今回は、政治家のブラックすぎる日常……。実情を知ると、いくら高給でもそのうち国会議員のなり手がいなくなってしまいそうなほど過酷。
本来なら国が進める「働き方改革」の先頭に立って、自ら働き方を改革してその姿を見せるべき政治家が『休みたくても休めない』理由とは?
選挙ドットコムちゃんねる第8回では、一般の人は知らない政治家の「政治家は辛いよ」話について、深く切り込みます。
その模様をダイジェストでお伝えしていきましょう。
「年末年始の政治家はつらいよ」ってホント?
乙武 「さあ今回も始まりました選挙ドットコムちゃんねる!」
千葉 「今回のテーマはこちらです。『年末年始の政治家もつらいよ』ということですが」
松田 「これはね本当につらいんすよ!僕、去年かるく絶望したことがあって、これと関連するんですけどね。
年末にある政治家向けの選挙の勉強会で講師をさせていただいたんですけど、その方たちが次の選挙に向けて勝つためにどのようなことをしたらいいかってことでお話ししたんですが、やっぱりね勝つために少しでも確率を高めていく方法として、ベタな地上戦とかですね、名簿整理して、後援会作って、地元回って、みたいなことを言わざるを得ないわけです。
地元を回るとなると、この年末年始には忘年会があって餅つきや新年会、賀詞交歓会がある。そういうところにこまめに顔を出して、自分の名前や政策を覚えてもらうということをやらないとダメですよ、ってお話しするわけですけど。
これってずっと変わらない話で、今、これだけ働き方改革って言っている時代にもですね、政治家にこれだけの負担を強いないと選挙に勝てないっているのは、なんとかならないものかって、選挙プランナーとして本気で考えこんじゃった訳です」
乙武 「働き方改革の旗印である議員になるには、働き方改革なんかしてちゃなれないわけだ」
松田 「14年間、この仕事をやってますけど、公職選挙法という法律の中で許されていることをやっていかなくちゃいけないというしばりがあるんですが、なかなか本質的に選挙のやり方を大きく変えるってことが、まあイノベーションですね、全然起こせていないことに、大変反省したというか、でも出口が見えなくて軽く絶望したというか……」
乙武 「絶望ってそれかあ。でも確かにどーすりゃいいのってところだよね。
まあ、難しいなあって思うのは、そこに対してある意味イノベーションを起こしたのが、N国の子、立花さんだと思うんですけど」
松田 「あー、そうか」
乙武 「じゃああれを公的できるかって言うと、それもちょっと抵抗がある」
松田 「ありますね。それにあのやり方は長続きしない。悪名はしょせん、悪名ですからね。
そうではない形で、何かできないかをすごく考えてはいるんですが」
千葉 「世の中の方は、今の時代年末年始はお休みっていうのが当たり前ですよね。
なのに政治家さんは辛いことが多いって言うのは、そういう部分もあるからなんですね」
松田 「そうですね。年末年始は本当に休めない」
千葉 「こちらは音喜多駿衆議院議員が、都議時代につづったブログから引用させていただいているんですが、年末年始の活動内容が記されていたものをまとめたものです。
政治家の主な年末年始の活動 その1
・商店街への挨拶回り
・支援者個人宅への挨拶回り
・町内化や自治体が主催する夜警への参加(「火の用心、カチカチ」というアレ)
・消防団の詰め所への激励回り
乙武 「はぁ、忙しいね」
千葉 「これだけじゃないんです」
政治家の主な年末年始の活動 その2
・神社にてお茶くみ、鐘撞きなど
・神社回り、街頭演説&チラシ配り
・支援者の個人宅に挨拶回り
・商店街への挨拶回り
乙武 「支援者の個人宅に挨拶ってさ、年末も年明けすぐも2回もやるわけ?」
松田 「まぁ、どちらかにしたりする人、両方やる人、ケースバイケースですね」
乙武 「でも来られる方も迷惑じゃないのかな? 嬉しいのか?」
松田 「ん~まぁ人によるかな。後援者のとくに親しい方とか、そういうところには2回行くケースとかね。
せっかく休んでいるところに来てくれるなという方もいれば、わざわざ来てくれてと好意的に取る方もいらっしゃるわけで、本当にそのあたりは難しいし大変です。
神社回りなんかもね、街頭演説やチラシ配りって書いてますけど、まさに年末年始の大晦日や新年の初詣というタイミングには神社に人がたくさん並ばれていますよね。
そういうたくさんの地元の人のところに立って、挨拶をすると。極寒の中でね、やるわけですよ、ずっとコレを」(笑)
乙武 「でも地域差もあるんじゃないですか? 東京の都心部なんかだとご挨拶に行こうにも、先方が実家に帰っておうちにいないなんて方もいるだろうし」
松田 「そうですね。ただ東京の中でも、もともとの地元の商店街みたいなところがある選挙区も多いので、そうした地元の方とのつながり関係を回ることも多いです」
ライバルもやるから休めないんなら、いっそ談合して一斉にやめちゃえば?
