思わず頬が緩んでいる自分の表情に気づいた
いい意味で力の抜けた薄いベージュの色合いに、ルーフはブラックというしゃれた組み合わせ。フロントグリルと一体型の丸いヘッドライトがデザイン全体にアクセントを加えて、黄色いナンバーがポップな雰囲気を醸し出している。
インテリアは、素材自体は軽くチープさを感じるが、ユニークな形状と“ギア”っぽさを強調したあしらいで、「頼りになる相棒」のような真逆のイメージに昇華させている。もちろん、現代的で使いやすさという部分で優れていることは言うまでもない。
「郊外の別荘を持つ方というのは、やはりアウトドアを楽しむ方が多いんですよ」
清瀬さんは、ジムニーのナビシートで揺られながら、楽しそうに語る。
まだ年が明けてそれほど日も経ってないうちに、購入を検討している別荘の下見へ出かけることになった。僕と同じようにボーナスを頭金にして格安の別荘を手に入れようというお客はどうやら多いようで、なるべくなら早めに動いたほうがいいだろうと不動産販売店からアドバイスされたからだ。
そして、そのリゾート物件専門の不動産販売店で僕の担当をしてくれているのが、この女性、清瀬まちさんだった。中古物件とはいえ、別荘はクルマよりだいぶ高い買い物である。相談する相手としては、すこし若過ぎるんじゃないかとはじめは懸念していたものだが、話を進めていくと不動産についてかなりの知識を持っており、最新の別荘事情にも通じていた。
ただ、いざ下見へ行くとなったその日集合場所に現れたのは、いつものスーツ姿の清瀬さんではなく、ほっそりした華奢な身体つきがよくわかるガーリーな服装の清瀬さんだった。挨拶をしながら、思わず頬が緩んでいる自分の表情に気づいた。だってこれではまるで───。
「あ、ジムニーだ! 可愛い~。良いですよね、このクルマ」
───まるで休日のデートではないか!
なんだか小動物と一緒にいるみたい
本来は僕がすべきはずなのだが、清瀬さんはドライブ中の車内が退屈にならないよう、会話を盛り上げてくれる。
「このへんだと買い物するのはどこがいいですかね?」
「おすすめは〇〇〇アウトレットですね。日用品はもちろん、アパレルから食料品までなんでも揃いますから」
物件周辺の情報についても、かなり調べているようだ。
「そうだ、もしよかったら、ちょっと近くの湖へ寄っていきませんか? いまの季節なら散歩するだけでも絶対気持ちいいですよ!」
もともと今日は下見のために丸1日空けてあるし、ましてやこんな素敵な女性に誘われて断るという選択肢があるわけもなく、目的地間近で僕らは近くの湖へ寄り道をすることにした。
1月ということで、朝夕はさすがに空気が肌をつきさすような感覚があるが、日中、これだけ日が当たっている場所なら、冷たい風も優しさを帯びているように感じられる。彼女の言ったとおり、湖畔は散歩するには最高のコンディションで、すこし歩いているだけで、身体だけじゃなく心も暖かくなってくる。
彼女はクルマから降りるなり、「う~~~ん」と大きな声を出しながら伸びをした。そして、美しい景色を眺めながら、“気遣いの鬼”だった先ほどまでととはまるで別人になったかのように、自由に動きはじめた。ジャンプしてみたり、クルマに寄りかかったまま微笑んだり、おどけたりしている。
そのフォトジェニックな姿を眺めながら、頭に浮かんだ疑問をなげてみた。
「このクルマ、どういったところが可愛いと思ったの?」
清瀬さんは目線を宙に浮かせたまま、すこしだけ考えて、
「目が好きなんですよね。あ、目っていうかライトですね。まん丸で、ボディサイズに対する大きさもちょうどよくて。なんだかこのクルマ見ていると、小動物と一緒にいるみたい」と答え、「あと、実はわたしもアウトドアが好きなんですよ」と付け加えた。
たしかに、本格的な4WDシステムを持つジムニーなら、どんな悪路も走ることができるし、趣味のアウトドアにも最適だ。さらに、この最新型では安全装備も大幅に刷新されたと聞いているので、運転に不安な人や不慣れな人であっても、最低限の安全レベルを維持したまま走ることができる。
そんなことを考えつつ、クルマのヘッドライトを「目」と言ってしまうそのあどけない言葉のチョイスに惹かれてしまう僕がいた。ただし、だからといってこの状況で彼女を口説きにかかるほど、僕は浅はかな男ではない。そう自分に言い聞かせる。
一緒にいればいるほど、彼女に惹かれていく
「ジムニーは、後席を倒すとラゲッジルームがすみずみまでフラットになるんですよね?」アウトドア雑誌でそんな話を見たと彼女は言い、早速この場でシートアレンジを試してみようという話になった。一瞬逡巡しつつも、流れに任せる。いとも簡単に床面がフラットなスペースがうまれた。
清瀬さんは「わぁ~本当にしっかり平らだー」と言いながら、ラゲッジルームに寝そべっている。笑い声が湖畔に響く。
彼女は不動産屋で会ったその日から、物怖じしない、いい意味で馴れ馴れしい雰囲気で僕に話かけてきてくれたが、このような無防備な姿は、普段のスーツ姿では絶対に見られないだろうし、この湖畔の情景やジムニーが彼女の心をゆるめてくれているのかもしれない。
話せば話すほど、一緒にいればいるほど、彼女に惹かれていく。いつまでも話続けていたかった。一番高いところに昇りつつある太陽は、ジムニーと僕らを照らしている。「そろそろ現地へ行ってみましょう」という言葉が彼女の口から出るのがこわくなってきた。
その前に、なんとか一歩だけでも踏み出さなくては。「恋人はいるのか」と僕が質問しようとしたその刹那、全く同じ内容の質問が彼女の口から飛んできた。
僕は思わず、「え?」と間抜けな声を出してしまったが、落ち着いているように装いながら答えた。「いや、いま付き合っている人はいないよ」
「そうなんですね」小さく頷きながら、彼女は微笑んでいた。そういえば、丸い目をしたタヌキ顔の僕は、若い頃に、「お前、ジムニーみたいな顔だな」とクルマ好きの男友達に言われたことを思い出した。今思えば、意味はよくわからないが(笑)。
やがて二人を乗せたジムニーが走り出すと、澄んだ空には、丸い雲がふたつ浮いていた。
[Text:安藤 修也/Photo:小林 岳夫/Model:清瀬 まち]
Bonus track
清瀬 まち(Machi Kiyose)
1991年3月23日生まれ(28歳) 血液型:B型
出身地:岡山県
日本レースクイーン大賞2016 グランプリ受賞
SUPER GT LEXUS TEAM SARD 2019 KOBELCO GIRLS
SUPER GT LEXUS TEAM SaRD 2018 SaRDイメージガール
SUPER GT エヴァンゲリオンレーシング2017
2018 RIZINガール
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