大村高文芸部『全国レベルへ 創作力磨く』 俳人招き講座、新人大会も 長崎県内高校文芸界をリード

西山さん(左)から俳句を学ぶ大村高文芸部=大村高

 長崎県立大村高(大村市久原1丁目)の文芸部は現在、県内の高校文芸界をリードする存在だ。昨年の県高校総合文化祭文芸コンクール(全5部門)の部誌、詩、俳句の3部門で最優秀賞を受賞。第34回全国高校文芸コンクールの文芸部誌部門では県勢として15年ぶりに奨励賞に輝いた。独自に俳句講座を開くなど常に創作力の向上を図っている同部だが、担当教諭は県高校文芸部全体のレベルアップの必要性を感じている。

 大村高文芸部の部員は現在4人(3年生除く)。1950年から刊行を続けている文芸誌「蟬(せみ)時雨」(創刊時は「青い実」)制作を中心に、詩、短歌、俳句、短歌づくりに取り組んでいる。「蟬時雨」は県高総文祭文芸コンクールで6年連続で最優秀賞に輝いており、同部は全国高総文祭にも連続出場している。

 ■知識確実に
 同部は、俳人協会県支部長で「母港」主宰の同校OB、西山常好さんを5年ほど前から講師として招いた俳句講座を、10月から約半年間、月2、3回のペースで開いている。部員のほとんどは高校から本格的に文芸に取り組むため経験が浅く、西山さんは俳句の基本から丁寧に教えている。
 俳句が室町時代中期に始まったこと、一つの詩で季節を詠む俳句は世界に一つしかない「有季定型」の文学であることなど、何となく知っていることが確実な知識として頭に入っていくという。
 「『わたくしは母とお寺に行きました』。この文は五七五だが季節がなく、リズムもないので俳句ではない。俳句にはリズムが大切」-。西山さんが力を込めると、生徒は真剣なまなざしでうなずいた。
 部員の本村奈々さん=1年=は「日本伝統の文学の奥深さを知ることで創造力が広がってきた」。福本栄理さん=同=も「俳句について学んだことがなかったので、西山さんに習うことで世の中の見方が変わってきた。新しい季語をもっと習得し、自分の世界に浸りたい」と話す。

 ■公園を吟行
 県内ではトップ級の同部だが、まだ全国レベルとは言えないようだ。県高総文祭文芸コンクールで上位に入った作品を全国高校文芸コンクールに出品したが、部誌部門以外の詩や俳句、短歌などの部門では一つも入賞、入選できなかった。同部顧問の福田勝孝教諭は「県全体のレベルを上げる必要がある」と言い切る。
 そこで昨年12月、同部は県内の文芸部員の創作力向上を図ろうと、県高校文化連盟文芸専門部と共に県高校文芸コンクール新人大会を初めて開催した。同校、県立長崎東高、県立西陵高から計12人が参加。4人の俳人と一緒に大村公園内を吟行し、俳句をつくった。
 同大会では大村高の浜口菜摘さん=2年=の「目の前に海足元に石蕗(つわ)の花」が1位。福本さんの「銃眼をのぞいた先に石蕗の花」が2位、西陵高の木下今日子さん=1年=の「いろあせた絵馬の願いや散り紅葉」が3位だった。大会アンケートでは「俳句を書こうというきっかけになった」「もっと頻繁にこういう会をしてほしい」「他校と交流できてよかった」などの感想が寄せられた。

 ■感性伸ばす
 福田教諭は「文芸は努力した分だけすぐに成果が出てくる。全国にも目を向けながら、磨けば光る生徒の感性を伸ばしていきたい」と今後を見据える。西山さんは「新人大会のような機会がもっと県内に広がってほしい。私たちも教えられることはすべて伝授したい」と思いを語った。

県高校文芸コンクール新人大会で俳人(左)と吟行しながら俳句について教わる高校生=大村公園

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