千葉 「これって、政治家としてこれをやるべし的なルールがあるわけではないんですよね? 自然発生したものなんですか?」
松田 「そうですね。ルールはまったくないんですけど、相手候補が休まずにやっているとこちらもやらざるを得ないとなって、やめられないんですよね。
とにかく人の多いところ、人が多い時間にいかに露出していくかということを考えますから、年末年始も人が集まる神社だとか、新年会の集まりだとか、そういところにこまめに顔を出して、あいさつ回りするみたいなことは、一種のセオリーになっちゃってますね。
しかも年末年始は議員としての公務は少ない期間です。
国会は閉会しているし地方の議会もやっていないので、その間に自分の地元を回って顔を売らないと、みたいになってよけい年末年始が忙しくなるというところもありますね」
ここで乙武氏から、斬新すぎる解決策の提案が!
乙武 「これさ、談合はできないの?候補者みんなで集まって『抜け駆けなしな。全員で一斉にやめようぜ!』みたいなさ」(爆笑)
松田 「いいと思いますねー!僕、これ公選法にしたいんですよね。年末年始は活動中止、みたいな。政治活動禁止、とかにしちゃうと憲法違反になっちゃうから難しいか……。
まぁでも何かこう疲弊しない仕組みを作ったほうがいいとは思うんですよね」
乙武 「だってさ、いつ休むの? 年末年始も休まずに?これじゃ不祥事で国会サボるときくらいしか、休むときないじゃん!」(爆笑)
松田 「本当に下手したら1年間に完全な休日というのは1日、2日しかなかったって言う話は、実際国会議員の方からもよくお聞きするはなしなんですよね」
乙武 「もちろんそれに対してすぐ出る声としては『国家議員なんて公僕なんだから、フルで働いて当たり前だろ』っていう予想はつくけど」
松田 「いやいや、それは無理だろうと」
乙武 「人間だから優れたパフォーマンスを発揮するには、適度な休息も必要だと僕は思うんですよ」
松田 「おっしゃる通り。すごく難しですね。今はSNSの時代で、これってすごく感情のツールなんですよね。
何食べた、どこに行ったってあげるのが共感されたりするんですけど、政治家系の話になると『税金で食べてる』『高い年金取りやがって』みたいな、本当に感情的な声に共感が集まりやすい。
そうなるとやっぱり政治家は休みにくいわけですよ。でも政治家も、私たちやあなたと同じ人間ですからね。休息は必要なんです。
だけど有権者は政治家の休息をサボってると取っちゃうし、政治家自身も次の選挙を考えるとどうしても不安になっちゃうからやらざるを得ない、年末年始も活動しちゃうっていうところがあると思います」
千葉 「やっぱり初詣に行った神社にそうやって挨拶に来ている政治家さんがいたら『ああ、がんばってるんだな』っていう印象には、なりますよね」
松田 「そう思ってもらえるなら、まだやっている政治家も報われるんですけど、なかには『うるせーな』とか『じゃまだな~』『売名行為なんじゃないの』と感じる人も、中にはいるでしょうしね。つらいです」
千葉 「一生懸命活動しても100%ポジティブな受け止めを必ずしもしてもらえるとは限らないってことですね」
全国区の比例代表候補は、日本国中どこにも年賀状を出しちゃダメ
乙武 「ここまでやるべき活動リストを見て来たけど、逆に年末年始やっちゃいけないことリストっていうのもあるんですか? たとえば公選法的に」
松田 「いろいろありますね、そのあたりがこれですね」
政治家 年末年始のNG行為
・お歳暮を贈るのはNG
・忘年会でおごるのもダメ
・年賀状を送るのもダメ
乙武 「お歳暮はやっぱりダメなんだね」
松田 「そうですね、カニとかメロンとか贈っちゃいけません」(爆笑)
乙武 「送った人はどうしているんだろうね?」
松田 「どうなんですかね。失踪されているみたいですけど。あと忘年会でおごるのもダメ」
乙武 「年賀状もダメなんだね」
松田 「そうなんです。これがね『挨拶状の禁止』というのがあって、年賀状に限らず暑中見舞いや時候の挨拶以外にも、欠礼状(いわゆる喪中はがき)もダメという」
乙武 「それはどうして?」
松田 「これを認めちゃうと、年賀状という名目で選挙区の有権者全部に郵送するケースとかが出てくるから一律禁止ということなんですね。
過剰競争にならないようにという趣旨ではあるんですが、基本的に選挙区内にある者に対しては年賀状を送ることはできないと。選挙区外だったらいんですけどね」
乙武 「じゃあ全国比例の候補者は、国内に住んでいる人誰一人にも出せないってこと?」
松田 「出せないです」
乙武・千葉 「はあああぁ?」
松田 「まあ一応、例外として認められているのが、答礼のための自筆のものはOKだと。手書きでありがとうございますと挨拶して返すのはOK。
ただこれも細かくて、手書きしたものをコピーして送るのはダメ、プリントしたものはダメだとか。手書きと限定することで枚数が制限されるからだと思うんですが。
ただ、今の公選法って一休さんのとんちみたいな部分があってね『このはしわたるべからず』で真ん中を通ればOKみたいな。
で年賀状がダメなら何が遅れるかってことで、新年号の活動報告みたいなものを送るわけです」
千葉 「それは、はがきでですか?」
松田 「はがきに印刷する人もいれば、チラシ形式のものを封書で送る人もいます。でもいわゆる年賀はがきというか、お年玉付きのはがきはダメ。
一般はがきに『活動報告 号外』と書いて新年の挨拶をしつつ、新年に当たっての政治活動や今年の計画、昨年の活動報告を送るというね。
あくまで政治活動の一環として送っていますというスタイルで。
その最初の部分に新年あけましておめでとうございますと書いてあるくらいだったらいいよ、みたいね。そういうグレーゾーンというか知恵比べ的なところがたくさんある」
形骸化して抜け穴・グレーゾーンだらけの公選法は一度廃止して、新たに1から作るべきでは?
