レイズ移籍の筒香、少年野球の変化願う“選手ファースト” 「指導者の自己満はよくない」

堺ビッグボーイズの交流会に出席したレイズ・筒香嘉智【写真:津高良和】

子どもと親が指導者を選べる時代に「そうしたら指導者はまた勉強すると思う」

 DeNAからポスティングシステムでレイズに移籍した筒香嘉智外野手が12日、自身がスーパーバイザーを務めるボーイズリーグ・堺ビッグボーイズの小学、中学部の交流会を行った。野球人口が減少するなか同チームは約190人の大所帯。筒香は“指導者ファースト”から“選手ファースト”の少年野球チーム増加を願った。

 自身も中学時代に所属していた堺ビッグボーイズには、現在で小学生と中学生を合わせ約190名が所属している。昔は勝利至上主義のスパルタ指導を行っていたが2009年を境に指導方針を180度変え、将来の野球界を担う子どもたちの活躍を第一に考え全国から注目を浴びるチームに変化した。

 2017年に筒香は同チームのスーパーバイザーに就任。少年時代に怪我で球界を去っていく子どもたち、将来の人生に必要なものは何か、様々な角度から意見を行ってきた。

 現在、堺ビッグボーイズには遠方から来る子どもたちが数多くいる。昔ながらのスパルタ方針、勝利至上主義のチームがまだ多く存在するのが理由の1つだ。筒香自身は同チームのように日本全国に広がることを切に願っている。

「理想は近くに色んな指導者がいて子どもたちが指導者を選べるように。指導者の数ももっと増えて、子どもたちと親が相談して指導者を選べる中で、行くところは偏ってくる。そしたら来ない(チームの)ところの指導者はまた勉強すると思う。そういうサイクルで回ることが1番いいかなと思います」

長い練習時間にも言及「子どもたちの集中力はそんなに持たない」

 DeNA時代も神奈川の少年野球チームをいくつか見て回ったが、練習時間も長く指導者の自己満足で動くチームが多く見えたようで「1番は子どもたちの将来を考える。子どもたちが主役。大人が、自分がやりたいように、子どもたちに言うことを聞いて欲しいから怒っている。僕にはそういう風に見えた。指導者がやりたい環境を作るのではなく、子どもたちの将来が1番であることを考えてほしい」と言葉に力を込めた。

 土日の休日が1日野球で潰れ、家族の時間も取れない。お茶当番など親への負担も大きい現状に心を痛めた。筒香の元には何通も手紙が届いたという。

「お母さんの手紙にもあったが、1日野球で潰れて家族でどこかに行くこともできない。現状、日本では長く練習するチームが多い、体の負担も子どもたちの負担も考えると、練習を短く集中して内容の濃い練習をすることが大事。子供たちの集中力はそんなに持たない。ただ、練習をやっている指導者の自己満はよくない」

“指導者ファースト”から“選手ファースト”への変化を筒香は望んでいる。これまで批判を恐れず発してきたことに本人も少しづつ変化を感じている。

「勝ちに対して全力にいくことが悪いわけじゃない。勝つためだけにするのがいけない。指導を見直しコミュニケーションとった時に部員が増えたという手紙ももらっています」

 筒香が取り組んできたことは決して無駄にならない。将来の野球界を背負うのは間違いなく子どもたちだ。野球人口の増加、日本の野球界がレベルアップするために、筒香は今後も提言を続けていく。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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