どれだけ安くなった? イオンが「米国産牛肉」の関税引き下げで価格改定

1月1日から発効した日米貿易協定。日本は米国産の牛肉やワイン、チーズなど8,000億円規模の農産物に関して、関税の引き下げを実施しました。

これを受けて、流通各社も販売価格の改定に踏み切り始めています。大手スーパーのイオンも、その中の1社。1月9日から、全国の約540店舗で米国産牛肉の販売価格を改定しています。

今回の価格改定によって、牛肉の価格はどの程度、安くなったのでしょうか。価格改定に合わせて報道陣に公開された販売現場を取材しました。


値下げ率は最大で13.5%

イオンが今回、販売価格を改定したのは、「アメリカ産牛肉ばらカルビ焼肉用」と「牛肉ばら味付けカルビ焼肉用(解凍)」の2品目です。常時販売している商品の中でも、特に人気の高い2品目を選んだといいます。

価格を改定した「アメリカ産牛肉ばらカルビ焼肉用」

販売価格は、本州と四国の「イオン」「イオンスタイル」の場合、アメリカ産牛肉ばらカルビ焼肉用が改定前は100グラム当たり298円(税別、以下同)だったものが改定後は同278円に、牛肉ばら味付けカルビ焼肉用(解凍)が同148円から128円に変更されています。

値下げ額はいずれも100グラム当たり20円。値下げ率に換算すると、前者が6.7%、後者が13.5%となります。セールでは100グラム当たり98円で販売した事例もありますが、通常時の販売価格として過去最安水準だそうです。

改定価格は2月末まで?

今回の価格改定は日米貿易協定の発効を受けたもので、米国産牛肉の関税は従前の38.5%から26.6%に引き下げられました。税率は毎年4月に下がり、最終的には2033年度に9%となる予定です。

ただ、関税が引き下げられましたと言われても、消費者としては実感がないのも事実。そこでイオンでは、「今回のような価格改定によって、米国産牛肉が安くなっていると実感してもらいたかった」(イオンリテールの剱持彰・畜産商品部長)と、狙いを語ります。

もう1つの価格改定商品「牛肉ばら味付けカルビ焼肉用(解凍)」

今回引き下げられた価格は、販売数量を確保できた2月末まで据え置かれる予定。アメリカ産牛肉ばらカルビ焼肉用は52トン、牛肉ばら味付けカルビ焼肉用(解凍)は110トンを用意しているそうです。

3月以降の販売価格については、「米国の市況や為替動向、物流費などの変動が影響するため、現時点では未定」(剱持部長)だといいます。イオンが先行きについて慎重な見方をするのには、ある理由がありました。

3月以降の価格はどうなるのか

実は今、牛肉は世界的な調達競争が起きています。主因となっているのは、アジアで急激に拡大している食肉需要。それに加えて、足元では豚コレラが発生し、中国の同国内向け豚肉の生産量が減少。調達環境は厳しさを増しています。

イオンの主力商品であるタスマニアビーフ

イオンとしては、自社農場で生産しプライベートブランドとして展開しているタスマニアビーフを中心としながら、その補完的な役割として今回価格改定をした米国産牛肉を販売していく構え。今回価格改定をした2品目以外にも、定期的に3~4日程度のセールを実施し、その他の品目も拡販していく予定です。

これらの施策により、イオンでは牛肉全体の販売額を年間で2割増に持っていきたいとしています。消費増税に苦しむ消費者にとって、今回の価格改定は1つの福音。あとは、調達環境が少しでも改善し、販売価格がさらなる値下げ方向に動いてくれることを願うばかりです。

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