寺尾紗穂によるキャリア最高傑作『北へ向かう』リリース、参加ミュージシャン発表。

今こそ、本当の「歌」が輝きを放つとき――。現代に於いて最も真摯に「歌」の姿を追い求めて来たシンガー・ソングライター、寺尾紗穂によるキャリア最高傑作『北へ向かう』がここに完成。ともに「今」を歩みつづける音楽家たちと作り上げた、11の輝きと、それぞれの物語。

2007年のデビュー以来、真の「歌」の姿を紡ぐように、数々の名作の発表やコンサート活動を続けてきた、シンガー・ソングライター、寺尾紗穂。常に時代の先端にありながらこの世界の様々な人びとや物事に慈しみを注いできた彼女の活動は、今や老若男女の全世代から、そして国境を超えた数多くのリスナーからも厚い支持を受けるに至っている。その美声とともに全国各地をめぐる音楽家としての真摯な活躍の傍ら、多くの単著を持つ文筆家としても活動する彼女。その可憐にして凜とした存在感は、今まさに多くの人へ安らぎと勇気を与えていると言えよう。

近年では、自作曲の発表とあわせて各地のわらべうた/子守唄を発掘し、清廉なアレンジを施した上で現代に提示する、稀代の「ソング・キャッチャー」としても活躍するなど、その活動のフィールドをますます広げている。また、ソロ活動と並行して、盟友・あだち麗三郎、伊賀航とのトリオ・バンド「冬にわかれて」を結成。ライブ出演はもちろん、アルバムのリリースも敢行するなど、その創作の充実はとどまるところをしらない。

そんな中、2017年の前作『たよりないもののために』以来約3年ぶりとなるオリジナル・ソロ・アルバム『北へ向かう』を発表することとなった。まさに待望と言うべき本作は、これまでの寺尾紗穂の活動を集大成する傑作だと断言すべきであるとともに、2020年代における「歌」の姿とそのゆくえを鮮やかに提示するものだ。

ゲスト・ミュージシャンにはともに「今」を歩み続ける多彩な面々が集結し、寺尾紗穂の流麗な歌声とピアノ演奏に、華やぎと豊かな感情を注いでいる。寺尾の実父・寺尾次郎の逝去に際し書き上げた「北へ向かう」は、キセルによるふくよかな編曲と演奏を伴い、キャリアに燦然と輝く名曲の誕生を予感させる。また、あだち麗三郎と伊賀航という気の置けない二人を交えた、「心のままに」、「選択」の温かでいて鮮烈なグルーヴ。蓮沼執太による編曲の元、歌とオーケストレーションの新たなスタンダードを作り上げた「やくらい行き」。マヒトゥ・ザ・ピーポーのエモーショナルかつ繊細なギターが彩る「白虹」、「夕まぐれ」。U-zhaanによるメロディックなタブラが寄り添う「記憶」……。収められた全ての楽曲が、「今歌われるべき」という細やかな萌芽に満ちた、決定的アルバム作品がここに完成した。

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