新春鼎談 未来につながる音色が響く「としま新時代」の挑戦 (2)

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■相乗効果による有機的な広がり
近藤 この「グローバルリング」は、高野区長の考えた仕掛けの中でもヒット作の一つじゃないかと思います。そもそもここにこれだけの野外劇場ができるとは夢にも考えていなかったですね。以前は池袋駅から東京芸術劇場に行く時の通り道でしかなかったのですが、区民の方々が自由に音楽や舞台を楽しめる場所になりましたね。

小林 今日初めて、東京芸術劇場の建物ってこうなってるんだと思いました(笑)。私は芸術劇場で300回近く指揮をしていますが、この角度からは初めて見たんです。こんなに美しかったんだと驚きました。

区長 東京芸術劇場は豊島区のものみたいな顔をしていますが、東京都のものなんですよね(笑)。だけど東京芸術劇場があるからこそ、この野外劇場の構想が生まれたわけで、両方が相乗効果でロケーションも良くなるし、屋内だけでなく野外でも演奏が行われれば、通行人まで見てくれる。まちが変わりますよ。

小林 豊島区は一番難しいことに挑戦していると思います。なぜなら、日本は外国と気候が違うんですね。パリでもベルリンでも、あの気候だから野外でできるというところがあるんです。そのあたり果たしてうまくいくかどうか、これからの豊島区の挑戦だと思います。

近藤 1+1が2ではなく2.5や3になるという感じで、野外劇場へ来た人が「東京芸術劇場に行ってみよう」となるかもしれないし、逆もあるかもしれない。そうした非常に有機的な広がり、ダイナミックな動きが湧いてくるような感じがします。大成功になること間違いないと思いますね。雨が降ろうが何だろうが(笑)、このダイナミズムで行けると思います。

■見る人・見せる人の区別なく
区長 本当にいろいろな面で挑戦だと思います。ひるまずに、こんなにまちが変わるんだ、変わることができるんだという何かを作りたいですね。豊島区は「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」というキャッチフレーズを掲げています。特定の人だけが楽しむのではなく、みんなが共有してみんなが楽しく笑顔が生まれる、そういうまちを作りたいんです。

近藤 素晴らしいキャッチフレーズだと思います。現代はSNSも普及し、自分も何かやりたいという気持ちがたくさん広がっています。一人ひとりが単に見るだけじゃない、見る人と見せる人という区別がどんどんなくなっていく。それによって文化芸術の力が本当に社会に浸透すると思うんです。そういう意味で「誰もが主役」というのはすごく時宜を得た言葉ですね。

小林 オーケストラも豊島区管弦楽団だけでなく、ほかからも招けばいい。そうするとモチベーションの高まりに通じていくじゃないですか。豊島区以外の22区全部が一緒になって(笑)。単純な考えですが、この「グローバルリング」ならそういうこともできて、いつも多くの人たちが楽しめる場になりますから。豊島区の皆さんにもたくさんアイデアをいただいて、それを我々が独特の還元の仕方で変奏してやればいい。そう考えると、高野区長の夢、豊島区の皆さんの夢が大きくなりますよね。

区長 2020年は豊島区の年になるように、主役になるように…他の区も一緒にと小林先生に言われましたね(笑)、周りも含めながら頑張っていきたいと思います。本日は、お二方にものすごく素晴らしいものを頂いたような気が致します。新春早々、豊島区の将来に光が見えてきました。ありがとうございます。

▲近藤誠一
豊島区文化芸術顧問。豊島区国際アート・カルチャー都市懇話会会長。1972年外務省入省。在米国日本大使館公使、OECD事務次長、外務省広報文化交流部長などを経て、ユネスコ大使、駐デンマーク大使歴任。2010〜2013年に文化庁長官に就任。退官後東京大学特任教授、東京藝術大学客員教授、同志社大学特別客員教授、慶應義塾大学特別招聘教授などを務めたほか、現在、長野県文化振興事業団理事長、京都市芸術文化協会理事長、横浜市芸術文化振興財団理事長、東京都交響楽団理事長、日本舞踊協会会長、企業の顧問や社外取締役などを務める。近藤文化・外交研究所代表、外務省参与(国連安保理改革担当)、(一社)TAKUMI-ArtduJapon代表理事、国際ファッション専門職大学学長ほか。

▲小林研一郎
豊島区音楽監督。東京藝術大学作曲科・指揮科を卒業。1974年第1回ブダペスト国際指揮者コンクール1位・特別賞受賞。ハンガリー国立交響楽団音楽監督、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者、フィルハーモニー交響楽団音楽監督などを歴任。2011年文化庁官賞表彰、2013年旭日中綬章を受章。現在、日本フィルハーモニー交響楽団桂冠名誉指揮者、ハンガリー国立交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者、読売交響楽団特別客演指揮者、群馬交響楽団ミュージック・アドバイザー、九州交響楽団名誉客演指揮者などを務める。2005年スペシャルオリンピックス長野大会を機に、社会貢献を目的とした「コバケンとその仲間たちオーケストラ」を設立。知的障がいがある演奏家を含むコンサートを行い、国内外から大きな反響を得た。