三菱

 地下神殿のようなドック跡の貯水槽。工場をつなぐトンネル内には蒸気機関車(SL)が走っていた線路跡。こんなところがあるのか。本紙3日付の「探検!三菱長崎造船所」を見て、こう思われた方は多かったのではないだろうか▲かくいう筆者もその一人。長崎造船所本工場には何度か取材に行ったことがあるが、歴史が詰まった遺構がこんなにあるとは知らなかった▲岩崎弥太郎が「三菱」を創業して150年。長崎造船所は造船だけでなく、火力発電や風力発電などにも事業を広げてきた▲造船部門も拡大し1972年には「100万トンドック」を有する香焼工場が完成した。2002年に本工場で建造中の豪華客船が火災を起こした際、復旧工事が行われたのは香焼工場。復旧工事を完遂できたのは全国一ともいわれた生産能力の高さがあったからだ▲その香焼工場を売却する話が持ち上がっている。主力造船施設だけに地元は大きな衝撃を受けた。ただ、三菱の業態は時代の推移とともに変化してきたのも事実だ▲本工場内には航空機エンジンの部品工場が造られ、今年中にも生産を開始する。造船部門の縮小と新規部門の設置。企業が生き残るには変化は欠かせない。創業200年を迎えるころには、また今とは違う形に変わっているかもしれない。(豊)

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