V長崎 背番号「1」の新守護神 GK 富澤雅也

昨季のリーグ戦デビューから、今季は背番号「1」を任されるまでになったGK富澤=諫早市サッカー場

 2020年シーズンに向けて始動したサッカーJ2のV・ファーレン長崎。チーム躍進のカギを握る成長株にスポットを当てた。
 窮地は人を成長させる。GK富澤は昨季、身をもってそれを知った。
 昨年5月のアウェー金沢戦。1-0で迎えた前半30分すぎ、突然ベンチから声が掛かった。
 「富澤、いくぞ」
 守護神の徳重が接触プレーで負傷退場。プロ入り4年目にしてようやく巡ってきたリーグ戦デビューの舞台は、アクシデントからの途中出場という形で訪れた。
 「危機的な状況だった。初出場の感慨に浸るより、とにかくチームが勝つことを考えた」
 努めて冷静に試合に入り、難しいシュートも普段通りを心掛けて対処。当時リーグ最多得点を誇っていた金沢を、鮮やかに零封してみせた。
 さらにその3日後のルヴァン杯横浜M戦。度重なる好セーブに加えてPKも止めた。チームを連日の勝利に導く活躍で、自らの手でチームの信頼を勝ち取った。以降は徳重と定位置を争うまでの存在になった。
 GKは特別なポジションと言える。レギュラーの座をつかめるのはチームで1人だけ。途中交代もほとんどない。前橋育英高、法大を経てきたエリートでも例外ではなく、2016年にV長崎でプロ生活を開始して以降、ベンチにすら入れない日々が続いた。
 それでも、腐らず、地道に努力を重ねられる才能が富澤にはある。チャンスをしっかりものにできたのは、日ごろの練習から集中を切らさず、常に万全の準備をしていたからこそだろう。
 その姿勢が認められ、今季は背番号「1」になった。だが、だからといって、定位置が約束されたわけではない。「まずはキャンプから、昨年より成長した姿を見せないといけない」。期待が大きくなる中、今やるべきことは十分にわきまえている。

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