地名を防災の道しるべに 土地の特徴を読み方で推測

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「地名から昔の地形が推測できる」と話す太宰さん=宮城県大崎市の名蓋川決壊地点

◎研究家・太宰幸子さんと被災地大崎を歩く

 自分たちが住む土地の特徴や過去に起きた災害を知っておくことは「次」への備えにつながる。「宮城県は災害に関する地名が多く、防災の道しるべになる」と話す県地名研究会会長の太宰幸子さん(76)=宮城県大崎市=と共に昨年10月の台風19号豪雨で被災した大崎地方を歩いた。 (大崎総局・喜田浩一)

■湿った土地

 大崎市中心部から西南へ約5キロの古川矢目(やのめ)地区。水田地帯を名蓋(なぶた)川が東に流れる。台風時に付近の水田や住宅を浸水させた決壊地点だ。川は2015年9月の宮城豪雨でも決壊。地元住民らは、いずれの水害でも自主避難所を開いて人的被害ゼロにつなげた。

 太宰さんは以前から地域の旧家などを訪ねて由来を調べてきた。「矢目は元々ヤヅ(谷地)ノメと呼ばれていた可能性が高い」。谷地は湿った土地を意味し、川の流れがつくる低湿地だったことを示すという。

 決壊地点から南東に向かって水田がえぐられ、水が流れた跡がある。その先の小字名は猪狩(いがり)。古語の「イカル」が基になっており、過去の氾濫を示唆する。

■アイヌ語も

 さらに水が流れた方向は新沼地区。太宰さんは「かつて川は猪狩から新沼方向へ流れていたはず。大きな洪水で流れが変わったり、人工的に流路を変えたりした可能性があり、古い川筋が取り残されて沼ができたので名付けたのでは」と推理する。

 台風19号によって県北では吉田川周辺が大きな被害を受けた。決壊地点の大郷町粕川も災害地名という。アイヌ語で川を渡れる場所をカスイと言い、「川砂がたまりやすく水害が起きやすかったのではないか。逆に渇水期には歩いて渡れたのだろう」。

 下流で甚大な冠水被害を受けた大崎市鹿島台志田谷地のシダとヤチは両方とも湿っぽい場所を意味する。住民から「冠水期間が長く、水の重みで住宅が沈下した」との嘆きが聞かれ、地盤の特徴が今に引き継がれている可能性がある。

■漢字 後から

 太宰さんによると、地名の意味を考える上で漢字より読み方が重要だという。「字の書けない人が暮らしに根差す地名を付け、後から漢字を当てた場合が多い」。猪狩もイノシシを狩ったという意味ではない。

 宅地開発などによって地名が変更されるケースもあるが、「周辺も参考にすれば過去の災害や地形が推測できる」と太宰さん。地名を先人からのメッセージと受け止め、今後の防災に役立てたい。

<災害を知らせる地名の例>

【水 害】 うめ(梅田、梅木、梅ノ木など)=埋まった所などの意味 つる(鶴ケ埣、鶴巻、鶴巣など)=川の流れが大きく蛇行する場所 こめ・よね(米倉、米ケ袋など)=川が押し流す土砂や砂の意

【崖崩れ】 あら(荒川、荒砥沢、荒沢など)=荒れる、暴れるの意 くり(栗生、栗木など)=崩れる、えぐられるの意 はぎ(萩野、萩平など)=地滑りなどで地肌が剥ぎ取られる意