【社説】NHK新会長 公共メディアの自覚を

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 NHKの新会長に25日、元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸氏が就任する。

 5代続けての外部登用となる。安倍晋三首相を囲む勉強会に参加した人物で、選出には官邸の意向が働いたとされる。

 会見では「政権が報道機関からチェックを受けるのは当たり前。政権とは距離を置く」と述べた。果たして言葉通りの姿勢を保てるのだろうか。

 前田氏はまず公共メディアのトップとしての自覚を持たなければならない。どんな役割を果たすべきか。権力との健全な関係をどう築くのか。常に自問する必要がある。

 というのも、政権に近く政治的中立性が疑われた人がいたからだ。前会長の籾井(もみい)勝人氏である。「政府が右と言うものを左とは言えない」と述べた。報道機関のトップとしての資質が疑われる発言だ。なぜ、こうした人が会長に選ばれたのか。

 NHKを監督する最高意思決定機関の経営委員会に責任があろう。委員はかつては国会の全会一致で決めていたが、その原則が近年崩れ、政権の意向を反映したメンバーになっていると言わざるを得ない。

 現会長の上田良一氏は、経営委員から選ばれ、異例の人事と言われた。これでは、NHKはもちろん、経営委が政権との適切な距離を保っていないと批判されても仕方あるまい。

 最近も経営委の判断に疑問符が付くことがあった。かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組への対応である。日本郵政グループから抗議を受けて上田会長を厳重注意し、会長は郵政側に謝罪した。

 放送内容に虚偽があったわけでもないのに、経営委の判断でNHKが郵政側に屈したことになる。番組作りの自主自律を傷つけただけではなく、取材現場の萎縮をも招きかねない。

 委員長代行から昇格した森下俊三委員長は、上田会長への厳重注意について「自主自律を損ねた意識は全然ない」と述べている。あきれるほかない。

 NHKは国営放送ではなく、公共放送を担う特殊法人である。しかし業務の許認可権は国が持っている。真に自主自律を目指すのであれば、欧米各国のように、政府から独立した第三者機関が監督するような改革が不可欠ではないか。

 NHKは西日本豪雨や昨年の台風19号など、大規模災害ではいち早く現場の様子を伝え続けてきた。昨年12月上旬には、首都直下地震を想定したドキュメンタリーとドラマを組み合わせた連続番組を放送した。視聴率にとらわれることなく、人や時間、手間を惜しまず、タイムリーな問題提起や、視聴者の共感を得られる番組を作ることこそ公共メディアの役割だろう。会長はもちろん、職員も改めて胸に刻まなければならない。

 一方、インターネットへの同時配信をはじめ肥大化する業務の改善といった「三位一体改革」も待ったなしだ。

 受信料収入が増え、民放との財政格差が広がっている。日本の放送制度は、NHKと民放との相互補完を通じて国民の知る権利を保障している。それだけに、民放との健全な競争が損なわれてはならない。ネットへの同時配信が民業圧迫にならないよう、受信料の引き下げなども早急に検討すべきではないか。

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