目標は年1度の海外旅行、手取りの3割を貯蓄にまわす優秀な家計

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、3人の子どもを育てながら、年に1度は海外旅行に行きたいという40代の共働き夫婦。月14万円以上を貯蓄にまわす優秀な家計ですが、改善すべき点はあるのでしょうか。FPの氏家祥美氏がお答えします。

今まで貯金がほとんどできておらず、今後子どもの教育費がさらにかかってくることや老後のことが不安になり、自分なりに家計(通信費、保険費、光熱費)の見直しをして、これまで通り月8万円の積立貯蓄のほか、昨年から以下の積立を始めました。

・積立貯蓄:月8万円

・iDeCo:月2.3万円

・つみたてNISA:月3.3万円

・積立投信(ロボアドバイザー):月1万円

現在42歳ですが、来年再来年あたりにはできれば正社員になりたいと就職先を探しています。子どもも大きくなり、家族で出かけられるのもあと数年かと思うので、年に1度は海外旅行へ行きたいという目標もあります。貯蓄のバランス(預貯金、投資の割合など)はこれでいいのか、またボーナスからの貯蓄を今後はどのようにしていくのがいいのかについて教えていただきたいです。

<相談者プロフィール>

・女性、42歳、既婚(夫:43歳、会社員)

・子ども3人:16歳(高1)13歳(中1)11歳(小5)

・職業:派遣社員

・居住形態:持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:45~51万円

・年間の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出目安:約31万円

【支出の内訳】

・住居費:なし

・食費:10万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:5万円

・生命保険料:1.1万円

・通信費:1.6万円

・車両費:1.6万円

・お小遣い:5万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:14.6万円

(定期8万円、iDeCo2.3万円、つみたてNISA3.3万円、ロボアド1万円)

・ボーナスからの年間貯蓄額:80万円

・現在の貯蓄総額:500万円

・現在の投資総額:50万円

・現在の負債総額:なし


氏家:今回は、3人のお子さんがいる共働きファミリーからのご相談です。ご相談者さんはいま家計の見直しに励んでいて、月に14.6万円を貯められる家計への改善に成功しています。さらに、収入を増やすべく、2年以内に正社員を目指して転職活動もしています。

年に1度の海外旅行という目標を叶えながら、どのように資産を配分していけばいいのかというご質問にお答えします。

住居費ゼロ、固定費が少ないシンプルな家計

ご相談者さんの家計を拝見すると、まず、住居費がないことに気がつきます。戸建ての持ち家ということですが、すでにローンの返済がいらないため、今後はお金が貯めやすくなります。

「自分なりに家計(通信費、保険料、光熱費)の見直しをした」とおっしゃる通り、固定費も全般的に無駄がありません。通信費は、5人家族で1.6万円ですから、格安スマホなどに家族で一斉に乗り換えるなど工夫をした跡が見られます。生命保険料は家族で1.1万円ですから、掛け捨ての死亡保険、医療保険を各社比較しながら選んだと見受けられます。光熱費も5人家族で2万円なので、電力会社やガス会社を見直してセット割りなどを活用したり、料金プランを見直したりしているのでしょう。

住居費がなく、その他の固定費にも無駄がない分、教育費の5万円と、食費の10万円が目立ちますが、高校生、中学生、小学生のお子さんが3人いる家庭では必要なコストなので問題はありません。その他5万円も気になりますが、被服費や部活代、医療費など暮らしの諸費用をカバーしていると考えると妥当だと思われます。

その結果、手取り月収45~51万円の家庭で、支出を31.3万円に抑えられているのは、立派といえるでしょう。積立の仕組みを利用した貯蓄や投資は合計14.6万円で、収入が入ると口座から引き落とされるので、貯蓄等を先取りした残りで生活する仕組みができています。

海外旅行代を差し引いて「年間200万円を貯める」

毎月の積立(貯蓄・投資含む)合計14.6万円は、1年間で175.2万円になります。このほか、年間150万円あるボーナスのうち80万円を貯蓄に回しています。この結果、ご相談者さんは、毎年255.2万円の金融資産が貯められる計算になります。

