大事》。

まさに虚実皮膜の世界を羨ましくも大胆に、当時のハリウッドが再現される。

タラちゃんこの時、御年6歳!
生まれ(1963年)故郷テネシーのノックスビルからロサンジェルスに移り住んでおり、勝手知ったる自分の庭。幼少よりTVから映画、アニメ、音楽のポップカルチャーにドップリ浸って大きくなったのだ。因みに筆者はこの時歳。アメリカンニューシネマを貪り見て、初めてキャサリン・ロスが表紙の雑誌〝スクリーン〞を手にした頃である。

だからワンハリの世界観は痛いほど身に染み、「セメントの女」や「かわいい毒草」の看板が出て来ると泣いて涙もチョチョ切れるのだ。

タラちゃんはというと、歳で高校を中退し、ビデオレンタル店でバイトしながら、浴びるように映画を見まくっていたのは周知のところ。傍ら劇団で演技を学んだり、脚本を習作したり。そのひとつがハーヴェイ・カイテルの目に止まり、1992年「レザボア・ドッグス」で監督デビューした。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」ブルーレイ&DVDセット【初回生産限定】
2020年1月10日(金)発売
販売:ソニー・ピクチャーズ/4743 円+税(2枚組)、4K ULTRA HD&ブルーレイセット【初回生産限定】=6800円+税(2枚組)
特典:未公開シーン(7種)、監督から ハリウッドへのラブレターほか
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02:

ワンス・アポン・ア・タイム・イン
ゆうばり

監督デビュー作「レザボア・ドッグス」 本作で初来日。「ゆうばり国際ファンタス ティック映画祭」で南俊子賞を受賞した

それは翌年月。第4回ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭へと走るバスのなか。何処からともなく〝マッハgo go、マッハgo go、マッハgo go go〜♪〞と歌声が。誰!?と見回すと、それが手前のしゃべくりアメリカン、タランティーノその人だった。なんというオタクっぷり。「レザボア・ドッグス」引っ提げて、コンペティションへの参加というのに(笑)。ダルマの着ぐるみで雪の上を転げ回ったり、スノーターザンに挑戦したり、イベントにも心よくノッてくれて、何ともチャーミング。世界的巨匠となった今では考えられまい。いやノルかな(笑)。

ゆうばりでは、グランプリこそフレトデリック・T・フレドリクソン監督の「春にして君を想う」に奪われたが、南俊子賞(批評家賞)を受ける。このデビュー作には、その後のタランティーノ映画の全てが詰まっていたのだ。

時に与太話的饒舌な会話。時制をばらす話法。独自のユーモアに繋がるバイオレンス。年代年代テイストのナイスなアップデート。渋味あるキャスティング。溜飲の下がる音楽のサンプリング。ひたすらクールなヴィジュアル。ジョージ・ベーカーの♪リトル・グリーン・バッグに乗って、黒スーツの男たちが歩き出すショットのカッコよさといったら!

唯一その後と違うのは、これが二時間を切る映画だという事。他はもうタップリのランニングタイム二時間半超え。それもこれも、ストーリーを語るより、魅力的なキャラクターの詳細なエピソードに注力するからだ。それがタランティーノ映画の面白さではあるが、とにかくタラちゃんの顎の如く長い。

さて、ゆうばりファンタの合間を縫って、タラちゃんがホテルで執筆していた脚本が、2作目となる「パルプ・フィクション」。アカデミー脚本賞、カンヌ映画祭パルムドール受賞で、押しも押されもせぬ時代の寵児に駆け上がる。

当時キャリアが低迷していたジョン・トラヴォルタを起用。このあたり、ワンハリのリックにも重なるが、トラヴォルタは見事に復活。ウーマ・サーマンとのダンスシーンは忘れ難い。♪ミザルーなど、ハナからこの映画の曲と勘違いしてる人がいるほど、キマっている。

夕張で執筆した「パルプ・フィクション」はカンヌ・パルムドール、アカデミー脚本賞を受賞!

続いて、思春期に憧れた女優パム・グリアに逢いたさ一心で作ったような「ジャッキー・ブラウン」を挟んで、日本映画への偏愛が横溢した「キル・ビル」の登場だ。

これなど余りに長過ぎてvol.1、vol.2に分けられる事になる、そのvol.1でウーマ・サーマンと戦う、栗山千明演じるボディーガードに注目。女子高生なのに一升瓶をからげ、車をぶっ飛ばすキャラは日本のアニメに依るが、その役名がなんと、〝gogo夕張〞!ゆうばりファンタで〝マッハgo go go〞と歌っていたタラちゃんとリンクした(笑)。

「ジャッキー・ブラウン」では憧れの女優パム・グリアを主人公に起用
「キル・ビル」で栗山千明が演じた女子高生の名前はなんと“GOGO夕張”!

ワンハリにも出て来るブルース・リーの、黄色いトラックスーツに身を包んだウーマ・サーマンの凄絶なリベンジアクションながら、突っ込み処も満載。その奇想天外な、振り切れた面白さに惚れ込んだ観客の一人が三池崇史監督。自身の新作「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」にタラちゃんの出演をオファーした。

03:

ワンス・アポン・ア・タイム・イン
月島

2007年6月 東京・帝国ホテル 役者として参加した三池崇史監督の「スキヤキ・ ウェスタン・ジャンゴ」プロモーションにてPhoto by Koji Watanabe/Getty Images

あれは2007年の事。
「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」の出演を終えたタラちゃんは、一晩ブロードメディア・スタジオの試写室を借りきり、三池組スタッフや仲間を集めて上映会をひらく。それが5作目の「デス・プルーフ in グラインドハウス」だった。

タラちゃんの解説付きで、アメリカからワザワザ取り寄せた出来立ての新作の試写を見る贅沢。三池映画も裸足で逃げ出す、ブッとびのカーアクション&ウーマンバイオレンス。その夜、月島のもんじゃ焼きの旨かったこと、盛り上がったこと。タラちゃんの純粋な映画オタクの顔が輝いていた。しかしハリウッドのオタクはスケールが違うわ。

みずからの解説付きで三池監督にお披露 目した「デス・プルーフ」
自身もバーの店主役で出演

続くブラピ主演「イングロリアス・バスターズ」では戦争映画を、さらにはディカプリオ主演「ジャンゴ繋がれざる者」では西部劇を、と失われたジャンル映画に、新たな斬り口で光を当ててみせる。

戦争映画なのにクライマックスは映画館、映画フィルムが燃えてナチを殲滅する面白さはタランティーノの面目躍如。そしてこの2作あたりから、社会性が入り込んで骨太なエンタメになるのも興味深いところ。無論それは、主演二人と共にワンハリへと引き継がれる。まぁそれに比べたら、8作目の「ヘイトフル・エイト」は、あれっドウシチャッタノ?感は否めまい。

ブラピ主演「イングロリアス・バスターズ」
レオ主演「ジャンゴ 繋がれざる者」

▶︎ブラピ主演「イングロリアス・バスターズ」とレオ主演「ジャンゴ 繋がれざる者」。この二作がワンハリへの布石に

今回のDVD化にあたり、ワンハリを再見したが二度目の方が面白かった。
同じ時代を全く別角度で斬り込む「ジョーカー」の衝撃度はないが、2019年を代表するアメリカ映画の表裏の両作となるだろう。かねてより本撮ったら引退と宣言しているタラちゃん。最後!?はいったいどんな映画を見せてくれるのか?

知っているともっと楽しい!ワンハリ100のキーワードを徹底解説!

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