社説(1/13):台湾総統に蔡氏/中台関係の安定化に傾注を

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 反政府・反中国の抗議活動が続く香港と同様に、台湾でも中国の強硬姿勢に対し、国民が「ノー」を突きつけた形だ。11日に投開票が行われた台湾総統選で、独立志向の与党、民主進歩党(民進党)の蔡英文総統が親中路線の最大野党、国民党の韓国瑜・高雄市長らを抑えて圧倒的な差で勝利した。

 総統選で示された台湾の民意を中国は重く受け止めなければならない。今後、中国がこれまでのように外交や経済関係で台湾を締め付け、関係を悪化させる事態は好ましくない。習近平政権には覇権主義的な台湾統一政策の見直しが求められよう。

 蔡氏の得票は1996年に初めて台湾総統選が行われて以来、最多の817万票を記録した。それほど台湾の有権者には、香港問題や米中貿易摩擦など国際情勢に関連して強い対中警戒感が広がっていた証拠と言える。

 蔡氏の圧勝はつまり習政権の敗北でもある。昨年1月に行った演説で習氏は「祖国の統一は必然だ」と述べ、さらに武力行使についても「放棄しない」と語っている。香港と同様の「一国二制度」による台湾統一の具体案を検討するとも語った。

 強大な軍事力と経済力を背景に、独立志向の強い蔡政権を屈服させる意思があからさまだったが、逆にこの演説が台湾人の憤りに火を付ける結果を招いた。習氏がしばしば言及する「中華民族の偉大な復興」も、周辺国に警戒感を与えるだけであり、台湾においても同様である。

 さらに憂慮されるのは、台湾を巡る米中の緊張激化である。習演説に呼応するかのように、米国は昨年夏、約27年ぶりに台湾への戦闘機の売却を決定したほか、戦車や地対空ミサイルなどの武器売却を承認している。米中両国が自制し、この地域の軍事的な緊張を高めてはならない。

 習政権は、台湾と外交関係を結んでいた中米パナマなど7カ国を断交させるなど、露骨な圧力をかけてきたが、こうした姿勢を短期間に修正する可能性は、現実的には高くはない。台湾側にも大陸と決定的な対立を招かない知恵が求められよう。

 再選された蔡氏は、もともとは穏健な現状維持派といわれてきた。これまでも急進的な独立派とは、一定の距離を置いてきたという。台湾海峡を隔てて、両国の駆け引きとにらみ合いは今後も続くだろうが、蔡氏には中台関係の安定化のために最大限の努力を傾けてもらいたい。

 日本にとって、安定した中台関係は安全保障の上からも極めて重要な課題である。中国が「核心的利益」と称する台湾を影響下に置くことは海洋進出の出口を押さえる意味を持つ。自由、民主主義、そして平和という価値観を共有する日本は、台湾と緊密に連携し、可能な限りの支援を行っていくべきだろう。