ゴーンと日本

 久々の表舞台に高揚しているのが見て取れた。保釈中に国外逃亡したカルロス・ゴーン被告が中東レバノンで、外国メディアを主な相手に自分の立場を正当化する会見を開いた▲日産自動車の経営立て直しのために来日して、業績をV字回復させたゴーン被告。だが同時に私腹を肥やしていたと告発され、逮捕、起訴されていた▲レバノンなど3カ国の旅券を持ち、世界を飛び回ってきた実業家だ。保釈中であっても日本滞在を強いられるのは、拘束と同然だと感じたのだろうか▲15億円もの保釈金を没取されるのを承知で、自家用ジェットを使って出国。大胆な逃亡劇の詳細については、人々の関心が集中しているにもかかわらず、本人は何も答えなかった▲強調したのは、「1日8時間も取り調べを受けた」など、日本の司法制度がいかに非人道的かということで、あたかも自分は犠牲者だと言わんばかりだった。これに対し日本側も森雅子法相が未明の会見で「誤った事実を喧伝(けんでん)している」と反論。国際世論を意識した主張合戦と化している▲日本で20年間ビジネスを行い、藍綬褒章までもらったゴーン被告。そこから不法出国した上で、司法制度を一方的に批判する行為はやはり許されない。彼にとって日本という国は、ただの金もうけの場にすぎなかったのだろうか。(泉)

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