バスケス・バイロンが語った、今年JFLに参戦するいわきFCの強みとは?

福島のJヴィレッジで昨年11月に開催された、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2019(以下、地域CL)の決勝ラウンド。

1次ラウンドを勝ち抜いた全国の強豪4チームによる総当たり戦は、いわきFCと高知ユナイテッドSCが1位2位となり、2020シーズンのJFL昇格を決めた。

ついにJリーグのすぐ下のディビジョンへ到達したいわきFC。『スポーツを通じて、いわき市を東北一の都市にする』というミッションを掲げる彼らに大きな注目が集まっている。

地域CL優勝に大きく貢献した選手の一人が、2019シーズンに加入したバスケス・バイロン。決勝ラウンドでは初戦の高知戦で試合を決定づける3点目を決めた。

昨年1月、全国制覇を成し遂げた青森山田高校では、切れ味鋭いドリブルで優勝に大きく貢献。そんな彼が卒業後の進路として選択したのが、いわきFCへの加入だった。

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いわきFC編の第2弾では、チリ出身の19歳に昨年秋に行ったインタビューを振り返る。

(取材日:2019年8月28日)

――まず率直に、高校卒業後にいわきFCを選んだ一番の理由は何でしたか?

環境や施設です。日本の中でもトップクラスの施設で最新のトレーニング設備が整っています。食事面もそうですし、日本にはなかなかないクラブだと思いました。

――加入から半年以上が経って、自分の中ではどのあたりが変わってきたと感じますか?

一番変わったのは体の大きさですね。あとサッカーでいえば、スピードが少しつきました。相手がボールを奪いにきたときに当たり負けしない体になってきたところは一番変わったと感じます。

――具体的に体のどの部分が大きくなりましたか?

胸と腕ですかね。ドリブルで相手選手を押さえる際に腕を使うのでそこは実感します。

スピードに関しては長い距離よりも、5メートル、10メートルですね。自分は瞬間的なスピードで抜くタイプなのでそこの速さは大事ですし、さらに強さも備わってきたので、一瞬で相手を置いていける自信がより付いてきました。

――練習から様々なデータを採取し、自分でもすぐ確認できる環境がいわきFCにはあります。データを見て自身ではどのようなことを考えますか?

素直に「もっと良いデータを出したい」と思います(笑)。常にもっといけるんじゃないかと考えますし、今に満足せず、向上心を持って様々なことに取り組めます。

サッカーなのでデータがすべてではないんですがやはり参考にはなりますし、客観的な数字を見ることは自分のコンディションを把握する上でも役に立ちます。そういうメリットは感じますね。

――いわきFCは独自のデータとして、「試合中に倒れなかった回数」をカウントしていますね。

田村(雄三)監督に試合前によく言われる言葉が「いいプレーしろよ」とかではなく、「絶対に倒れるなよ」なんです。

自分のプレーのくせでもあるんですが、倒れる必要がないのにオーバーに倒れることがありました。ただ、最近は意識しているというのもありますが倒れることが少なくなって、監督にも1、2週間くらい前に「倒れなくなったね」と言われたのでそれは素直に嬉しかったです。今後も倒れないよう、トレーニングから意識していきます。

――今現在、自身の一番の強みはどこですか?

個で打開できるところです。ドリブルで抜いて決定機を作ったり、シュートはまだ練習が必要だと感じているんですが少なくともシュートまでは持っていくところには自信があります。

――逆に一番課題としている部分はどこでしょう?

守備の時のプレーです。ポジショニングだったり、攻められた時にチームのためにしっかり戻るところだったり。「チームのためにプレーすること」を今は一番意識しています。

――海外サッカーは結構見ますか?好きなチームとか。

最近はプレミアリーグ、特にリヴァプールのモハメド・サラー選手がすごく好きです。

スピードは彼ほどないですけど、自分もあんな選手にならないといけないなと思いながらずっと見ています。彼の場合はシュートを決めるところまで行けますし。

――いわきFCは食事の施設がすごく充実しています。コンディションの維持に繋がっている部分などはありますか?

毎朝体重を量るんですが、自分の体重を常にキープすればコンディションも安定していると考えているので、いつもより体重が軽ければ多めに食べたりなどします。

夜は体を動かすこともないので、料理をするなど自分で工夫して体重の変化があまりないようやっています。分からないことがあれば栄養士さんに聞いたりもします。

――最後に、今シーズンの目標と共にその先で考えていることがあれば教えてください。

今シーズンは、なんとしてでもJFLに昇格する。それが目標です(※見事に達成!)。

個人としては、今はいわきFCのために全力を尽くすこと。そして、今をしっかりやっていれば自然と大きなチャンスが来たり、自分でも想像できないくらい、海外だったり代表だったりに繋がると思うので、とにかく今に全部を注いで頑張りたいと思います。

『日本のフィジカルスタンダードを変える』という目標を掲げるいわきFC。充実した施設だけでなくインタビューの中でも出てきたような選手の意識改革にも力を入れている。

鈴木拓哉パフォーマンスコーチは一番重視していることとして、トレーニング文化の構築を挙げる。

「サッカーではこれまで、フィジカルよりもタクティカル(戦術)の方に寄りがちでした。時に勝利至上主義となってしまうところを、まずはアスリートの体を作り、それでファンを魅了し、その結果ファンが増え、街が元気になるというサイクルに意識して取り組んでいます。そのためにはまず選手の意識を変えていかないといけません」

いわきFCでは遺伝子別のトレーニングを採用しており、選手をパワー型(RR)と持久型(XX)、そして中間のタイプ(RX)の3タイプに分類。トレーニングメニューの回数やセット数をタイプごとに変えることで、選手一人一人に適したトレーニングを行っている。

GymAware(ジムアウェア)やWITTY-SEM(ウィッティーセム)といった最新のトレーニング機器も導入。トレーニングとして着実に成果を上げている一方、鈴木パフォーマンスコーチは「トレーニングルームとピッチをリンクさせることが私の最大のミッション」とも語っている。

データや数字をピッチ上でのパフォーマンスに繋げることがやはり一番重要なのである。

いわきFCは、J予備軍の猛者が集うアマチュアサッカー最高峰、JFLの舞台でも快進撃を続けられるだろうか。

日本サッカー界の“新たな基準”となりうる彼らの2020シーズンに注目したい。

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