パリ協定の本格始動で熱視線、「LNG関連銘柄」の有望株はどこか

地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」が、今年から本格的にスタートします。低炭素社会の実現を目指す中で、クリーンエネルギーとして注目されているのが液化天然ガス(LNG)です。

そこで今回は、LNGを取り巻く現状を踏まえたうえで、今後の活躍が期待される関連銘柄について考えてみます。


なぜLNGが注目されているのか

LNGはメタンを主成分とする天然ガスをマイナス162℃まで冷却し、気体から液体へ凝縮したものです。主に火力発電の燃料に使用されますが、同様に火力発電の燃料として使用される石油や石炭に比べ、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないことが特徴です。

最近では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーがCO2を排出しないということで注目されていますが、天候や季節などに供給力が大きく左右されるという短所があります。

一方、火力発電は燃料があれば必要な時に必要な量の電力を供給できるという長所から、2011年の東京電力・福島第1原子力発電所の事故以降は、わが国の電力供給の約8割を担う主電源となっています。

中でもLNGは、石油や石炭に比べてCO2だけでなく、光化学スモッグの原因となる窒素酸化物(NOx)の排出量も少ないうえ、酸性雨の原因となる硫黄酸化物(SOx)を排出しないことから、環境に優しいクリーンエネルギーとして今後も需要拡大が期待されます。

日本がLNG大国となった歴史的経緯

日本は資源が乏しいため、原油やLNGなど資源の大部分を輸入に依存しています。

産出国と陸続きであればパイプラインを使って気体の状態で天然ガスの供給を受けることが可能ですが、日本は東アジアの島国という地理的制約があり、海底に敷設しない限りパイプラインでの輸送は不可能とみられます。

また、海底にパイプラインを敷設するには、膨大な資金が必要になります。このため、気体の状態では長距離輸送が困難な天然ガスを冷却し、体積が600分の1に凝縮されたLNGにしたうえで、タンカーによる海上輸送で効率良く運搬する方法が採用されています。

LNGは1940年代に米国で液化技術が確立し、日本には1969年11月にアラスカから初めて輸入されました。当時は、世界でLNGを生産または輸入する国はわずかでした。それから50年余りが経過し、現在では18以上の国・地域がLNG輸出を、25以上の国・地域がLNG輸入を行っており、世界的にも重要な資源の1つとして認知されています。

LNGシフトが理にかなっている理由

日本は現在、世界一のLNG輸入国として市場の拡大を牽引しています。財務省の貿易統計によると、2018年のわが国のLNG輸入量は8,290万トン。そのうち、豪州とマレーシア、カタール、ロシア、インドネシアの上位5ヵ国で全体の74.5%を占めています。

一方、同年の日本の原油輸入国の上位はサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェート、イランです。この5ヵ国で全体の83.9%をカバーしています。

両者を比べると、原油の輸入国は中東地域に集中しているのに対し、LNGの輸入国は世界各地に比較的分散しています。また、輸入上位5ヵ国に占める依存度も、LNGは原油に比べて低くなっています。

1970年代の2度の石油ショックで経験したように、日本は原油の供給が中東情勢の影響を受けやすい状況にあります。足元では、米国とイランの対立で原油の輸入に支障をきたす可能性があり、輸入先が世界各地に分散するLNGへシフトすることが、資源を安定的に確保するという観点からもメリットがあると思われます。

LNG関連の有望銘柄はどこか

LNG関連企業では、大手総合商社の三菱商事(証券コード:8058)に注目しています。同社は1969年に日本初のLNG輸入に関与して以来、LNGの生産・輸送・トレーディング・輸入代行業務に携わってきました。

海外では、同年にブルネイ政府などと共同出資でブルネイLNG社を設立し、天然ガスを液化するプラントの建設やLNG船着桟設備、付随するパイプラインなどのインフラ整備を開始。1972年にブルネイからわが国へLNGが初めて輸出され、日本のLNGの安定供給に貢献しています。

直近では、海運大手の日本郵船(9101)との合弁会社を通じて、米国のキャメロンLNGプロジェクトに参画。このプロジェクトはLNGの年間生産規模が1,200万トンで、そのうちの400万トンを長期契約で引き受け、日本の電力・ガス会社などに供給する予定です。すでに昨年5月から生産を開始しており、今後の業績への貢献が期待されます。

このプロジェクトには、総合商社大手の三井物産(8031)も参画しており、三菱商事と日本郵船の合弁会社と同様に、年間400万トンのLNGを長期契約で引き受けます。

このほか、世界各国でLNGプラントを設計・建設した豊富な実績を持つ、エンジニアリング大手の日揮ホールディングス(1963)、LNGを貯蔵するタンクを製造するトーヨーカネツ(6369)などにも注目しています。

<文:投資情報部 碓氷広和>

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