『ジョジョ・ラビット』 ナチスの少年兵士にフォーカスする凄さ

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 第2次世界大戦下のドイツを舞台に、ナチスの教育を受けた少年の成長をコミカルに描いた作品です。ナチス政権下の映画といえば「ライフ・イズ・ビューティフル」をはじめ、迫害されるユダヤ人側に焦点を当てたものが多いと思います。でもこの映画の主人公は、まさにユダヤ人を迫害するナチス側の少年です。

 皆さんは、ヒトラーユーゲントという言葉を知っていますか? ヒトラー青少年団と呼ばれ、10歳から18歳の少年兵士たちが当時育成されました。戦局が悪くなると、日本が多くの若者に特攻させたのと同じように国民突撃隊として戦わせ、多くの少年たちが命を落としました。この説明を聞くとめちゃくちゃ暗いんじゃないかと考えてしまうかもしれませんが、笑えるほど面白いからご安心を! ただ、そんなバックグラウンドの中で洗脳されて育った子供にとっては命をかけて戦えるほどヒトラーがすべて。空想のお友達だって、ヒトラー総統だったんです。空想の中のヒトラーはハイテンションで楽しい人。でも時間が進むにつれて、この空想のお友達がどう変わっていくのかも必見です。

 作中でヒトラーを元気いっぱいに演じたのは、監督・脚本も務めたタイカ・ワイティティ。主人公のジョジョもかわいいし、脇を固めている俳優陣も素晴らしすぎる! 笑いながらふと戦争の恐ろしさも感じる、ユーモアとシリアスの絶妙なバランスが素晴らしい傑作です。★★★★★(森田真帆)

監督・脚本・製作:タイカ・ワイティティ

出演:ローマン・グリフィン・デイヴィス、タイカ・ワイティティ

1月17日(金)から全国公開

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