北海道食の王国~鹿部軽石干し・網走ちゃんぽん・旭川のイチゴ~

日本経済新聞社紙面連動

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日本経済新聞社との紙面連動企画「北海道 食の王国」の拡大版。
日本経済新聞が土曜朝刊の北海道経済面で食の最前線を紹介するコーナー「北海道 食の王国」を「けいナビ」でも紹介するという企画。

まずは道南。函館から車で約1時間の場所にある、鹿部町。漁業が盛んなこの町に2年前に登場した、新しい特産品が「軽石干し」。ふっくらした身と、凝縮したうまみ身が特徴だ。手がけているのは、町内の水産加工会社=イリエ船橋商店。5年ほど前、前社長の船橋敦子さんが、偶然、ある光景を目撃したことが、開発のきっかけだった。

自宅前の土を掘る元郵便局長の鈴木さん。すぐに軽石が出てきた

当時の郵便局長、鈴木昌志さんが軽石を細かく砕いていた。聞くと、軽石で干物を作るのだという。1929年、大噴火で鹿部町全体が軽石に覆われた。鈴木さんは九州などで作られている、火山灰を使った「灰干し」をヒントに、軽石の有効活用を研究していた。鈴木さんが地面を掘ると、すぐに軽石が出てくる。軽石に覆われた土地では作物が育たず、農業ができない。つまり「厄介者」とされてきたのである。

鈴木さんのアイデアを聞き、船橋さんはすぐに軽石干しづくりに着手した。作り方はこうだ。きれいに洗った魚を、透水性セロハン、キッチンペーパー、布、そして粒状の軽石で「サンドイッチ」のように挟み、途中で塩を振る。軽石に空いている無数の小さな穴で、魚の水分を程よく吸い取るのがポイントだが、最初はなかなか干物にならなかったという。試行錯誤を繰り返す中、函館市の道立工業技術センターの協力を得たことで突破口が開いた。

透水性セロハン、キッチンペーパー、布、軽石で挟み、塩を振る
軽石に空いている穴が魚の水分を吸い取る

魚の水分を10%抜くことがポイントだという。実験を繰り返した結果、ホッケやイワシは18時間、カレイは24時間、冷蔵庫で熟成させるといいことも分かった。減塩を意識して、塩分濃度は0.8%が目標。全体にまんべんなく塩を振ることが大切で、これがなかなか難しいという。船橋さんは毎回、出来上がった軽石干しの一部の重量と塩分濃度のデータを取っている。出来上がりにムラのない商品を作るためだ。

地元の道の駅や、デパートの催事で販売。売れ行きは上々という。ホッケやカレイといった定番のほかに、キンキやサバなどの軽石干しにも挑戦している。軽石によって独特のにおいも抑えられるという。

続いて、網走の「網走ちゃんぽん」。

この網走ちゃんぽんに欠かせないのがかまぼこ。網走でかまぼこを作り続けて約60年、今は3代目のご主人が切り盛りする、大谷蒲鉾店。20種類ほどのかまぼこを作っている。網走市は、水産練り物の原料となる「冷凍すり身」発祥の地。かつては市内にたくさんあったかまぼこ店だが、今は3店だけ。

大谷蒲鉾店の大谷義則社長は「ちゃんぽんを通してかまぼこを食べて、買ってほもらえるとうれしい」と話す。

網走ちゃんぽん専用の麺を作っているのは、美幌町のマルワ製麺。 なぜ、網走市内ではなく美幌町で麺を作っているのか。網走ちゃんぽん専用の麺は、当初、市内唯一の製麺所が作っていた。しかし去年1月、マルワ製麺に「しばらく麺を作れない。迷惑をかけられないから引き継いでほしい」と連絡が。網走ちゃんぽんの麺を食べるどころか、見たこともなかった窪和広社長。研究会メンバーに麺の仕様を確認して、4日ほどで作りあげた。

マルワ製麺の窪社長

窪社長は「網走ちゃんぽんを繰り返し食べてもらって、網走産の小麦のおいしさを知ってもらい、できれば本州などの遠い地域も広げたい」と話す。

ところで、なぜ網走で「ちゃんぽん」なのか。網走ちゃんぽん研究会の石原基会長によると、「練り物の消費量が減る中で、青年会議所のメンバーが、日本一の長さの焼きちくわを作ろうと取り組んだ」という。同じ取り組みが、長崎県雲仙市でも行われていたことから、「焼きちくわ日本一対決」がスタート。交流が続く中で、雲仙市の名物料理「小浜ちゃんぽん」を網走の食材で作ってみては?という話が出たことで、網走ちゃんぽんが誕生した。2012年には研究会が発足。市内の飲食店と組んで、商品化にこぎつけた。

地元のスーパーには、麺・かまぼこ・スープがセットになった商品も販売されていて、特に冬は、100食以上売れる月もあるという。市内で網走ちゃんぽんを提供している店は6軒ある。「網走ちゃんぽん」のルールは3つ。①網走市内にあるかまぼこ店3店舗のうち、どこかのかまぼこを使う②網走産小麦を使った特製麺を使う③オホーツク海や網走湖で獲れる海の幸を使ってだしを取り、そこに長崎県小浜から仕入れたスープを合わせること。

お好み焼き店では、一風変わった「焼きちゃんぽん」を提供

商店街のイベントに出店するなど、市民の知名度は上がっている。網走ちゃんぽん研究会の石原会長は「将来的には『網走の家庭食』の一つにしたい」と話す。

最後は、旭川市東鷹栖のイチゴ「瑞の香」。

生産する「のなか農園」のビニールハウスでは、夜明け前から収穫作業が行われていた。野中剛さんは、コメ農家の3代目。20年前、父親から「自分で何か作ってみたら?」と言われたことがきっかけで、単価の高いイチゴの栽培を始めた。

野中さんは「何も知らないところから始めた。つぼみが出てきて『これは何か』と聞きに行ったほど」と振り返る。ウェディングケーキ用として、冬と春だけイチゴを作っていたが、ホテル側から「イチゴは1年中使う」と言われ、通年栽培に挑戦することに。目指したのは、ケーキに乗せたときに転がりづらい、すらりとした形と鮮やかな赤色、そして「スポンジと一緒に切れるやわらかさ」。

様々な品種を取り寄せて試行錯誤を繰り返した末に生み出したのが「瑞の香」だ。2011年に品種登録。北海道の個人農家がイチゴの品種登録をした初めてのケースとなった。瑞の香の特長である「食感のやわらかさ」は、流通の上では弱点にもなる。傷つきやすいからだ。そこを補うため、二重構造の特殊なパックを使っている。

特殊な二重構造のパック

野中さんは今年、2つの新しい品種の試験栽培を始める。一つは、瑞の香よりもっと色鮮やかなイチゴ。もうひとつは、瑞の香より増やしやすいイチゴだ。来年、品種登録に向けた申請を目指す。

品種改良にご当地グルメ。個人・地域が工夫を重ねる「食」を紹介した。
番組の最後は鈴木ちなみさんの一言。コメントのフルバージョンはYouTubeなどのSNSで公開中。
(2020年1月18日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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TVh「けいナビ」