「共生の機会奪ってる」 障害児就学訴訟が結審、3月判決

横浜地裁

 重度障害を理由に希望する地元の川崎市立小学校への通学を認めず、神奈川県立特別支援学校を就学先に指定したのは差別に当たり違法だとして、人工呼吸器を付けて暮らす小学2年生の光菅和希君(8)と両親が市と県に小学校への就学を認めるよう求めた訴訟は9日、横浜地裁(河村浩裁判長)で結審した。判決は3月18日に言い渡される。

 9日の口頭弁論で母の悦子さんは意見陳述に臨み、「障害があってもなくても小さなころから同じ学びの場に一緒にいることが、当たり前の世の中になること。それこそが差別をなくすことにつながるのではないか」と述べた。

 原告代理人の大谷恭子弁護士は「分離別学の強制は地域の学校、同年代の集団、地域社会からの排除であり差別。共生する機会も奪っている」と強調。8日に開かれた津久井やまゆり園事件の初公判にも触れ「障害者を社会から排除する差別意識から起きた痛ましい事件を二度と起こさないためには、障害の有無にかかわらず共に学び共に育つ教育を当たり前のものとして実現していかなければならない」と訴えた。

 人工呼吸器を付けて暮らす子どもを市立小学校で受け入れた実例がないとする市は、準備書面を提出。「特別支援学校が最適な『学びの場』。保護者の意見に従わなければならないというものでは決してない」と反論した。県も準備書面で「合意形成に向けての努力を重ね、保護者の意見を最大限考慮した」とした。

 訴えによると、2018年4月の光菅君の小学校入学に際し、両親は市や県の教育委員会と複数回にわたり協議。市立小学校への通学を希望したが、市教委は同3月、「専門的な教育が適切」として県の特別支援学校に就学するよう通知した。両親は特別支援学校ありきで就学相談が進められたと反発。市教委は人工呼吸器に関する知識を深めようともせず、小学校で学べるよう「合理的配慮」の検討すらしなかったとしている。

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