近江町の青果、画家が寄せ書き 昭和9年の掛け軸 店主開催の美術展で交流

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 金沢市の近江町市場の店主らによって戦中まで開かれていた美術展「青江(せいこう)会」で活躍した画家らが1934(昭和9)年に残した寄せ書き形式の掛け軸が見つかった。市場で扱われるカブラやアケビなどの青果を当時の有名作家らが分担して描いた。市場の店主が美術作家と深く交流したことが見て取れる資料で、来年発刊予定の近江町市場300年史に収録する。

 青江会は市場の所在地である青草町と近江町にちなんで名付けられた。市場では1926(大正15)年に青果商の店主らが羽咋市の気多大社から祭神の分祀(ぶんし)を受けて、浄瑠璃や漫才などの見世物を行う「大国祭」を営んでいた。この一環で30年から美術展を行うようになった。

 掛け軸は近江町市場300年史の石田順一編集委員長の調査で、初代近江町自治会長を務めた矩繁命(かねはんめい)さんの娘にあたる康子さん(83)=小立野2丁目=が所蔵していることを突き止めた。矩さんの店と自宅はかつて市場付近にあり、終戦間際の45年7月に建物疎開で取り壊されたが、解体を免れた土蔵にあったものを康子さんが保管していた。

 長さ210センチ、幅55センチで「昭和九年大国祭記念揮毫(きごう)」とあり、34年の美術展で制作されたとみられる。

 日本画家の相川松瑞や、二科展で活躍した洋画家の田辺栄次郎、矩さんの親戚に当たる洋画家の矩外亀(かねとき)など、県出身の画家や商店街の関係者らが手掛けワサビやリンゴ、ザクロ、トウガラシなどの野菜や果物計16点が描かれていた。絵の脇に作者の名が記されており、県立美術館と古美術商の協力で作者が判明した。

 康子さんは「商店街が商売ばかりではなく芸術にも力を入れていた証」と話し、石田さんは「市場をあげて美術展をやっていたのは全国的に珍しいと思う。今後も調査を続けていきたい」と意気込む。