ひきこもり、就労支援へ  九州調理師専門学校 フリースクールと連携 技能習得や対人不安相談

 長崎市の九州調理師専門学校は新年度、不登校・ひきこもり当事者の就労促進に向け、フリースクールと連携した支援制度を創設する。昼間に相談支援を通じて対人不安や悩みの解消を図りつつ、夜間授業で調理技能の習得を促す。川島賢治校長(41)は「料理を食べた人に『おいしい』と言われることが社会復帰への自信につながる」と当事者が自立に向かう姿を思い描いている。
 NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」(東京)によると、不登校・ひきこもりの問題に関して専門学校が独自の就労支援制度を設けるのは全国的に珍しい。同会理事でジャーナリストの池上正樹さん(57)は「ただ働く環境を与えるのではなく、スキルを身に付けながら段階的に就労を目指すことができる。社会に戻りたいと考える人たちの選択肢が広がる」と期待を語る。
 就労した経験があっても、人間関係や仕事のミスマッチで挫折した人や、長く対外的な関わりがない人らをサポートする狙い。これまでの同校の卒業生には、調理の過程で自信を付けて社会的自立を果たした人も多くいたという。川島校長は「周囲との付き合いが苦手な人が一人で黙々と作業することもできる」と語る。学校側が調理を通じた就労支援ができないか、フリースクール側に打診していた。
 長崎市の「フリースクールクレイン・ハーバー」が連携する。支援制度は調理師養成科の夜間部に創設。対象は中学卒業以上で年齢制限はなく、通常募集に加えて不登校・ひきこもりなどの当事者を募る。
 就学前に、当事者と保護者を交えた面談で支援方針を決定。入学者は卒業までの1年半、夜間部の生徒と同様に調理師免許取得のための講義を受け実習に取り組む。同時に、フリースクールへ通って外出習慣を身に付けたり、学校や生活の悩みを相談したりできる。学費は支援の有無に限らず同じ。夜間部には現在、10~50歳代まで幅広い世代が在学している。
 クレイン・ハーバーの中村尊代表(52)は「何もせずに家にいると、不安は膨らみ最初の一歩を踏み出すハードルが高まる。料理を通じた成功体験を積み重ねることで不安は解け、自信につながる」と期待する。
 内閣府によると、2015年の調査で若年層(15~39歳)のひきこもり人口は約54万人。18年の調査では中高年(40~64歳)のひきこもり人口が約61万人に上っており、きっかけは「退職」が最も多かった。

 ■18、26日に説明会

 九州調理師専門学校は今月18、26の両日、支援制度に関する4月入学者向けの説明会を開催する。会場は長崎市弁天町の同校。個別面談や調理実習体験などをする。事前予約が必要。入学、説明会の問い合わせは同校(電095.861.7008)。

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