五島市に冬日向

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 寒気の中の日差しを「冬日(ふゆひ)」「冬(ふゆ)日向(ひなた)」などと言うらしい。寒さが厳しくなるほど、日差しがやけにまぶしく、柔らかに感じることがある▲人口流出に悩み、寒空に覆われる離島に差した、明るい「冬日向」かもしれない。五島市で昨年、市内に転入した人の数が転出した数を上回り、「社会増」になったという▲旧福江市と5町が合併したのは2004年で、その前から島外への流出が続いていた。出生の数が死亡数を下回る「自然減」は例年並みらしいが、「社会増」はとりわけ離島の自治体で異例といえる▲33人ではあるが、「流出に歯止めがかからない」といわれる中で、目を見張る「社会増」に違いない。国境離島新法(17年施行)に基づく事業で雇用が生まれ、流出が抑えられたり、都市部から移住する人が増えたりしたためだという▲10年ほど前、本県の離島出身の人に聞いたことがある。国の離島振興策といったら、長いことハード面の整備に偏りがちで「生活重視」に転じていない、と。いくらか陽光が差し、新法という木の幹に枝葉が付きつつあるのだろうか▲待てば冬日が差すわけではなく、五島市は移住を促す独自の策も打っている。県内で「社会増」の自治体はほんの一部だが、寒天の「晴れマーク」をどうにか、少しずつでも増やしたい。(徹)