ただし、1年の暮らしの中では、家具家電の買い替えや冠婚葬祭、車検や自宅のメンテナンスなどいろんな支出があります。ご相談者さんは「毎年海外旅行に行きたい」という目標がありますが、ボーナス150万円のうち貯蓄80万円を除いた70万円をすべて海外旅行費用に充てるのは難しいでしょう。

そこで、先ほど貯蓄可能といった金額のうち、55.2万円を海外旅行費用に回してはいかがでしょうか。すると、実際の貯蓄額は200万円ということになります。このお金の配分は、いつ、何のために使うお金かによって運用先を決めていきましょう。

最大の課題は第2子、第3子の教育費

ご相談者さんの家族構成をみると、16歳(高1)13歳(中1)11歳(小5)の3人のお子さんがいらっしゃいます。日本学生支援機構の調査によると、私立大学4年間にかかる教育費の平均が約550万円ということですが、ご相談者さんの預貯金は500万円、投資残高が50万円ということで、まだ一人分の教育費しか用意できていない状況です。第2子、第3子の教育費準備が当面の課題であることに気がつきます。

一方で、ご夫婦の年齢は、ご相談者さんが42歳、夫が43歳ということですから、現在11歳の小学生が大学を出て社会人になる23歳の年には、妻54歳、夫55歳となります。住宅ローンはすでに完済していますし、現在月5万円かかっている教育費もその頃にはなくなりますから、いまの収入が維持できて海外旅行に行かない場合には、255.2万円+5万円×12ヵ月=315.2万円が貯蓄に回せる計算になります。

60歳以降は収入が下がる可能性が高いものの、仮に65歳までお仕事を続ければ、10年間は老後資金を貯めやすい期間となります。老後資金準備は、さほど急がなくても大丈夫でしょう。

子どもの年齢と貯蓄残高を比較してみる

3人のお子さんの年齢と、各年の貯蓄残高を並べてみましょう。毎年貯蓄残高が200万円ずつ増えていき、大学に進学する年に550万円を残高から差し引くとした場合、以下のようになります。

年間200万円ずつの貯蓄ができれば、お子さんの教育費はすべて準備できることがわかります。

60歳まで引き出し不可のiDeCoを除いて計算してみると…

現在の積立先のうち、iDeCoは老後資金向けで60歳以降にしか引き出せないため、iDeCo以外の資産だけで教育資金が間に合うか検討してみます。iDeCoは月額2.3万円、年間27.6万円ずつ貯めているため、200万円から27.6万円を差し引いた172.4万円ずつの増加で再度検討してみましょう。

現在のペースでiDeCoを続けても、第3子まで教育資金が用意できることがわかりました。

教育資金準備に、価格変動のある投資的要素をどこまで混ぜるかも気になるところですが、現在すでに高校生の第1子に関しては、いまある預貯金をそのまま充てることになります。

現在13歳の第2子が大学に入る6年後、この時の資産は約3分の1が投資資産(つみたてNISAとロボアドバイザー)という状況になりますが、もし運用がうまくいってなかったとしてもそれには手をつけず、預貯金を取り崩すことで教育費を捻出できます。

第1子、第2子の教育費を預貯金から出した場合、第3子の教育資金は半分以上を投資資産が占めることになりますが、第3子が大学に入るのは8年後で、そこから実際には4年かけて教育費を使っていくことになります。運用期間がそれなりにとれるため、途中で増えることにも期待ができるので、つみたてNISAやロボアドバイザーからの取り崩しがあってもさほど問題ないでしょう。

ご相談者さんは2年以内に正社員への転職も考えているということですし、それが実現したらまた貯蓄額を増やせる可能性もあります。当面は今のペースで貯蓄や積み立て投資を続けてください。年間200万円を確実に貯めることを意識できれば、家族での海外旅行も問題なく楽しめるでしょう。

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