ギターはまだ終わってない!80年代ロックのギターリフ勝手にTOP5 1980年 12月21日 AC/DC のシングル「バック・イン・ブラック」がリリースされた日

2017年、ギターの神様 エリック・クラプトンが発した言葉…

2017年9月のことだ。米国の音楽誌『ビルボード』に掲載された、ある記事を見つけて、僕はとても悲しい気持ちになった。エレキギターの売上が減少し続けていることを聞かされたエリック・クラプトンが、笑いながらこう答えたと言うのだ。

「Maybe the guitar is over. (多分、ギターは終わったんだ)」

確かに、それは事実かもしれない。現に、翌18年5月には米国の老舗ギターメーカーであるギブソンが経営破綻に追い込まれた。ただ、それでも僕は、彼にだけはそういうことを言って欲しくなかった。

なぜなら、エリック・クラプトンは、かつてギタリスト界の頂点に君臨するプレーヤーの一人で “ギターの神様” とも言われるような人だったからだ。それに、なにしろ僕は、15歳の時に彼に憧れてギターを始めたのだ。

ヒーローであり花形、なぜギタリストが主役になりえたのか?

思えば4~50年前、ロックファンやバンドを志す若者たちにとって、ギタリストは間違いなくヒーローであり花形だった。初めてバンドを組む時には、いつもギターパートの取り合いになり、あぶれた人が他の楽器(その多くはベース)に移っていった。

では、当時、なぜギタリストが主役になりえたのだろうか。ギターの魅力についてなら、僕は朝まで語りたいくらいだが、強いて一つだけ挙げるとしたら「リフ(Riff)」ではないかと思う。特にロックにおいては、聴き手の記憶に最初に刻み込まれる要素である。

リフとは英語の「Refrain(繰り返し)」から派生したスラングだそうで、一言で言うと「繰り返されるフレーズ」のことだ。古くはチャック・ベリーの「ジョニー・B.グッド」なんかが有名だが、多くは曲のイントロから導入され、その曲を象徴するメインフレーズとなっている。

エレキギターの黄金時代、記憶に残るギターリフ

1960年代に入ると、ギターの音を歪ませた、いわゆる「ディストーション」サウンドが登場し、更に記憶に残るリフが量産された。ザ・キンクス「ユー・リアリー・ガット・ミー」、ザ・ローリング・ストーンズ「サティスファクション」、クリーム「サンシャイン・ラヴ(Sunshine Of Your Love)」、ディープ・パープル「スモーク・オン・ザ・ウォーター」、エアロスミス「ウォーク・ディス・ウェイ」といった曲は、皆さんもイントロを聴いただけで自然に身体が反応するのではないだろうか。まさにこの頃が、エレキギターの黄金時代だったと言える。

ところが、80年代以降はサウンドのデジタル化による影響か、ギターは主役の座から引きずり降ろされてしまう。そこで、今日はそんなトレンドに抗って、80年代にリリースされた楽曲の中から勝手にギター・リフ TOP5を決めたいと思う。僕個人の好みと言うよりは、「誰でも知っている」を基準に選んでみた。

発表!80年代ギターリフ TOP5

【第5位】 スタート・ミー・アップ / ザ・ローリング・ストーンズ

アルバム『刺青の男(Tattoo You)』に収録。このバンドは良いリフをいっぱい持っているが、僕は初めてこの曲を聴いた時に「ブラウン・シュガー」の劣化版としか思えなかった。だが、「新しいことを始める時の景気づけの一曲」として世界中で多用されたので、ストーンズのファン以外にも浸透している。弾いているのは、もちろんキース・リチャーズ。

【第4位】 今夜はビート・イット(Beat It)/ マイケル・ジャクソン

アルバム『スリラー』に収録。この曲はエドワード・ヴァン・ヘイレンのギターソロが有名だが、リフを弾いているのが TOTO のスティーヴ・ルカサーだということは意外に知られていない。とにかく、この時代に生きた人なら誰でも、イントロを聴いただけで何の曲か判るはず。

【第3位】 マネ-・フォ-・ナッシング / ダイアー・ストレイツ

アルバム『ブラザーズ・イン・アームス』に収録。このバンドの中心は、リードボーカル兼リードギター兼作曲者兼プロデューサーのマーク・ノップラーで、このイントロも彼が弾いている。ピックを使わない指弾きが特徴。「いかにも80年代」なビデオクリップでも有名だ。

【第2位】 スウィート・チャイルド・オブ・マイン / ガンズ・アンド・ローゼズ

アルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』に収録。このリフは、ギタリストがいかにも運指練習で弾きそうなフレーズだ。実際、スラッシュが練習中に弾いていたのを、たまたまボーカルのアクセル・ローズが見つけてイントロに採用することになったらしい。

【第1位】 バック・イン・ブラック / AC/DC

マイケル・ジャクソン『スリラー』に次いで、全世界で史上2番目に売れたアルバム『バック・イン・ブラック』に収録。この曲でリフを弾くのは、ヤング兄弟の弟アンガスだ。彼がブレザー、半ズボンにランドセルを背負ったスクールボーイスタイルでギブソンの SG を弾いている姿は、ハードロックファンでなくとも記憶にあるのではないか。文句なく80年代No.1!

Billboard Chart & Official Chart
■ Back In Black / AC/DC(1981年2月21日 全米37位)
■ Start Me Up / The Rolling Stones(1981年9月12日 全英7位、10月31日 全米2位)
■ Beat It / Michael Jackson(1983年4月23日 全英3位、4月30日 全米1位)
■ Money For Nothing / Dire Straits(1985年8月10日 全英4位、9月21日 全米1位)
■ Sweet Child O' Mine / Guns N' Roses(1988年9月10日 全米1位、89年6月17日 全英6位)

Billboard Chart&Official Charts(Album)
■ Back In Black / AC/DC(1980年8月9日 全英1位、12月20日 全米4位)
■ Tattoo You / The Rolling Stones(1981年9月12日 全英2位、9月19日 全米1位)
■ Thriller / Michael Jackson(1983年2月26日 全米1位、3月5日 全英1位)
■ Brothers In Arms / Dire Straits(1985年5月25日 全英1位、8月31日 全米1位)
■ Appetite For Destruction / Guns N' Roses(1988年8月6日 全米1位、1989年7月22日 全英5位)

カタリベ: 中川肇

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