乙武 「ややこしいな!」
松田 「そう非常にややこしい。公選法は、どうでもいいような無駄な規制ばっかりなんです。本当に、廃止してほしいと思う」
スタッフ―――‐―完全に廃止、ということですか?
松田 「僕はね、以前は抜本的に改正すべきって主張していたんだけど、今は現行のものをあちこち改正するより、もう1度、完全に廃止にして、まったく別の法律を1から作ったほうがいいんじゃないかと思いますね。
そもそも公選法って1950年に『男子普通選挙法』と一緒にできた法律をベースにしてずーっとやってきていて、めちゃくちゃ古いんですよね。まったく時代に即していない」
乙武 「でも今の物品送っちゃダメ、おごっちゃダメは、あったほうがいいんじゃない?」
松田 「それはもちろんあったほうがいい。そういうところはしっかり制限したほうがいいですが、いわゆる政治活動と選挙運動、事前運動当たりのややこしいところはね、変えたほうがいいんじゃないかと。
一般の人にはよくわからないし、しかも怖いじゃないですか。ささいなことで『これって違反になるかも』って。一般の有権者が違反になるケースって言うのは、買収以外ほぼなしでいいんじゃないかと思うんですよ」
乙武 「僕は何を防ぎたいかって、お金を持っている候補者が金に任せて票を買うような行為につながることがNGなんだと思うんですよ。
その大原則を守るために、何をOKにして何をNGにするかってところを、もう1度線微視直すのがいいんじゃないかと思いますね。
時代が変わっていくと、とくにインターネットみたいなものが普及することで法律やNGの線引きもやはり変わってくるだろうし」
千葉 「公選法を実際に見直そうって、動けるものなんですか?」
松田 「いや、動けないんですよね。政治家の方からすると優先順位は低いんですよ。今のルールで勝ち上がってきた人が国会で議論するわけですから、本人たちは別に不都合は感じていないというか。
これは話すと長くなるので、また別の機会にお話ししたいですが、やっぱりね、国民主権というのがあって、主権者である国民の意思の発露があるわけですよね。
それがいかにちゃんと豊かに反映されるかという視点を持って考えるべきだというのは、すごく思います」
乙武 「僕個人の感想で言うとね、こんなに細かく決めていたって、破っている奴が何も罰せられないなら作る意味ねーじゃんって思いますね」
松田 「そうなんですよ、法治国家崩壊ですよね」
乙武 「そこをちゃんとね、ルールを破ったらこういう罰を受けるよっていうのがないと、守っている人がバカを見ちゃいますよね」
松田 「それは現状で選挙に関わっていると、すごくしんどいところなんです!」
乙武 「やったもん勝ちは許したくないですね」
松田 「そこは今のルールは今のルールとしてきちんとまもって選挙はやるべき。きっちり取り締まってほしいですね」
千葉 「詳しいことは、松田馨さんのこちらの本に書いてあります」
松田 「これ、重い、でかい、高い本ではあるんですが…」
乙武 「でも当事者関係の方からは、評判いいんですよね、この本」
松田 「買ってくださった方に何か言われたことはないんですけど、買う前に高い(定価12,100円)という声は、よくいただきます…。
ネット選挙のやり方を含め、分厚いけどフルカラーで図解して情報たっぷりなんで、ご興味のある方はぜひご一読ください。(笑)
そして乙武さんは三浦瑠麗さんとの本が出たんですよね。「それでも、逃げない」(文春新書/880円)。買わせていただきましたよ!」
乙武 「はい、いつかこの番組にも三浦さんにご登場いただけると嬉しいですね、オファーしてみましょう。ということで今回は、ここまでです。ありがとうございました。次回もお楽しみに!」
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