NYでファンに追いかけられた!? ポン・ジュノ監督とソン・ガンホが『パラサイト 半地下の家族』の海外での好反応を語る

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「これまでの韓国映画は四角形だけれど『パラサイト』は六面体」

―ネタバレなく本作の魅力が伝わる3つのキーワードを教えてください。

ポン・ジュノ(以下、P):一つ目は「予測不可能」、二つ目は「最高の俳優たち」が揃っていること。ソン・ガンホさんや他の全てのキャストが物すごいエネルギーを爆発させています。

ソン・ガンホ(以下、S):三つ目はポン・ジュノ監督の「クレイジーな演出」!(笑)

P:(日本語で)そうですね(苦笑)。

―これまでポン・ジュノ監督や名だたる監督たちと仕事をされたソン・ガンホさんから見て、本作の独創的な部分は何だと思いますか?

S:これまでの韓国映画を図形で例えるなら四角形でした。『パラサイト』は六面体と表現したいです。

P:(日本語で)難しいですね(笑)。

―監督ご自身にとっても、本作は完璧で満足でいく作品ではないでしょうか?

P:僕は映画監督になって20年になります。それほど多くの作品を撮ってはいませんが、20年間で7作品撮り、いつも変わらぬ気持ちで撮影しました。ただ、いつもと少し違ったのは、ソン・ガンホ先輩や全ての俳優のアンサンブルが見事だったことでしょうか。この素晴らしい俳優陣の顔触れを撮影していてとても幸せでしたし、「これは生涯に二度とない!」と思えるほどでした。俳優とそれぞれのキャラクターが、ぴったりとハマっていたんです。

―監督は事前に完璧に絵コンテを仕上げられて、入念に準備をされるそうですが、制作プロセスで特にこだわっていることはありますか?

P:僕はしっかり準備ができていないと不安になるので、気持ちを落ち着かせるためにも絵コンテを用意します。映画界には絵コンテが必要なくても素晴らしい監督がいます。例えば、スピルバーグ監督は絵コンテなく映画を作られていると伺ったことがあります。僕は絵コンテを精巧に作って、カメラアングルを決めて、撮影チームと計画通りに撮っていくことが多いのですが、俳優には事前に打ち合わせをすることや必要以上にリハーサルを重ねることはありません。俳優が演じやすい環境を作りたいので、なるべく具体的な注文はしないんです。まずはファーストテイクを撮って、そのあと少し他のアレンジを試してみるくらいですね。本作の撮影では、俳優たちには絵コンテに沿って細かく指示することがないほど、豊かな表現力を持った俳優陣が揃っていたので、現場ではとても楽な気持ちでいられました。

S:ポン監督のことを20年間ずっと見守ってきましたが、昔から何も変わらないと思います。いつもユーモラスで、すべての俳優たちが安心しリラックスして演じられるように気配りをしてくれて、とても居心地の良い環境を作ってくれます。ご本人の性格も撮影現場に表れていると思いますし、だからこそ豊かな映画が生まれるのだと思っています。

「NYの街中でソン・ガンホ先輩を追いかけてくるファンがたくさんいました」

―世界的に活躍するお二人から見てハリウッドや、Netflixのような配信系と、韓国映画に違いを感じることはありますか?

P:昨日が日本の先行公開初日で、舞台挨拶でステージに立ちました。映画館にはソン・ガンホ先輩のファンが大勢いて、プラカードを持っている熱狂的なファンの方もいました。先輩は3年ぶりの来日で、僕と二人で来日するのは『グエムル -漢江の怪物-』(2006年)以来13年ぶりになりますが、ファンの変わらないエネルギーを感じましたね。

先日、二人でアメリカに行って宣伝を行ってきました。北米での公開から2か月経ちますが、興行成績がとても良く、アメリカで公開された外国語映画の歴代トップ10に入る結果のようです。ニューヨークの街中を歩いていると、ソン・ガンホ先輩を追いかけてくるファンがたくさんいました。「何でこんなことになっているのかな?」と本人は謙遜しますけれど。これまでも日本やヨーロッパでは既に知られた存在でしたが、最近では北米での認知度も上がっているようです。

ハリウッドスターを起用した『スノーピアサー』(2013年)やNetflixでは『オクジャ/okja』(2017年)を作りましたが、純韓国映画の『パラサイト』がここまで大きな反響を得ているのは少し皮肉めいているものの、嬉しいことだと受け止めています。どこで作品を作ろうが、何よりも一番大事なものは“物語”です。『パラサイト』の物語が奏でる豊かさ、貧しさ、普遍性、国際性などがヒットした理由だと考えています。

S:米国に行くと、ポン監督の影響力を実感できます。今、ハリウッドの映画界においても最高レベルの映画監督だと言えますね!

P:(日本語で)ウソだよ!(笑)

「主人公は“半地下”で、とても恐ろしい現実を実感するんです」

―裕福な家族と貧しい家族の対比だけでなく、ある家族が絡むことで物語が複雑に加速していきます。第三の家族を登場させることで、どんな化学反応を期待しましたか?

P:この物語の構造を180度変える存在です。貧しい弱者同士が取っ組み合って喧嘩をするシーンがありますが、そこに悲しみが生み出され、苦い気持ちになります。言わば寄生虫同士の戦いですね。ソン・ガンホ先輩が演じるギテクの観点から見ても、様相や感情が様変わりします。ガンホ先輩には「この映画はとてもシンプルで、ギテクの視点で観ると階段を上がっていこうとした男が、階段を下りていく映画」だと要約して伝えました。

ギテクの視点では、眩しい光が燦燦と降り注ぐ裕福な家を見上げていて、下を見ると暗い地下室がある。彼はまさに「半地下」の状態にあるんです。「半地下」は「半地上」でもあるので、まだ光が射す場所にいますが、地下にいる人間からすれば「半地下」も同じカテゴリーと認識される。ギテクはそこで、とても恐ろしい現実を実感するんです。

S:私たちは予測通りに生きていると、安心して暮らしているところに急におかしなものが飛び出してきたら混乱しますよね。そこで赤裸々に真実が見えてくるのだと思います。それが第三の家族の存在だと思います。

取材・文:小西未来

『パラサイト 半地下の家族』は2020年1月10日(金)より公開