「弱々しいパンチのケンカシーンがお気に入り」 30kg減量して挑んだC・ベイルが語る『フォードVSフェラーリ』

『フォードvsフェラーリ』クリスチャン・ベイル© HFPA

アカデミー賞有力候補と目される伝記映画『フォードvsフェラーリ』が、2020年1月10日(金)よりついに日本公開。大幅に減量し頑固一徹な天才レーサー、ケン・マイルズを演じたクリスチャン・ベイルが、出演の決め手や心身に負担の大きいメソッド演技の意外な理由を明かしてくれた。

『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

「ケン・マイルズは探求者であり、一切の妥協を拒み対立を恐れない人物」

―本作では、またも肉体改造をしていますね。

不幸なことに、この脚本を気に入ってしまったせいだ。ケン・マイルズという男は、健康面においては時代のずっと先を行っていて、ランニングを積極的にやるタイプだった。さらに戦争経験などが影響して、痩せ細っていた。だから、またもぼくは楽な役を選んでしまったことになる(笑)。

―(笑)。

いい役だなと思って、そのあとに「しまった! またダイエットをしなきゃいけないのか!!」と悟ったよ(笑)。

『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

―ケン・マイルズのどこに惹かれたのでしょうか?

実は、この映画はもともとは群像劇として作られる予定で、当時の台本を読んでいたんだ。その台本ではマイルズにも(キャロル・)シェルビー(マット・デイモン演じる元レーサーのカーデザイナー)にも、それほど時間が割かれる予定ではなかった。でも、ぼくはもともと父の影響でF1のファンだったから、この台本をきっかけにマイルズのことを知りたいと思ったんだ。それで兵役時代のことや、メカニックとしてのキャリアなどを学んだ。彼は探求者で、一切の妥協を拒否した。対立を恐れないタイプで、自分の言動のせいで失敗することも多かった。やがて、そんな彼に賭けてくれるキャロル・シェルビーが現れた。二人は兄弟のような関係で、性格はまったく違うけれど、同じ情熱と目標があった。そんなキャラクターに惹かれるのは難しいことではなかったよ。

『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

「ひとつひとつの仕事が生き残りを賭けたサバイバルだと思っている」

―二人の取っ組み合いの喧嘩の場面が、とてもコミカルで面白かったです。

ぼくは『ダークナイト』シリーズ(2008年~)、マットは『ボーン』シリーズ(2002年~)で、たくさんの華麗なファイトシーンを経験してきたわけだけど、この場面はその真逆だよね。二人はお互いのことを殴りたい気持ちでいっぱいだけど、同時に怪我をさせたくないと思っている。だから、パンチは弱々しいし、殴られたところがやたら痛いという。お気に入りの場面のひとつで、とても楽しかったな。

『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

―ケン・マイルズは一種のスピード狂といえますが、あなた自身はどうですか?

最近のぼくは、人生という高速道路において走行車線を走ることに力を入れている。それがとても楽しい。人生の大半において、ぼくは追い越し車線で走ってきて、さまざまな事故を経験し、体にはあらゆる金属が埋まっている状態だ。45歳になった現在では、傷や手術から回復するのに以前よりずっと時間がかかるようになったので、ゆっくり生きることを楽しんでみようと自分に言い聞かせている最中だよ。

『フォードvsフェラーリ』クリスチャン・ベイル© HFPA

―あなたは映画の撮影中はキャラクターのままでいるそうですが、どうしてですか? ご家族の反応はいかがですか?

子供たちは理解してくれている。ただ、時々「パパ、黙って」って叱られるけど(笑)。

―(笑)。

『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

家では連中がぼくの上司だから、従うしかないんだ。ぼく自身は演技に関して正式な教育を受けていない。そして、このアプローチをしなかったときの演技は、満足できるものにならなかったという苦い経験がある。実は、この仕事ができていることを、とても幸運だと思っている。ぼくにとっては、ひとつひとつの仕事が生き残りを賭けたサバイバルなんだ。もし、いまの仕事に自分が持てるすべてを注がなければ、他人に仕事を取られてしまう。きちんとした教育を受けた役者だったら、「アクション!」と聞いたときに、たちまち演技に没頭できるかもしれない。でも、ぼくにはどうやったらそんなことができるのか、まったく分からない。だから、こうしたやり方でしのいでいるだけなんだ。

『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

取材・文:小西未来

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『フォードvsフェラーリ』は2020年1月10日(金)より全国ロードショー

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